ワンボードオーディオ・コンソーシアムの説明会にて
ラックスマン、ラズパイ搭載ネットワークプレーヤー「AUDIO OSECHI BOX」披露
Raspberry Pi上で再生された音楽は、I2S接続されたDAC部へと出力される。このI2S接続は、通常はデジタルオーディオ機器内部でDACなどのIC間をつなぐ目的で利用されるもので、USB接続やHDMI接続と比べても音質面で有利な点があるとされている(海上氏もRaspberry Piでオーディオシステムを構築する最大のメリットとして上げている)。
これまでワンボードオーディオコンソーシアムでは、上記のRaspberry Pi+DACのシステムについて、ポータブル用ケースやそれに収まるDACボードを規格として策定してきた。今回ラックスマンが試作したJU-001はさらにその先にある、Raspberry Piを用いた据え置きのHi-Fiオーディオ機器のコンセプトを具現化したものと言える。
■電源やD/A部などラックスマンのオーディオ技術を惜しみなく投入
そのJU-001だが、Hi-Fiオーディオ器機として高音質化をはかるために大きく2つのアプローチを取っている。ひとつはハードウェア的なアプローチで、これはラックスマンのオーディオ技術やノウハウによる電源やDAC回路、クロック、筐体構造などである。もうひとつは、Raspberry Pi上で動作するソフトウェアをオーディオ用として最適化するアプローチだ。
ハードウェアについては、開発を手がけたラックスマンの長妻雅一氏がその詳細を説明してくれた。Raspberry Piはモバイルバッテリー等でも動作するのだが、本機は専用設計されたオーディオ用の本格的な電源を搭載する。しかもスイッチングレギュレータ(電源)ではなく、シリーズレギュレーターを使っている。これは電源をスイッチングせずに、ダイオードで整流してそれをコンデンサーを通して供給するという方法だ。また、コンデンサーも容量3,300μのものを3基(合計9,900μ)備えている
長妻氏によれば、Raspberry Piに供給する電源におけるノイズの有無で音質にも大きな影響を与えるため、ノイズが多いスイッチング電源ではなくシリーズレギュレータを用いたという。「Raspberry Piによる再生においても電源が音質に与える影響は大きく、この電源だけをとってもラックスマンが手がける意味があった」と述べた。
次にDAC部だが、DACチップはTI製「PCM5122」を採用する。Raspberry Piはクロックを持たず(ソフト上でクロックを生成して再生を行う)、JU-001はクロックを2系統内蔵してこれを再生に用いるのだが、このDACははクロックがなくても動作できるモードが選択できるという。
従って本機では「内蔵クロックを用いて再生」「Raspberry Piが生成したクロックを用いて再生」「外部クロック入力を用いて再生」の3つの再生を選択することができる。
外部クロック入力に対応した点も本機の大きな特徴のひとつで、今回はエソテリックのマスタークロックジェネレーター「G-02X」(47万円/(税抜))と組み合わせてのデモも行われた。G-02Xからの外部クロックを用いた場合には音像のフォーカス感がより明瞭になるなど、その効果も実感できた。
本機は同軸デジタル出力も搭載。デジタル出力を生成するトランスミッターとしてTI製「DIT4192」も内蔵する。
■オーディオ再生のためにRaspberry Piのソフト部も最適化
ソフトウェアの面での音質的なアプローチについては、実際に担当した海上氏が説明。本機においては、リアルタイムカーネルを採用し、オーディオ用に諸設定を最適化した軽量Linuxディストリビューション「1bc」(仮称)が用いられた。
まず、Linuxのカーネルについては、通常使われるノーマルカーネルではなく、リアルタイムカーネルを用いた。リアルタイムカーネルはレイテンシーが短く処理にぶれがないため、よってジッターも低減できるため音質的にも優位なのだという。こちらもカーネルをノーマル/リアルタイムで切り変えて再生するデモが行われたが、確かにリアルタイムカーネルを用いた場合のほうが、音場の見通しがやや良くなり各音へのフォーカスも高まると感じた。
また、Raspberry Pi 3は4つのコアを持つが、通常はMPDの処理を4つのコアが平行して行うのだが、これも特定の1つのコアがMPDの処理に専念するようにプログラムを変更しているという。
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