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弟モデル「VSA-830」も同時発表

パイオニア、約9万円のアトモス対応AVアンプ「VSA-1130」 - イネーブルドSPでアトモスを高音質再生

公開日 2015/05/14 15:00 編集部:小澤貴信
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パイオニアは、ドルビーアトモス/MCACC Pro対応のAVアンプ「VSA-1130」、およびエントリークラスAVアンプ「VSA-830」を5月下旬より発売する。

VSA-1130 ¥92,000(税抜)

VSA-1130

VSA-830 ¥60,000(税抜)

VSA-830


VSA-1130は、パイオニアの同クラスAVアンプとして初めてドルビーアトモスに対応。上位クラスのモデルに搭載されていた音場補正機能「MCACC Pro」を搭載し、理想的なドルビーアトモス再生を追求したモデルだという。ディスクリート構成の7chアンプ搭載で、実用最大出力は180W/ch。ドルビーアトモスは5.2.2に対応。HDMI端子は7入力/2出力を備える。

VSA-1130の背面端子部

VSA-830はディスクリート構成の5chアンプ搭載で、実用最大出力は160W/ch。ドルビーアトモスには非対応となるが、昨年モデルではひとつ上のクラスのモデルに採用されていた音場補正機能「Advanced MCACC」を新搭載。HDMIは6入力/5出力を備える。

VSA-830の背面端子部

両モデル共にHDCP2.2に対応。4Kパススルーおよび4Kアップスケーリングに対応する。新たにBluetoothとWi-Fiを内蔵したことも特徴。アプリの指示に従えば簡単にセットアップを行うことができる「Start-up Navi」も搭載した。

プレス向けに実施された製品内覧会では、オンキヨー&パイオニア株式会社 シアター&オーディオ事業本部 マーケティング部の佐藤誠氏が挨拶。「昨年は“クラスを超えた”がテーマだったが、今年のモデルでは“ひとつ上のクラス”を実現することを目指した」と両モデルに対する意気込みを語っていた。以下、VSA-1130とVSA-830の詳細を紹介する。

オンキヨー&パイオニア株式会社 シアター&オーディオ事業本部 マーケティング部 佐藤誠氏

反射音も測定することでイネーブルドスピーカーによるアトモス再生を強化

VSA-1130はドルビーアトモスに対応する。そして、このドルビーアトモスを最適な環境で再生するために、同社独自の音場補正機能であるMCACC Proを搭載したが大きな特徴だ。そしてMCACC Proにより、低域から高域までの全てのスピーカーユニット間の位相をそろえて全帯域で魅了な再現力を実現する「フルバンドフェイズコントロール」に対応した。フルバンドフェイズコントロールが「VSA」型番のエントリー/ミドルクラスAVアンプに搭載されたのは初めてのこととなる(従来は「SC」型番のミドル〜ハイエンドクラスにのみ搭載されてきた)。

VSA-1130はドルビーアトモスに対応。MCACC Proおよびフルバンドフェイズコントロールにも対応したことで、ドルビーアトモスの再現性を追求している

VSA-1130およびVSA-830に搭載された音場補正機能の一覧。両機ともに昨年の1クラス上モデルの補正機能を搭載した

このMCACC Proとフルバンドフェイズコントロールにより、イネーブルドスピーカーを使ったドルビーアトモス再生の再現性をさらに向上させた。ドルビーアトモスは本来、天井にスピーカーを設置することが前提となる。一方でイネーブルドスピーカーは、通常のスピーカーの上部に設置して天井に音を反射させ、あたかも天井スピーカーから音が再生するようにするものである。エントリー〜ミドルAVアンプを使うユーザーにとって、天井スピーカー設置の敷居の高さはなおさらであることを踏まえ、パイオニアはMCACCを活かして、よりドルビーアトモス再生を楽しみやすいイネーブルドスピーカーの再生品位の向上に努めたという。

イネーブルドスピーカーによるアトモス再生のクオリティ強化の軸は2つ。ひとつは独自の低域マネージメントにより、より正確な低域再現を実現したことだ。アトモスでは、イネーブルドスピーカーで低域再生の全ては担当できないため、指向性がそれほどない低域はサブウーファーに振り分けることになる。しかし、そうすると180Hz付近の指向性が感じられる音もサブウーファーから出力されることになり、音場に歪みが出て、本来意図しないところから音が回るように感じられてしまうという。

VSA-1130はイネーブルドスピーカーを用いたドルビーアトモス再生においても、より正確な音場再現を可能とした

そこでVSA-1130ではMCACC Proによって低域成分を「低音」と「重低音」に分けて管理。180Hz付近の指向性の強い「低音」は、サブウーファーではなくイネーブルドスピーカーと相関関係にあるスピーカーに割り振り、違和感や歪みを解消。イネーブルドスピーカーでも自然でつながりあるアトモス音場を可能とした。

2点目はイネーブルドスピーカーの正確な距離測定だ。アトモス再生は従来のサラウンドフォーマット以上に音の定位が重要となる。しかし従来の音場補正機能ではイネーブルドスピーカーからの直線距離のみを測定していたため、実際の天井反射距離との間に誤差が生じていた。そこでVSA-1130では、イネーブルドスピーカーを使用する場合、天井での音の反射を考慮した距離測定を実施。より正確な距離補正を行うことで再現性を高めた。同社は「普通にイネーブルドスピーカーを使うよりも、より天井から音が振ってくるような音場感を演出できる」と説明していた。

また、ドルビーアトモス再生と通常再生を簡単に切り替えて聴き比べできる「レンダリングモード」も搭載。リモコンのキーで切り替えて、その効果を手軽に確認して楽しめる。

なおエントリーモデルVSA-830は、Advanced MCACCを今回から搭載。再生ソース由来の低域の遅れを補正する機能をオートフェイズコントロールを搭載するなど、従来モデルに比べて音場補正機能を強化した。

今回の新モデルの開発を担当したオンキヨー&パイオニア テクノロジーの渡邉彰久氏は、VSA-1130のドルビーアトモスについて「パイオニアは昨年のSCシリーズからアトモスを採用してきたが、その経験により、ドルビーアトモスは低音再生がしっかりしていないと楽しめないということを学んでいた。そのために電源トランスやインシュレーターの改善などを行い、地力となる低音再生を強化した」とコメント。

VSA-1130およびVSA-830の開発を担当した渡邉氏が、各モデルの詳細について解説してくれた

また本機のドルビーアトモスの音作りについて「最後まで苦しんだのは、スピーカーとスピーカーの間の音を出すこと。この点についてはドイツの技術陣と協力して、最後まで追い込みを行った」と述べた。

強化されたアトモスのイネーブルドスピーカー再生を実際に確認

また会場では、最新のドルビーアトモス再生ソフトのデモンストレーションも実施。まずはイネーブルドスピーカーによる再生で、フルバンドフェーズコントロールのオン/オフの効果を確認できた(フルバンドフェイズコントロール:オフ時は、前述の反射距離測定や低音の割り振りなどの新機能がオフになる)。試聴したのはドルビーアトモスのデモソフトだ。オフ時でも天井方向からしっかりと音が聴こえるものの、各音のセパレーションが今ひとつでモヤついた印象。それが、フルバンドフェーズコントロールをオンにすると、セパレーションがいっきに向上。雨粒の音がぐっと細かくなる。頭の手前を旋回していた野鳥は、頭の後方をぐるりと回るようになる。渡邉氏は「直接音だけでなく反射音の距離も測定する効果が大きいことがおわかりいただけたと思う」とその効果を解説した。

S-71の上部に設置されたイネーブルドスピーカー「SKH-410」

パイオニアのS-71シリーズのスピーカーと、オンキヨーのサブウーファー「SL-D501」およびイネーブルドスピーカー「SKH-410」を使ってデモを実施

その後に5.2.2のシステムにて最新のアトモス対応BD「ゼログラビティー」を試聴。VSA-1130のイネーブルドスピーカー再生のクオリティには驚かされたが、やはりトップスピーカーを使ったドルビーアトモス再生は別格であることを改めて感じさせられた。VSA-1130からは、イネーブルドスピーカー再生の強化でドルビーアトモスの魅力を手軽に楽しめる道筋を作りつつ、トップスピーカーを使った再生ではドルビーアトモスのクオリティを妥協なく追求するというパイオニアAVアンプの姿勢を伺うことができる。

■妥協なき音質対策が施されたVSA-1130

VSA-1130は、入力方法や音源にかかわらず、24bit未満の信号(圧縮音源含む)を独自のビット拡張技術で高解像度処理する「Hi-bit24 Audio Processing」機能を搭載する。またオーディオ的なアプローチによる音質へのこだわりも随所に盛り込まれたことも特徴だ。VSA-1130に盛り込まれた音質対策を紹介していこう。

アンプは、全チャンネル同一クオリティーで180W/chの出力を実現する7chディスクリートアンプを搭載。アナログ電源部には上位機種「SCシリーズ」の開発手法を取り入れ、電源トランスには銅箔シールドにより漏洩磁束の低減を図るための専用チューンを施した。これにより映像/音声の信号伝達に影響のある漏洩を大幅に低減。

VSA-1130の筐体内部

さらにデジタル基板・オーディオ基板にもノイズ対策を追加。デジタル/アナログ回路にそれぞれ別個のトランスを用意した「アドバンスド・インディペンデント・パワーサプライ」との相乗効果により、さらなるクリアな信号伝達を可能にしたという。

回路レイアウトや基板パターンなど、配線のスタイリングも徹底的に見直し。さらなるノイズレベルの低減を実現したという。同社は「配線レイアウトを綺麗にすることのメリットは絶大だ。天板をとっても綺麗に見えることはこれまでも重視していた点で、実際に音質への影響は大きい」と説明していた。

電源トランスには銅箔シールドにより専用チューンを施し、映像/音声の信号伝達に影響のある漏洩を大幅に低減

またVSA-1130はESS TechnologyのD/Aコンバーター「ES9006S」を採用することでノイズ感の少ないクリアな音を追求。さらにオーディオ専用のカスタムコンデンサーなど厳選した音質パーツを使用することで、同社の「ダイレクトエナジーデザイン」に基づく高音質設計を追求した。さらにルビコン社と共同開発した薄膜高分子積層コンデンサー「PML MUコンデンサー」を採用。抑圧感を抑えて透明感と開放感のある高音質を実現したとのこと。

DACからコンデンサーに至るまで、試聴テストを繰り返して厳選した高品位パーツを採用している

内部構造の平行面をなくして空洞共振を原理的に発生させないインシュレーターを新開発

インシュレーターも新規開発。試聴を繰り返すことで作り込みを行ったという。内部構造の平行面をなくして空洞共振を原理的に発生させないことで、音の定位や音数・音階がより明確となり、チャンネル間のつながり向上や俊敏なレスポンスを可能としたとしている。

パイオニアのAVアンプとして初めてBluetooth&Wi-Fi内蔵を実現

VSA-1130とVSA-830は、パイオニアのAVアンプとして初めてBluetooth&Wi-Fi内蔵を実現した。Wi-Fiデュアルバンド対応で、2.4GHz帯に加えて5G帯にも対応。混信を避けることで高品位なネットワークオーディオ環境を実現したとしている。また、無線LANルーターなどがなくてもAVアンプとスマートフォンやタブレットを直接Wi-Fi接続できるWireless Direct機能も備える。なお、音質を徹底追求したい方向けにWi-Fi/Bluetoothをオフとする設定も用意している。

パイオニアのAVアンプとして初めてWi-Fi&Bluetoothを内蔵した

ネットワーク/USBメモリーで充実のハイレゾ再生

VSA-1130とVSA-830は、LANによるネットワーク再生・本体前面のUSB-A端子によるUSBメモリー再生の両方で、192kHz/24bitまでのWAV・AIFF・ALAC・FLAC再生に対応。ALACについては従来96kHz/24bitまでの対応だったが、今期モデルより192kHz/24bitまでの対応となった。

VSA-1130およびVSA-830のハイレゾ対応一覧表。ネットワーク再生に加えて、USBメモリー再生も対応ファイルを充実。Wi-Fiでのハイレゾ再生に注力していることもポイントだ

マルチchハイレゾ音源の再生にも対応。両モデルでFLAC/WACの96kHz/24bit/5.1ch音源が再生できる。またUSBメモリー再生のみだが、192kHz/24bit/5.1chのWAVファイルの再生が新たに可能となった。

DSDについては、VSA-1130が2.8Mhz ダイレクト再生と5.6MHz PCM変換再生に対応。VSA-830は5.6MHz非対応だが、2.8MHz PCM変換再生に対応する。また、PCM・DSDの各音源でギャップレス再生が可能となっている。また、これらハイレゾ音源は本体内蔵のWi-Fiによる接続時にもネットワーク再生可能だ(WAVの5.1ch音源除く)。AirPlayやインターネットラジオ機能も備える。

前出の渡邉氏は「エントリークラスということでワイヤレス機能は必須と考えた。両モデルではワイヤレスの音を高品位に楽しめるように、設計当初からワイヤレス関連回路のケアを行ってきた。ぜひワイヤレスの音を聞いてみて欲しい」とコメントしていた。

GUIを強化。スタートアップナビを新搭載

両モデルはHDCP2.2に対応。4K/60p/4:4:4の映像入出力、4Kアップスケーリング、4Kパススルーが可能と最新の4K機能をカバーしている。

同社BDプレーヤーで開発された高画質技術による新機能「Super Resolution」を搭載。1080p映像を画像解析してTexture処理とEdge処理で特徴抽出することで、自然で情緒豊かな4K/24p・60p映像として出力することができるという。

これまではタブレット/スマートフォン用操作アプリ「iControl AV」の強化に力を入れてきたパイオニアAVアンプだが、本機よりAVアンプ本体のGUI改善も行った。具体的にはGUIのトップページとセカンドページを変更し、項目へのアクセスの良さ、見やすさを向上させたという。また音場補正MCACCの画面も、ドルビーアトモスに対応したグラフィックに変更された。

GUIのトップページとセカンドページを変更し、項目へのアクセスの良さ、見やすさを向上


VSA-1130とVSA-830は、AVアンプ導入におけるハードルになりうるセットアップの難しさに対しても、もう一歩踏み込んだという新機能を搭載。これまでは「AVナビゲーター」によるセットアップ支援機能を搭載していたが、今回より「Start-up Navi」アプリを開発。Wi-Fiでホームネットワークに接続されているスマートフォンやタブレットから、このアプリを使って簡単にセットアップを行うことが可能となった。「Start-up Navi」アプリは主にネットワーク設定をサポートし、こちらの設定が完了すると、その後に「AVナビゲーター」が起動。最終的にはMCACCによる音場補正までをナビゲーションに沿って簡便に済ませることができる。

新アプリ「Start-up Navi」に対応し、ネットワーク設定など初期セットアップをさらに手軽なものとした

操作アプリ「iControl AV」の最新世代である「iControl AV5」にももちろん対応。また、「iControl AV5」で操作できるのはこれまで2013年モデル以降の製品に限られたが、今回アップデートにより2012年モデルのVSA/SC型番のAVアンプでも使用が可能となった。

渡邉氏は最後に「今回はVSA-1130を中心に紹介とデモを行ってきたが、弟モデルであるVSA-830にもぜひ注目してほしい。エントリークラスながらこちらも音質について一切妥協はしていない」とも述べていた。

佐藤氏は両モデルのテーマとして挙げた「ひとつ上のクラス」の実現についても解説。具体的には音場補正機能「MCACC」を、それぞれ従来ではひとつ上のクラスに搭載していたものを搭載したことで、ひとつ上のクラスのサラウンド再生が可能になったと紹介していた。また、今回発表された2機種はオンキヨーとパイオニアの統合の話が出る前から企画設計が進んでいたとのことで、「今回のモデルはパイオニア100%のモデルと言える」と述べた。一方で、オンキヨーとパイオニアの両ブランドについては営業・企画・技術等の様々な場面で協業が始まっていることにも言及。「同じAVでも文化が全然異なることを実感させられたが、各ブランドの持ち味を活かして、今後もさらに強力な製品を作っていきたい」とコメントしていた。

主な仕様

VSA-1130の主な仕様は以下の通り。パワーアンプch数は7で、定格出力(20 Hz〜20kHz、T.H.D. 0.09%、8Ω、1ch駆動時)は100W/ch、実用最大出力(JEITA、6 Ω、1ch駆動時)は180Wch。消費電力は550W(待機時 スタンバイ状態:0.1 W/ネットワークスタンバイON時:2.7W)。外形寸法は435W×168H×362.5Dmm、質量は9.8kg。

VSA-830の主な仕様は以下の通り。パワーアンプch数は5で、定格出力(20 Hz〜20kHz、T.H.D. 0.09%、8Ω、1ch駆動時)は95W/ch、実用最大出力(JEITA、6 Ω、1ch駆動時)は160Wch。消費電力は450W(待機時 スタンバイ状態:0.1 W/ネットワークスタンバイON時:2.7W)。外形寸法は435W×168H×331.5Dmm、質量は8.7kg。

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製品スペックやデータを見る
  • ジャンルAVアンプ
  • ブランドPIONEER
  • 型番VSA-1130
  • 発売日2015年5月下旬
  • 価格¥92,000(税抜)
【SPEC】●パワーアンプch数:7 ●定格出力(20 Hz〜20kHz、T.H.D. 0.09%、8Ω、1ch駆動時):100W/ch ●実用最大出力(JEITA、6 Ω、1ch駆動時):180Wch ●入出力端子:HDMI×7入力/2出力 ●消費電力:550W(待機時 スタンバイ状態…0.1W/ネットワークスタンバイON時…2.7W) ●外形寸法:435W×168H×362.5Dmm ●質量:9.8kg
  • ジャンルAVアンプ
  • ブランドPIONEER
  • 型番VSA-830
  • 発売日2015年5月下旬
  • 価格¥60,000(税抜)
【SPEC】●パワーアンプch数:5 ●定格出力(20 Hz〜20kHz、T.H.D. 0.09%、8Ω、1ch駆動時):95W/ch ●実用最大出力(JEITA、6 Ω、1ch駆動時):160Wch ●入出力端子:HDMI×6入力/5出力 ●消費電力:450W(待機時 スタンバイ状態…0.1W/ネットワークスタンバイON時…2.7W) ●外形寸法:435W×168H×331.5Dmm ●質量:8.7kg