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PR最先端の仕様を取り込み「ティアックの音」を革新し続ける

ティアック“Reference”シリーズ、10年を超えて。開発・企画担当者に訊く音作りへのこだわり

公開日 2022/07/04 06:30 構成:ファイルウェブオーディオ編集部・筑井真奈
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エントリークラスのアナログプレーヤーも充実のラインナップ



ーーアナログプレーヤーのラインナップも、エントリーラインを中心にとても充実しています。以前からお聞きしたかったのですが、ティアックさんはベルトドライブ「TN-3B」とダイレクトドライブの「TN-4D」との両方をやっていますよね。この両方を揃えているブランドはあまりないように思いますが、逆にお客さんが選ぶときに迷ってしまっているのではないかとも思うんです。どういった基準で選ぶのが良いでしょう?

ベルトドライブ方式の「TN-3B」。MMカートリッジとフォノイコライザーを搭載しており、このままアンプに繋ぐだけでレコード再生が可能。サエクとの共同開発により生まれたナイフエッジ式ベアリングのトーンアームを搭載、本格的な要素を盛り込んだ入門アナログプレーヤー

薄型ダイレクトドライブモーターを採用した「TN-4D」。SUMIKOのMMカートリッジを搭載、こちらもフォノイコライザーを内蔵しておりそのままレコード再生が可能。ユニバーサルアームのためカートリッジの交換によるグレードアップも楽しめる

吉田 「TN-3B」と「TN-4D」に関しては、音楽の好みのような切り口で選んでもらえたらいいかなとは思ってます。たとえばロックや打ち込みといった、タイミング重視、縦に揃っている感じが欲しい人は「TN-4D」をおすすめしたいですし、滑らかさや階調の細かさみたいなものが欲しいならば、ベルト式の「TN-3B」を使ってもらえたらと思います。どちらが偉いということではなく、それぞれに良いところがありますよね。

景井 ちょっと補足しますと、実はダイレクトドライブとベルトドライブの方式の違いをさらに活かすために、カートリッジの選定も変えています。「TN-3B」はオーディオテクニカ「AT-VM95E」で、「TN-4D」はSUMIKOの「Oyster」を積んでいます。ダイレクトドライブのビート感は、音の太いSUMIKOで感じてほしいですし、TN-3Bはレンジの広いハイファイ調ですから、クラシックなど聴くならこちらが良いかもしれません。

ーーカートリッジの個性の違いにもしっかりつながっていますね。さらにその上のクラスとして、MCカートリッジのバランス出力対応の「TN-5BB」もあります。

吉田 「TN-5BB」は、さっきも話題に出ましたが「PE-505」とセットでも企画を進めました。最初からコンセプトがわりとはっきりしてたので作りやすかったですが、こちらも音作りには結構苦労しました…。

「PE-505」とセットで企画されたアナログプレーヤー「TN-5BB」。ベルトドライブ駆動方式を採用、カートリッジにはオルトフォンの「2M Red」が標準搭載される。MCカートリッジのバランス出力に対応するため、XLRバランス端子を搭載

ーー具体的にはどういう部分でしょう?

吉田 「TN-5BB」のキャビネットは、上が人工大理石で下がMDFという2層構造になっていて、それをネジで留めています。上はトーンアームがマウントされて、下はモーターがマウントされているので、そこをどうやってアイソレートするかということが大きな課題でした。

村田 最初はゴムを入れたんだよね。でもそうしたらめちゃくちゃ音が死んでしまって。

吉田 パッと聴きS/Nが良くなったように聴こえるんですけど、なんだか響きや、コアになるような倍音が消えちゃったんです。色々試したんだけど、どうしてもゴム系では私たちの求める音にはならなくて。最終的には、ターンテーブルシートにも使っている和紙を挟むことになりました。まずは一面和紙を挟んで3層構造にしたんですが、これもなにか違う。最終的に6箇所に丸く切り抜いた和紙を挟むことになりました

ーーサイズはどれくらいですか?

吉田 500円玉くらいかな。それなりの厚みはあって、薄すぎても厚すぎてもだめ。厚い紙だとどんどん音が太い感じになり、薄い紙だとだんだん減ってくるんですけど、逆にハイがきつくなってしまったり。その間のちょうどいいバランスを探っていきました。サイズも何回も調整してね。キャビネットをばらして、僕は一生懸命円形カッターで和紙を切り出して。

村田 これがまた全然、びっくりするほど音が違うんですよ。

ーーそれも教科書にはない、口伝のように受け継がれていくノウハウですね。

吉田 アナログってそういうノウハウの最たるものですけど、でもそれは電気の回路も一緒なんですよね。メカニカルなところがこんなふうに音に効いてくるのか、ということです。

村田 理論的にはそんなところで音が変わるわけないんですよ。でも、実際にネジ1本で音変わっちゃう事実がある。その葛藤はいまでもありますよ。

吉田 脚の部分も重要ですね。「UD-505-X」「NT-505-X」(2022年)からは3点支持のStressless Footにしたんですが、ツーピースじゃなくてワンピースにはなったんですね。接点がボール状で、自由に動く関節みたいになっています。

旭化成のDACチップからESSの「ES9038Q2M」に載せ替えて発売された「UD-505-X」(上)と「NT-505-X」(下)。DACチップだけでなく、アナログ部やメカ部品も大幅に変更を加えて発売された

ーーどんな場所であっても本体にストレスのかからない形で設置されるんですね。

吉田 これもエソテリックで培われたノウハウですが、そういうエッセンスをどんどん取り入れていっています。自然な音の響きとか低域とかの伸びやかさが大きく変わって、脚だけでこんなに違うのかと本当にびっくりしました。

村田 ネットではコストダウンのためだなどと言われてますけど、全然そんなことないです!

吉田 トップパネルもそうだよね、505-Xシリーズからはセミフローティングで動けるようにガタガタにして。これもコストダウンとか言われてるんですけど、そうじゃないんですよというのはお伝えしておきたいですね。天板も、やっぱり締め付けていくとどんどん窮屈になってきちゃうんです。

村田 トップパネルが本体のシャーシに対して離れていると、伸びやかで自然な空間表現も良くなる印象です。あと、副産物としてネジが上から見えなくなったのできれいな天板になったなぁと。

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