HOME > レビュー > B&O PLAY「A2」レビュー:固定概念から解放してくれる、老舗の実力派BTスピーカー

B&O PLAY「A2」レビュー:固定概念から解放してくれる、老舗の実力派BTスピーカー

公開日 2015/02/03 10:00 中林直樹
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

2012年に立ち上がった、B&O PLAYブランド。レストランや洋服でたとえるなら、1925年創業の本家バング&オルフセンは歴史ある高級メゾンであり、B&O Playはそのカジュアルラインといったところだ。だが、単に手の届きやすい製品をラインアップしているわけではない。当サイト「B&O PLAY style」を俯瞰すれば掲載されている製品のいずれもが、これまでのオーディオプロダクトとは異なったフォルムを纏っていることが一目瞭然でわかる。しかも、そんな麗しいデザインの内部には、現代、さらには少し先の未来まで見据えた機能が宿っている。

ここで紹介する「A2」は、そこまで大げさに捉える必要はないかもしれない。だが、ワンボディでBluetoothによるワイヤレス受信ができ、さらには巧みにデザインされたフラットな筐体、そして本質へのこだわりは、まぎれもなくB&O PLAYのコンセプトが凝縮したものであるといえる。つまり、現代の生活やリスニングスタイルに、さりげなく寄り添う製品なのである。

Bluetooth対応製品と組み合わせてワイヤレスで音楽を楽しむことができるスタイリッシュなスピーカーだ(写真はiPhone5との組合せ)

カラーは3タイプが用意されており、今回取材用に借りたのは「グレー」。そのグレーはグリル部分に配され、ボディはマットなゴールドがあしらわれている。このコントラストがとても上品で好ましい。素材も肉厚のアルミニウムが用いられており、実際にもってみると見た目の印象よりずっしりとしている。このあたりは、ラフな使用にも耐えるため、かつ、余計な響きを発生させないというオーディオ的配慮もあると思われる。

ボディはアルミニウム製。3つのカラーバリエーションがあり、グレーはマットゴールドとの組合せ。スタイリッシュで上質な佇まいだ

バッテリーはリチウムイオンの充電式で、ACアダプターから給電する。約3時間の充電で約24時間の再生が可能だという。本体の厚みは4.4cm。片手で持てば、クラッチバッグのような雰囲気だ。さらに、レザーのベルトも付属。持ち運び時はもちろん、今回の試聴では自宅のダイニングチェアの背もたれに引っ掛けて聴けたのが面白かった。普段は音楽が流れてこない場所から、いつもオーディオシステムで聴いている楽曲が溢れ出てくることの不思議。後述するが、ダイニングキッチンいっぱいに音が満ちてゆく、その音場の豊かさにも驚かされた。

電源は内蔵バッテリー駆動のほか、AC駆動にも対応。非常に長時間の連続再生ができる点は嬉しいポイントだ

本体サイドにはレザー製ストラップを用意。持ち運んだり、ドアノブに掛けたりと便利に使える

外側からは見せないが、スピーカーユニットはミッドバス、トゥイーターをそれぞれ2基搭載。加えてナチュラルな重低音を作り出すパッシブラジエーターも2基マウントされている。さらに「True360 オムニディレクショナルサウンド」と銘打ったエフェクト機能を搭載し、コンパクトなボディからサウンドが全方位に広がる工夫がなされている。Bluetoothは高音質で遅延の少ないaptXコーデックに準拠。マルチペアリングにも対応し、2台の対応機器から交互に伝送することも可能だ。

本体天面には電源ボタン、ボリュームボタン、Bluetoothボタンを用意。電源をONにしたあと、Bluetoothボタンを長押しするとペアリングが開始される

まず、手持ちのiPhoneからジャズシンガー、ホセ・ジェイムズの新譜『イエスタデイ・アイ・ハド・ザ・ブルース』を送信してみる。ビリー・ホリデイに捧げたアルバムだ。ピアノ(ジェイソン・モラン)トリオを率いてしっとりと歌い上げる。前作のアグレッシブな、EDMやロックにもつながる世界とは一転している。このあたりの振れ幅の大きさが彼の魅力のひとつでもある − とまあ、それはともかく、A2で再生したとたん、歌声にたっぷりとした深みがあることに驚かされた。ウッドベースも淡白にならない。弦がぶるりと振るえる瞬間も聴き取れた。また、ピアノの細かなニュアンスも豊かだ。ボーカルのバックで実に様々なフレーズを繰り出している。そこに単なるボーカル+ピアノトリオ作品、スタンダードカバー集にはしまいという、演奏家たちの高いテンションを感じた次第だ。

ワイヤレスであり、スリムであるがゆえ、設置場所の自由度も高い。リビングのテレビの脇でも、ダイニングテーブルの上でも、ベランダのテーブルの上でも置ける。そこからさりげなく、なおかつ、バランスの取れた音楽が溢れ出る。音楽の実体がぼやけないといってもよいだろう。ビョークのライブ盤『バイオフィリア・ライヴ』も、独特の重低音とその上に乗るボーカルやコーラス、各種エレクトロニクスなどが大きな景色を織り上げているのがわかる。それはたしかに「True360 オムニディレクショナルサウンド」の効力が大きいと思う。だが決して演出的にならないところも評価したい。音楽との新しい付き合い方を提案する製品だが、そんなところに老舗としての堂々たるプライドが透けて見える。もっといえば、オーディオはかくあるべきといった凝り固まった概念から解放してくれるようでもある。

(中林直樹)


A2 Product Data
・価格:¥39,800(税込)
・カラー:ブラック/グリーン/グレー
・スピーカー構成:
  3インチミッド・バスユニット x 2、3/4インチトゥイーター x 2
  3インチパッシブラジエーター x 2
・アンプ:
  180WクラスDアンプ

・外形寸法:256W x 142H x 44Dmm
・質量:約1.1kg

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE