ハイレゾ配信も準備中
MUSIC/SLASH(エムスラ)はオーディオファンの救世主になれるか。代表・谷田光晴氏インタビュー
■プレミアム配信を決めたアーティストは「音にこだわっている」ことの証明
─── 「MUSIC/SLASH Premium」の運用としては、通常のエムスラと同一コンテンツの並行サービスになるのでしょうか
谷田:そういうイメージになります。よって、レコーディングエンジニアの人たちに関しては重層化すると思います。384kbpsの音でマスタリングする人と、ハイレゾの音でマスタリングする人。そのぶん、コストも機器も別モノになります。
たとえば「MUSIC/SLASHプレミアム」で配信したいとなれば、収録マイクのクオリティも要求することになりますから、必然的に384kpsの標準エムスラも音質がよくなることになります。エンジニアリングとワイヤリングも含めて、ライブの環境や感覚も変わっていくと思います。
なので、そのクオリティが上がっていくことに大いに期待しています。「MUSIC/SLASHプレミアム」を採用した現場というのは、圧倒的に「MUSIC/SLASH 384kps」の音もよくなる。それだけアーティスト側もエンジニアリングのコストアップになりますが、プレミアム配信を決めたアーティストというのは、「音に対してこだわっている」ことの証明になります。
■4K・8K配信で、音質・高画質のトップをめざす
─── まずは高音質ということでしたが、4Kとか8Kとかの画質を考えていますか。
谷田:もちろん、映像クオリティと音響クオリティの両方でトップをめざすというのが、私たちの戦略になります。つまりプレミアムに関してはさらにハードルが高くなると思います。配信スペックも回線も再生システムもすべて。
そうなるとプレミアムは環境の整った映画館で視聴するとか、むしろビジネスとしては、そちらで観ていただくお客様を増やすということになるかもしれません。
ご自宅でオーディオにこだわっている方は、なんなくハードルを乗り越えてくださるかもしれませんが、一般の方で、より高音質の感動体験がしたいという人には、そういった場所を用意して提供するということが必要だとも考えています。
─── 映画館での音楽ライブ中継はこれまでもあったと思います。
谷田:映画館で観られるようにしていくということは、映画館ならなんでもいいというわけではありません。それにもハードルがあります。当然選んでいくことになります。
映画館というのは基本的に空間がデッドですので、デッドな空間を補足できるサウンドシステムが入っている映画館というのは、いま日本に2館くらいしかないと思います。そのあたりもアタリをつけています。
─── 本日はありがとうございました。
■プロフィール
谷田光晴(たにだ みつはる)
メディアプランナー・演出家・企画家
株式会社 SPOON 代表取締役
MUSIC/SLASH ビジネスアーキテクチャー
慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科特別招聘教授
1980 年、兵庫県篠山市生まれ。学生時代から映像クリエイターとしてのキャリアをスタート。音楽イベントなどの映像演出を中心に活動。2009 年に株式会社タケナカに入社。テクニカルディレクター・クリエイティブディレクターとして数々のプロジェクトを開発・参画。同時期に広まったプロジェクションマッピングを使った映像作品を多数手掛け、多数のメディア、イベントへの出演、同技術をテーマにした講演なども行い、同技術の市場への定着に貢献した。同時期に当時黎明期と言われていたインターネット配信技術を使ったストリーミング・プロジェクトのテクニカルディレクションを担当、2011 年には、坂本龍一 Playing the Pianofrom Seoul を韓国から六本木 TOHO シネマへ伝送し、有料パブリックビューイングを成功させた。2014年に独立し、株式会社 SPOON を設立。現在は東京と大阪に拠点を置き、映像技術に精通した企画・演出家として、多くの企業プロモーションの設計事業を展開する傍ら、映像機器メーカーやソフトウエア開発会社の顧問として新しいソリューション開発にも参画している。これからのイベントメディアの未来ビジョンを「デジタルメディアとフィジカルメディアの融和」として、大学などで学ぶ次世代のクリエイター達に自身が学んだことを伝える活動を精力的に行っている。
2018 年から山下達郎のコンサートツアーに映像作家・アートディレクターとして参加。2020 年には、高音質動画配信サービス MUSIC/SLASH を立ち上げ、TATSURO YAMASHITA SUPER STREAMING をこけら落としとして配信を成功させた。