東和電子社長 山本氏に直撃
技術のプロ集団が開発・設計したUSBスピーカー「TW-S7」とはどんなもの?
“Olasonic(オラソニック)”という新規ブランドからUSBバスパワー駆動の小型PCスピーカー「TW-S7」(製品DB)がデビューする。4月1日からアップルストアや大手量販店の店頭に並ぶこの製品、予想実売価格10,800円前後とやや高めだが、様々な技術を凝縮させた「オーディオの教科書のような製品」だという。OlasonicブランドとTW-S7について(株)東和電子 取締役社長 山本喜則氏にお話を伺った。
■技術集団「東和電子」が作ったPCスピーカー
本製品を開発した東和電子は回路、プリント基板、ソフトウェアの設計等を手がけており、主要オーディオメーカーの製品設計にも多く携わってきた技術集団だ。“Olasonic”は同社が初めて立ち上げた自社ブランドであり、その記念すべき第1弾製品がこの「TW-S7」になる。
同社 取締役社長の山本喜則氏は、自身も大手AV機器メーカーのホームオーディオ部門で長年アンプやスピーカーの設計に携わってきた経歴を持つ。自分たちの技術力を表現するものがあってもいいのでは、という考えから自社ブランドを立ち上げることにしたのだという。
東和電子はオーディオ以外の設計も手がけており自社製品は特にオーディオにこだわる必要もなかったが、「あるとき知人から、性能の良いPCスピーカーというのがなかなかないという話をきいてPCまわりのオーディオ機器の開発に興味をもった」という。とはいえハイファイオーディオの設計に従事してきた山本氏にとって、PCオーディオは未知の分野。早速1,000円から40,000円くらいまでの市場に出回っているPCスピーカーを買い占め、連日社内で製品の方向性を議論した。その中で、山本氏らが注目したのがUSBスピーカーだった。
■ハイパワー&高音質のUSBスピーカーを実現させた技術力
「PCスピーカーの中でUSB接続タイプは少数派で、あったとしても大半は1,000円くらいのもの。信号処理能力が高いPCを音楽再生システムの一部として使用することに可能性を感じ、ヘッドホン端子ではなくUSBからデジタル信号を出すことでより高音質を実現できると思った」と「TW-S7」をUSBタイプにした理由を語る。
しかしUSBポートの最大出力電流は5V-500ミリAと規格が決まっている。USB駆動スピーカーは使い勝手は良いが、最大出力2.5Wしか確保できず音が貧弱になるという欠点もあった。その問題を解決するため本製品の目玉でもある「スーパー・チャージド・ドライブ・システム(SCDS)」という回路を独自開発し、内蔵アンプに搭載した。SCDSは普段の音楽出力が小さいときにはコンデンサーに充電し、大きな出力が必要になったときに蓄えていたパワーを一気に放出するという構造で、USBバスパワーで最大瞬間出力10W+10Wを可能にした。
設計で特に重要視したのが「効率」だという。キャビネットの大きさを大きくすればするほど効率は上がるが、大きくしすぎるとPCスピーカーとして使いづらくなる。様々なサイズを検討した結果、ノートPCの横に置いても邪魔にならないサイズ、108mmx108mmx141mmに落ち着いた。
また印象的な卵型のキャビネットにもデザイン性だけでなく音質面での理由があった。「四角形のスピーカーで卵形と同じ容積を確保しようとすると、キャビネットのサイズが2まわりくらい大きくなってしまう。また卵型は四角形より強度に強いこと、平行面がなく定在波が発生しないことからキャビネット内に吸音材を入れる必要がなく容積を100%利用できるなどメリットが大きい。卵型で試作機を作ってみたところプラスチック素材を使用している割には箱鳴りもしないし、このような形は小型スピーカーにマッチしているのだと感じた。同じユニットを搭載した四角形のスピーカーと比較してもその音の違いは明らかだった」。
スピーカーユニットももちろん独自開発のもの。PCスピーカーとしては大口径の6cmのフルレンジを採用し、ハイファイスピーカーに搭載されるクラスのフェライトマグネットを搭載している。また筐体はパッシブラジエータ型を採用し、低音域も強化させている。
50cmから1mくらいの近距離で使用されることを考え、音作りでは近距離でも大きく広がりのあるサウンドを体験できるように工夫した。「近距離の試聴には2ウェイよりもシングルコーンのほうが音的に有利だが、シングルコーンだと高域だけ音が一定方向に行きがちで、その指向性の悪さという問題に開発終盤で気がついた。これを解決するためにスピーカユニットの前面同軸上にディフューザーを搭載したところ、音が分散して広い音場を実現することができた」という。
設計のプロとしてのプライドにかけ、製品の完成度を高めていったことが話を伺っているだけでも感じ取れるが、山本氏も「オーディオ機器を設計するにあたり重要なノウハウを全てこの小さなスピーカーに詰め込んだ。まさにオーディオの教科書のような製品。正直申し上げて、普通のPCスピーカーと比べてもレベルが違う音質が出ており、いいものができたと感じている」と「TW-S7」の出来映えには自信をみせる。
■販売店からも高く評価。アップルストアに初めて日本ブランドのスピーカーが並ぶ
そのクオリティは販売店にも高く評価され、新規ブランドでありながら「製品を実際に聴いていただいたらほとんど1回の商談で取扱いが決まった」という好調ぶり。明日の発売初日にはアップルストアと、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ノジマ、ケーズデンキなど主要量販店のアップルコーナーを中心に並ぶ。アップルストアの店頭に日本ブランドのスピーカーが並ぶのは初めてのことだという。
■「PCオーディオの製品開発に非常に有利」 − Olasonicブランドの今後の展開は
気になるOlasonicブランドの今後の展開だが、もう既に次の製品の開発を進めているという。販売店などから要望が大きかったiPodやウォークマンの再生に対応したモデルを年内に発売する。また「TW-S7で使用した技術をベースに、PCで打ち込みや編集などを行うプロ向けモニタースピーカーの企画を考えている。形はまだ定まっていないが、今のところ16cm角の木箱のUSBアクティブスピーカーになる予定」とのことだ。
さらにOlasonicブランドの製品はアクティブスピーカーに留まらず、“PCオーディオ”という分野で新製品を開発していくという。「新規ブランドが参入しやすいということもあるし、我々のメンバーはハイファイオーディオに強い者もPC関連に強い者もおり、PCオーディオの製品開発に非常に有利。市場自体はまだまだこれからというところもあるが、高音質でコンパクトなPC用のUSBアンプなど魅力的な製品を作っていきたい」と山本氏は構想を語る。
「価格はまだこれから考えるところ」とのことだが、今後良質でコストパフォーマンスの高い製品を作る優良ブランドへと成長しそうな予感のOlasonic。何はともあれ百聞は一聴にしかず。気になった方は「TW-S7」を店頭でチェックしてみてはいかがだろうか。
【問い合わせ先】
(株)東和電子 Olasonicサポートセンター
[email protected]
■技術集団「東和電子」が作ったPCスピーカー
本製品を開発した東和電子は回路、プリント基板、ソフトウェアの設計等を手がけており、主要オーディオメーカーの製品設計にも多く携わってきた技術集団だ。“Olasonic”は同社が初めて立ち上げた自社ブランドであり、その記念すべき第1弾製品がこの「TW-S7」になる。
同社 取締役社長の山本喜則氏は、自身も大手AV機器メーカーのホームオーディオ部門で長年アンプやスピーカーの設計に携わってきた経歴を持つ。自分たちの技術力を表現するものがあってもいいのでは、という考えから自社ブランドを立ち上げることにしたのだという。
東和電子はオーディオ以外の設計も手がけており自社製品は特にオーディオにこだわる必要もなかったが、「あるとき知人から、性能の良いPCスピーカーというのがなかなかないという話をきいてPCまわりのオーディオ機器の開発に興味をもった」という。とはいえハイファイオーディオの設計に従事してきた山本氏にとって、PCオーディオは未知の分野。早速1,000円から40,000円くらいまでの市場に出回っているPCスピーカーを買い占め、連日社内で製品の方向性を議論した。その中で、山本氏らが注目したのがUSBスピーカーだった。
■ハイパワー&高音質のUSBスピーカーを実現させた技術力
「PCスピーカーの中でUSB接続タイプは少数派で、あったとしても大半は1,000円くらいのもの。信号処理能力が高いPCを音楽再生システムの一部として使用することに可能性を感じ、ヘッドホン端子ではなくUSBからデジタル信号を出すことでより高音質を実現できると思った」と「TW-S7」をUSBタイプにした理由を語る。
しかしUSBポートの最大出力電流は5V-500ミリAと規格が決まっている。USB駆動スピーカーは使い勝手は良いが、最大出力2.5Wしか確保できず音が貧弱になるという欠点もあった。その問題を解決するため本製品の目玉でもある「スーパー・チャージド・ドライブ・システム(SCDS)」という回路を独自開発し、内蔵アンプに搭載した。SCDSは普段の音楽出力が小さいときにはコンデンサーに充電し、大きな出力が必要になったときに蓄えていたパワーを一気に放出するという構造で、USBバスパワーで最大瞬間出力10W+10Wを可能にした。
設計で特に重要視したのが「効率」だという。キャビネットの大きさを大きくすればするほど効率は上がるが、大きくしすぎるとPCスピーカーとして使いづらくなる。様々なサイズを検討した結果、ノートPCの横に置いても邪魔にならないサイズ、108mmx108mmx141mmに落ち着いた。
また印象的な卵型のキャビネットにもデザイン性だけでなく音質面での理由があった。「四角形のスピーカーで卵形と同じ容積を確保しようとすると、キャビネットのサイズが2まわりくらい大きくなってしまう。また卵型は四角形より強度に強いこと、平行面がなく定在波が発生しないことからキャビネット内に吸音材を入れる必要がなく容積を100%利用できるなどメリットが大きい。卵型で試作機を作ってみたところプラスチック素材を使用している割には箱鳴りもしないし、このような形は小型スピーカーにマッチしているのだと感じた。同じユニットを搭載した四角形のスピーカーと比較してもその音の違いは明らかだった」。
スピーカーユニットももちろん独自開発のもの。PCスピーカーとしては大口径の6cmのフルレンジを採用し、ハイファイスピーカーに搭載されるクラスのフェライトマグネットを搭載している。また筐体はパッシブラジエータ型を採用し、低音域も強化させている。
50cmから1mくらいの近距離で使用されることを考え、音作りでは近距離でも大きく広がりのあるサウンドを体験できるように工夫した。「近距離の試聴には2ウェイよりもシングルコーンのほうが音的に有利だが、シングルコーンだと高域だけ音が一定方向に行きがちで、その指向性の悪さという問題に開発終盤で気がついた。これを解決するためにスピーカユニットの前面同軸上にディフューザーを搭載したところ、音が分散して広い音場を実現することができた」という。
設計のプロとしてのプライドにかけ、製品の完成度を高めていったことが話を伺っているだけでも感じ取れるが、山本氏も「オーディオ機器を設計するにあたり重要なノウハウを全てこの小さなスピーカーに詰め込んだ。まさにオーディオの教科書のような製品。正直申し上げて、普通のPCスピーカーと比べてもレベルが違う音質が出ており、いいものができたと感じている」と「TW-S7」の出来映えには自信をみせる。
■販売店からも高く評価。アップルストアに初めて日本ブランドのスピーカーが並ぶ
そのクオリティは販売店にも高く評価され、新規ブランドでありながら「製品を実際に聴いていただいたらほとんど1回の商談で取扱いが決まった」という好調ぶり。明日の発売初日にはアップルストアと、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ノジマ、ケーズデンキなど主要量販店のアップルコーナーを中心に並ぶ。アップルストアの店頭に日本ブランドのスピーカーが並ぶのは初めてのことだという。
■「PCオーディオの製品開発に非常に有利」 − Olasonicブランドの今後の展開は
気になるOlasonicブランドの今後の展開だが、もう既に次の製品の開発を進めているという。販売店などから要望が大きかったiPodやウォークマンの再生に対応したモデルを年内に発売する。また「TW-S7で使用した技術をベースに、PCで打ち込みや編集などを行うプロ向けモニタースピーカーの企画を考えている。形はまだ定まっていないが、今のところ16cm角の木箱のUSBアクティブスピーカーになる予定」とのことだ。
さらにOlasonicブランドの製品はアクティブスピーカーに留まらず、“PCオーディオ”という分野で新製品を開発していくという。「新規ブランドが参入しやすいということもあるし、我々のメンバーはハイファイオーディオに強い者もPC関連に強い者もおり、PCオーディオの製品開発に非常に有利。市場自体はまだまだこれからというところもあるが、高音質でコンパクトなPC用のUSBアンプなど魅力的な製品を作っていきたい」と山本氏は構想を語る。
「価格はまだこれから考えるところ」とのことだが、今後良質でコストパフォーマンスの高い製品を作る優良ブランドへと成長しそうな予感のOlasonic。何はともあれ百聞は一聴にしかず。気になった方は「TW-S7」を店頭でチェックしてみてはいかがだろうか。
【問い合わせ先】
(株)東和電子 Olasonicサポートセンター
[email protected]