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多彩な製品ジャンルへ“ベスト・イン・クラス”を展開

【CEATEC】DTSがプライベートセミナーを開催 − 11.1ch対応「DTS Neo:X」やスマートフォン向け新技術を紹介

公開日 2010/10/06 20:31 ファイル・ウェブ編集部
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dts Japan(株)はCEATEC JAPAN 2010の期間中、ディーラーおよびジャーナリスト向けのプライベートショーを、本会場に隣接するホテルのスイートルームで開催した。会場では11.1ch対応「DTS Neo:X」の技術をはじめ、PCやスマートフォン向けの最新技術が紹介された。

はじめにdts Japan(株)WWフィールド・アプリケーション・エンジニアリング ディレクターの藤ア賢一氏より、同社最新の11.1chサラウンド再生技術である「DTS Neo:X」のデモが行われた。

より完成度が高まった「DTS Neo:X」の11.1ch再生をデモ


スイートルームにセットされた「DTS Neo:X」の11.1ch再生環境。写真には写っていないリアサラウンドスピーカーが後方に設置されている
「DTS Neo:X」の11.1ch再生環境は、「DTS Master Audio」の7.1ch再生時における最もポピュラーな「L/R フロント」「センター」「LFE」「Lss/Rss(サイド)」「Lsr/Rsr(サラウンド)」のスピーカー配置を基準に、フロント側の「LW/RW(ワイド)」、高さ方向の「LH/RH(ハイト)」を加えて構成される。今回のプライベートセミナーで実施されたデモでは、5.1chのBDソフトをリファレンスソースに使い、「DTS Neo:X」による11.1ch再生を体験することができた。11.1chの音声は、ディスクに収録されている5.1chの音声信号を通常のBDプレーヤーでPCM信号にデコードし、「DTS Neo:X」のデモ用プロセッサーに送ったのち、残りの6chぶんを付け加えて生成。なお、リファレンススピーカーにはGENELEC社のアクティブスピーカー、およびアクティブサブウーファーが使用されていた。

GENELECのスピーカー群

「DTS Neo:X」のデモ用プロセッサー

デモでは、同じソフトで「DTS Neo:X」のON/OFFを比較し、その効果を確かめることができた。縦方向の表現が豊かになるだけではなく、フロントからリアまで、自然につながった包囲感を味わうことができ、空間の見晴らしがとてもクリアになる印象を受けた。


dts Japan(株)藤ア賢一氏
dts Japanの藤ア氏は「DTS Neo:X」の技術における音づくりのコンセプトについて、「元々のコンテンツが持っている雰囲気を壊さない、自然なサウンド」を、他のDTSフォーマットと同様に追求していると語る。また「今回のデモでは5.1chソースを11.1chに拡張しているが、規格上は2chの音声を11.1chに拡張して生成することも可能」(藤ア氏)という。

DTSの11.1ch技術の再生デモについては、過去2009年に開催された「A&Vフェスタ2009」に出展したdts Japanのブースでも披露され、注目を集めたが(関連ニュース)、当時のセッティングには「LW/RW(ワイド)」がなく、リアサラウンドで6chを再生するセッティングだった。今回のデモ環境は「DTS Neo:X」で規格化されたセッティングに準じたもので、フロント側の音のつながりをより向上させるため、ワイドスピーカーを加えるかたちで規格化されたという。なお、AVアンプなどハード機器の側では、ワイドスピーカーを省略した9.1chで「DTS Neo:X」に対応することも可能だという。

今回のデモ環境の仕上がりについて藤ア氏は「“DTS Neo:X”のプロトタイプとして、昨年各所でご紹介したものより、さらにレベルが高くなっているはず。来年のCESのブースでも“DTS Neo:X”のデモの機会を設けたいと考えているが、その際はもっと完成度を上げて紹介したい」と意気込みをみせた。


薄型テレビへ広がるDTSの再生技術

続いてPCやテレビ、スマートホンなど多彩なデバイスに広がるDTSの最新技術について、dts Japan(株)マーケティング・マネージャーの伊藤哲志氏が説明を行った。

dts Japan(株)伊藤哲志氏

伊藤氏はまず、DTSデコーダーを搭載したテレビを紹介。前述の「DTS Neo:X」の11.1ch再生の際にも、リファレンスのテレビとして用いられたサムスンの55V型の3D LED液晶テレビを使って、このデモのため特別に用意された、DTS音声と動画を収録したMKVファイルが視聴できた。


DTSデコーダーを搭載したサムスンの最新LED液晶テレビでデモが行われた
DTSデコーダーを搭載するテレビは韓国のサムスンとLGが商品化を実現し、それぞれの最新モデルを世界各所で展開している。なお、LGが日本市場向けに発売する薄型テレビにはDTSデコーダーは搭載されていない。デモ用動画はポータブルHDDに保存されており、テレビとHDDをUSBケーブルで接続、テレビのマルチメディア再生メニューからファイルを選ぶだけで再生がスタートする。サムスンやLGが拠点を置く韓国では、MKVファイルのコンテンツがネット上に数多く存在しており、PCでダウンロードしたMKVファイル・コンテンツをUSBメモリなどに保存して、そのままテレビで再生して楽しむというスタイルが定着しつつあるという。今や家庭のエンターテインメント・センターであるテレビとしては、DTS音声を収録したファイルを含む、様々なコンテンツを再生できる使い勝手が要求されることから、サムスン、LGでは同社のテレビにDTSデコーダーを採用する運びになったという。今回のデモで使用されたテレビのフロントパネルにも、DTS Digital Surroundのデコーダーを搭載し、DTS信号のデジタル出力、およびデコード後のアナログ2ch出力が可能な製品に付けることができる「DTS 2.0 + Digital Out」のロゴが配置されている。


フロントパネルにはDTSロゴが配置されている
薄型テレビへのDTSデコーダーの搭載が実現した背景には、DTS社の高音質技術をあらゆるデバイスに提供するという“ベスト・イン・クラス”のグローバルコンセプトと、その取り組みがある。DTS社は今後も、積極的にテレビ向けにDTSデコーダーの魅力を訴求していく方針を打ち出している。伊藤氏は「今後はBDやDVDなどディスクというメディア以外にも、ネットワーク配信やクラウドサービスを介して、ユーザーにDTSサウンドを楽しめる環境・機会が増えてくるはずだ。その際にはテレビを含む、様々なネットワーク対応デバイスでDTS音声のデコードが行えることが理想と考えている」と語り、今後は日本国内のテレビメーカーやコンテンツメーカーにもDTSデコーダーを提案していく考えを示した。


「DTS Premium Suite」搭載PCのラインナップが拡大

DTSがPC製品向けの高音質オーディオソリューションとして展開する「DTS Premium Suite」の技術は、本年オンキヨーが初めての搭載機となる高音質一体型PC「E713シリーズ」を発売後、秋からも富士通やオンキヨーの他の機種にも広がっていく。dts JapanがCEATEC JAPAN会場に設けるブースにも、最新のDTS技術を搭載したPC製品が展示されている(関連ニュース)。

オンキヨーの「DTS Premium Suite」搭載PC「E713シリーズ」

プライベートセミナーの会場では、オンキヨーの「E713シリーズ」を使って、PCの内蔵2chスピーカーやヘッドホンで広がり感豊かなサラウンド再生が楽しめる「DTS Surround Sensation | Ultra PC」や、PCのアコースティックパフォーマンスを最大限に引き出す「DTS Boost」、視聴コンテンツや入力ソースの違いによって生じる音量レベルのばらつきを自動的に補正・最適化する「DTS Symmetry」のパフォーマンスを体験できた。DTSは今後も「DTS Premium Suite」のソリューションを構成する各技術を、PC製品の付加価値提案として訴求していく考えだ。デジタルチューナーやBDドライブを搭載したいわゆる“テレパソ”系製品で、「DTSの高音質サウンドが楽しめるエンターテインメントセンター」としても活用できるオールインワンPCは、今後テレビの買い換えを検討しているユーザーにとっても魅力的な選択肢になるはずだ。

「DTS Symmetry」の効果も確認できた


スマートホンでDTSサウンドを楽める技術

薄型テレビ以外にも、韓国の携帯電話メーカーのパンテック社が、今春からDTSデコーダーを採用したAndroid OS搭載スマートフォンを発売している。モバイル機器でもテレビと同じように、音声をDTSコーデックで収録したMKVファイルのコンテンツを再生して楽しむことができる。実際に、会場に用意されたパンテックのスマートフォンで、DTSコーデックの再生デモが体験できた。

韓国で発売されているパンテック社のDTSデコーダー搭載スマートフォン

外箱にはDTSのロゴがプリントされている


DTSコーデックを採用したファイルの再生を体験
また今回のデモ機には、DTS社がモバイルエンターテインメント機器向けに開発したバーチャル・サラウンド再生技術「DTS Envelo Headphone」と、「DTS Boost」のデモアプリケーションが組み込まれており、それぞれの実力を確かめることができた。「DTS Boost」の機能を交互にON/OFFしてみると、ON時にスマートホンの内蔵スピーカーでよりパワフルなサウンドが楽しめることがわかる。また「DTS Envelo Headphone」のデモでは、スマートフォンにヘッドホンをつないでナチュラルなサラウンド再生を楽しむことができた。

「DTS Envelo」「DTS Boost」のアプリケーションを特別に組み込んだデモ機が用意された

「DTS Envelo」「DTS Boost」のON/OFFを設定するメニュー画面


「DTS Boost」機能のON時には内蔵スピーカーでよりパワフルなサウンドが楽しめる

「DTS Envelo Headphone」の機能をONにすると、ヘッドホンで自然な広がり感のあるサウンドが再生される
「DTS Envelo Headphone」は「DTS Surround Sensation」と同じ系譜に連なるサラウンド技術だが、CPUの速度がそれほど速くなく、メモリーサイズも小さい携帯電話やiPodドックなどの機器に組み込んだ際にも優れたパフォーマンスを発揮し、高品位なDTSサウンドを提供できるという。モバイル機器は今後のDTS社のビジネス戦略において、重要なジャンルであると伊藤氏は語る。今回はAndoroid端末向けに専用アプリケーションを開発してデモを行ったが、今後は多種のモバイル機器に向けた技術訴求を展開しながら、ホームシアター市場で築いたDTSの「高音質」というイメージを、幅広いジャンルの製品とユーザーにアピールしていくブランディングにも注力していく考えであるという。

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