CEATECでの公開に先駆けメディアに披露
パナソニック、50V型の新PDPを使った3Dシステムを公開 − 蛍光体やLSI、アルゴリズムなど新開発
技術のさらなる詳細については、パナソニック AVCネットワークス社 主席技監の佐藤陽一氏が説明。フルHD 3D再生には高速かつ明るいパネルが必要だったと語り、同社のNeo PDP eco技術に基づく「高速駆動技術」「二重像低減技術」「高速動画処理技術」という3つの新技術が3D開発を可能にしたと説明した。
佐藤氏は高速駆動技術について、「フルHD 3Dの映像信号は120Hzでも60Hz駆動時とパネルの明るさを同じにする必要がある」とコメント。この課題をクリアするため、電子放出特性と壁電保持機能を両立させ、放電効率の向上と高速書き込みを可能にした「新ダイナミックブラックレイヤー」と、2回放電で高効率かつ高速起動を可能にした120Hz駆動の新LSIを新たに開発したと説明した。
そして二重像低減については、残光の少ない蛍光体「新短残光蛍光体」を開発したと発表。新材料の開発により残光時間を従来比3分の1にしたという。この蛍光体と合わせて、パネル発光重心位置を適応型に制御し、残光の少ないパネル発光を可能にする技術を用いることで、二重像の低減に成功したと解説した。
高速動画処理技術では、右眼用と左眼映像ともに動画解像度1,080本が必要である点に言及。従来のプラズマでは、3Dの高速表示において動画解像度が落ちてしまうという課題があったとし、大きな動きのある映像でも事前に高精度予測して発光制御する新アルゴリズム「高精度動き適応ベクトル予測」と、前述の短残光蛍光体により3Dに対応した新プラズマパネルの開発に成功したことを説明した。
また佐藤氏は、こうした3D用の技術が2D映像表示の高画質化にもつながっていると説明。表示時間の長さを活かすことで階調数は従来の2Dビエラの約2倍に向上したことを明かし、「2D映像がさらにキメ細やかでクリアな映像をお楽しみ頂けるようになった」と語った。
同社では、今回メディアに披露した3D映像システムを10月6日から開催されるCEATEC 2009にも出展する。この点についてパナソニック AVCネットワークス社 上席副社長の宮田貢生氏は「PDPならではの圧倒的な高画質で、高品位の3Dコンテンツの魅力を余すことなくお伝えしていく。CEATEC会場では一層進化した3DフルHDワールドを披露する」とコメントする。
続けて宮田氏は「当社のテレビのミッションは、新しい、エキサイティングなテレビ体験の創造にあると考えている」と語り、「フルHD 3Dテレビはまさにこのミッションを具現化するエキサイティングなテレビだ」と製品が持つ魅力をアピールした。
以下、セミナーで行われた質疑応答の模様をお届けする。
Q.商品化は2010年のいつ頃になりそうか。価格帯もターゲットが決まっていれば教えてほしい。
A.極めてセンシティブな問題なので明言はご容赦頂きたいが、とにかく来年一番乗りで世に出したいと考えている。
Q.メガネなしでの3D表示方式も世の中には存在している。そうした技術の導入を検討しているのかなど、今後のロードマップを教えて欲しい。
A.開発前に様々な方式を検討したが、メガネなしでの方式は、まだ大分先の技術だと考えている。当面はメガネを使用する方式の中でどう改善していくかが重要だと考えている。
Q.新開発のパネルということで、パナソニックのパネル事業における3Dパネルの位置づけをどう置いているのか。また、こうしたパネルの市場性を中長期的にどう見込んでいるのか。
A.位置づけは、当社が初めて世に問う3DのフルHDデバイスとして最高画質のもの。パネル自身の販売などはまだ具体的に視野に入れていない。
Q.BDでの3Dの規格化については、ソニーなどとも互換性があると考えて良いのか。
A.規格化がなされた際には、当社とソニーということに限らず業界として互換性があると考えて良い。
Q.HDMI規格での3Dの場合にはサイド・バイ・サイドなどいくつかの方式があるが、BDではどうなるのか。
A.その点は現在検討中だ。
Q.今回は50V型のシステムだが、大型化や小型化などサイズ展開の可能性はあるのか。
A.大型化も当然考えているし、中小型化も検討している。大型では映画やスポーツ、小型ではゲームといった具合に様々なニーズがあると思っている。また、中小型というデバイスとしては液晶になってくると思うが、当社はIPSαを持っている。これらの活用や、ニーズを見ながらマーケタビリティを考えていきたい。
Q.2Dにも使えるということだが、このパネルを2Dに向けても生産していくのか。
A.3DのPDPは一番いい画質だと思っている。この高画質を2Dにもどんどん展開していく予定だ。
Q.中小型化に関するやりとりの中で3Dの液晶という話もでてきたが、蛍光体を使わないなど、今回のプラズマ用に開発した技術を使わないパネルもありえるのか。
A.プラズマの技術は日進月歩。新しい技術の活用は常に考えている。今日は、初めての3Dを家庭に届けるものを提案した。現時点で持ち合わせている最高の技術で来年の商品化を図っていきたい。
Q.家庭用の3Dということで考えるとビデオカメラなども相当なニーズがあると思う。そのあたりも考えて頂けるとユーザーとしては非常にありがたく思うのだが、そうした点についてはどう考えるか。
A.当然ながら3Dに関連するコンテンツ、機器は様々なニーズを取り込んで検討していきたい。