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「精度の高いハイファイ性能を実現」

エソテリックのSACD「K-07X」レビュー。D/A部強化で足を固めたKシリーズの末弟

公開日 2015/04/24 12:42 鈴木 裕
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ハイファイ度の高い、明確な音の方向性

テストは音元出版の試聴室で行った。リファレンス機材はアキュフェーズのエレクトロニクスで、プリアンプ「C-3800」、パワーアンプ「A-70」。そしてスピーカーは筆者がよく聴いているエラック「FS249BE」を選択している。

K-07Xの試聴は音元出版の試聴室にて行った

まずCDから聴き始めた。山下達郎のアルバム『ソノリテ』から「マイダス・タッチ」。基本的な再生音のキャラクターはハイファイ度の高い、明確な音の方向性だ。音の線の太さはナチュラルで低域もふくらまず、かといってタイトというわけでもない。色彩感が良く出ているのが魅力的だ。シンセベースの低音の密度がきちんとして、その立ち上がりやしゃがみのリニアリティが高い。E.ギターのカッティングの、特有の甘やかな音色感や、達郎の声のファルセットのニュアンスなど、精度の高い表現を持っている。また、声の細かい凹凸や表面の質感といった要素での再現性も高い。

山下達郎『SONORITE』

エリック・クラプトンの『アンプラグド』から「ロンリー・ストレンジャー」を聴くと、オーディエンスの拍手が立体的に定位している感じがある。帯域バランスとしては中域の上、高域の下あたりに若干テンションの強い帯域が存在。拍手として弾けている感じが微妙に強いのだ。ステージの床を足で踏んでリズムを取っている、その最低域の反射の音は量感タイプの低音になっているが、しっかり出てくる。ここでもクラプトンの声のしわがれた感じや1992年、つまりクラプトン47歳の年齢なりの声がきちんと聴こえてくるのがさすがだ。

エリック・クラプトン『アンプラグド』

SACDはエソテリックによってリマスタリング、SACD化されたクラシックのソフト『ジルヴェスター・コンサート1997』を聴いた。アバド指揮ベルリン・フィルの演奏だ。ちなみにエソテリックのプレーヤーだから聴いたのではなく、普段からの筆者のリファレンスの1枚だ。ビゼーの歌劇『カルメン』の前奏曲の冒頭ではオーケストラのトゥッティの中にグランカッサ(大太鼓)のズンッと来る音が入っているが、低域の分解能の高いコンポーネントではこれがきちんと分離して聴こえてくるし、音像としても見えてくる。まずこの再現性が優秀。そしてソプラノのアンネ・ゾフィー・フォン・オッターの「ハバネロ」での声の表情のこまやかさも素晴らしい。また、サラサーテ編曲の「カルメン幻想曲」でのギル・シャハムのソロ・ヴァイオリン。このフラジオレットの高音の音程感やピチカートの立ち上がりなど正確でありつつリアル。総じて言えば、オーケストラの各楽器の音色感が良く出てくるし、音場感としても前後左右のバランスがとてもいい。

『ジルヴェスター・コンサート1997』

USB-DACは克明かつ輪郭を明瞭に音楽を表現する

続いてUSB-DACとしての音を聴いてみたが、これが実に興味深かった。冒頭にも書いたようにエソテリックの一体型デジタルプレーヤー新世代の中で、もっとも音の方向性が変わったのがK-07Xだ。ドライブメカは先代を踏襲しているわけで、つまりD/Aコンバーター部とアンプ部の進化によってそれを達成していることになる。USB-DACとして使用するということは、基本的にまさにその進化した部分を聴く形になるからだ。

山下達郎『ソノリテ』のCDをリッピングした「マイダス・タッチ」の音楽ファイルから聴きだした。音が出だした瞬間、息を飲んだ。こういう時、内心では「ムムッ」といった唸り声を発しているのだが、かなりの個性的な音である。コントラストが強く、音の輪郭がきわめて明確。映像で言えば、強い光を当てて絞りを絞ったような克明な音なのだ。クラプトンを聴いても、オーディエンスの拍手やアコースティック・ギターの弦を弾くニュアンス、あるいはクラプトンのヴォーカルについても、シャープでくっきりしていて、筆圧の強い音だ。

これはDSDの音楽ファイルを聴いても同様の傾向になる。大友良英と高田漣がオーディエンスを入れて収録した実験的なライブの『BOW』より「It's Been A Long, Long Time」(DSD 2.8MHz)を聴くと、現場の空気が微粒子のような漂い、ヴォーカルのリップノイズやギターのフレットを手が移動する時のキュッという音が克明すぎるほどに聴こえてくる。24bit/192kHzのwavの音楽ファイル、ユリア・フィッシャーがソロ・ヴァイオリンを弾いているチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲では、ソロ楽器、オーケストラのそれぞれのパートの音色の立ち方が相当に明晰である。

大友良英+高田漣『BOW』

ちなみに、対応しているフォーマットがDSDの11.2MHz、いわゆるDSD256、PCMで言えば384kHzまで対応しているのも特筆しておきたい。また、こうしたフォーマットに対応している再生ソフト、エソテリックHRオーディオプレーヤーを無料でダウンロードできるのもありがたい。

エソテリックHRオーディオ・プレーヤー


対応ファイル形式

SACD/CDプレーヤーとして高いハイファイ性を獲得したK-07X。同時に個性派の音を持ったUSB-DACとしての面も持っている。オーディオ好きの人に体験してもらいたい、エソテリックの今を感じさせるプレーヤーだ。

(鈴木 裕)

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