USB-DAC機能やUSBストレージ再生にも対応
エソテリック初のネットワークプレーヤー「N-05」を聴く - 専用アプリで操作性も追求
■USB-A端子を利用して音楽サーバーにもなる
使い勝手の面では、リアパネルのUSB-A端子を利用するミュージックサーバー機能にも注目したい。USBメモリーやUSB HDDなど大容量ストレージをつなぐと、操作アプリのサーバー一覧にコンテンツが表示され、NASと同様にナビゲーションツリーからの検索やプレイリストの操作ができるようになる。サーバー増設という用途に加え、NASの導入はハードルが高いという音楽ファンにとっては、まずはUSBドライブでネットワークプレーヤーの操作に習熟するというメリットがある。なお、NASの推奨サーバーソフトはMinimServerが指定されている。
本体の操作キーは最小限でリモコンも付属しないため、選曲操作はiPadが基本だ。ディスプレイに表示される情報もトラック番号と経過時間のみのシンプルで、本体前面の「+」ボタンを押すと曲名などの情報が表示されるものの、文字が小さくスクロールがぎこちないので、実用性はいまひとつと感じる。本体の操作キーはなくてもいいが、操作アプリで登録したプレイしるとをリモコンでも選曲できるようにすればさらに利便性が上がるはずだ。
■揺るぎない安定感と鮮鋭感の高さが両立
NASにはQNAP「HS-210」とfidata「HFAS1」2つを組み合わせ、ネットワーク再生の音質を検証する。チェロとコントラバスのデュオやジャズのクインテットを聴き、それぞれの楽器の音像のリアリティの高さにまずは感心させられた。
土台が揺るがない安定感と輪郭がにじまない鮮鋭感の高さが両立し、手前に出るべき楽器が正確に前に出る良さもある。行儀よく整列するというよりは、各プレーヤーが自分の役割を押さえつつソロはあくまで力強く主張して存在感を発揮するという印象で、実際のステージを彷彿させる臨場感に溢れている。
アタックは俊敏だがエンハンスはなく、スーッと音が立ち上がる素直さがかえって生々しい雰囲気を伝え、アナログかデジタルかという録音方式の違いを超えて、優れた録音ならではのリアルな感触を再現する。
『ジャズ・アット・ザ・ポーンショップ』や『ゲッツ/ジルベルト』など往年の名録音を聴いても古さをまったく感じさせないのは、余分な味つけを加えず素材の良さを引き出しているからにほかならない。だが単なる無色透明に陥らず、躍動感やテンションの高さなど、音楽の美味しい部分をたっぷり味わえることが、ハイエンド機ならではの醍醐味と言って良い。
■DSD再生は3次元の広がりと余韻が魅力的
DSD録音のオーケストラは立体的な楽器配置と3次元に広がる余韻の振る舞いが聴きどころだ。独奏ヴァイオリンの立体的なイメージが空中に浮かび、量感豊かな低弦と面で進んでくる金管の間からトライアングルの澄んだ音が浸透してくるという具合に、どのフレーズを聴いても音が平板にならず、3Dで展開する。
特に近代以降の管弦楽作品を本機で聴くと、豊かな空間描写が予想以上の高揚感を引き出し、聴き手を釘づけにする。音源によってはPCM→DSD変換でも空気感の向上が期待できるので、ぜひお試しいただきたい。
■USB-B入力の鮮度にも注目ダイレクトな感触は一聴に値する
USB-B入力の音も期待通りの高水準だが、今回の最大の収穫はUUSBストレージから読み出した音の鮮度の高さである。ディテール描写の余裕と付帯音のないダイレクトな感触は一聴の価値がある。
各社ハイエンド機に匹敵する使い勝手を実現しつつ、DSDを含む広範囲の音源で忠実度の高い音を再生するネットワークプレーヤーが、国内ブランドからもついに登場した。海外ブランドのハイエンド機を第一世代、国内ブランドから登場した入門〜中級機を第二世代とすると、本機は第三世代のネットワークプレーヤーと呼ぶにふさわしい。次世代を切り拓く担い手として、私たちの強い期待に応えてくれるに違いない。
(山之内 正)
本記事はネットオーディオ22号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。
使い勝手の面では、リアパネルのUSB-A端子を利用するミュージックサーバー機能にも注目したい。USBメモリーやUSB HDDなど大容量ストレージをつなぐと、操作アプリのサーバー一覧にコンテンツが表示され、NASと同様にナビゲーションツリーからの検索やプレイリストの操作ができるようになる。サーバー増設という用途に加え、NASの導入はハードルが高いという音楽ファンにとっては、まずはUSBドライブでネットワークプレーヤーの操作に習熟するというメリットがある。なお、NASの推奨サーバーソフトはMinimServerが指定されている。
本体の操作キーは最小限でリモコンも付属しないため、選曲操作はiPadが基本だ。ディスプレイに表示される情報もトラック番号と経過時間のみのシンプルで、本体前面の「+」ボタンを押すと曲名などの情報が表示されるものの、文字が小さくスクロールがぎこちないので、実用性はいまひとつと感じる。本体の操作キーはなくてもいいが、操作アプリで登録したプレイしるとをリモコンでも選曲できるようにすればさらに利便性が上がるはずだ。
■揺るぎない安定感と鮮鋭感の高さが両立
NASにはQNAP「HS-210」とfidata「HFAS1」2つを組み合わせ、ネットワーク再生の音質を検証する。チェロとコントラバスのデュオやジャズのクインテットを聴き、それぞれの楽器の音像のリアリティの高さにまずは感心させられた。
土台が揺るがない安定感と輪郭がにじまない鮮鋭感の高さが両立し、手前に出るべき楽器が正確に前に出る良さもある。行儀よく整列するというよりは、各プレーヤーが自分の役割を押さえつつソロはあくまで力強く主張して存在感を発揮するという印象で、実際のステージを彷彿させる臨場感に溢れている。
アタックは俊敏だがエンハンスはなく、スーッと音が立ち上がる素直さがかえって生々しい雰囲気を伝え、アナログかデジタルかという録音方式の違いを超えて、優れた録音ならではのリアルな感触を再現する。
『ジャズ・アット・ザ・ポーンショップ』や『ゲッツ/ジルベルト』など往年の名録音を聴いても古さをまったく感じさせないのは、余分な味つけを加えず素材の良さを引き出しているからにほかならない。だが単なる無色透明に陥らず、躍動感やテンションの高さなど、音楽の美味しい部分をたっぷり味わえることが、ハイエンド機ならではの醍醐味と言って良い。
■DSD再生は3次元の広がりと余韻が魅力的
DSD録音のオーケストラは立体的な楽器配置と3次元に広がる余韻の振る舞いが聴きどころだ。独奏ヴァイオリンの立体的なイメージが空中に浮かび、量感豊かな低弦と面で進んでくる金管の間からトライアングルの澄んだ音が浸透してくるという具合に、どのフレーズを聴いても音が平板にならず、3Dで展開する。
特に近代以降の管弦楽作品を本機で聴くと、豊かな空間描写が予想以上の高揚感を引き出し、聴き手を釘づけにする。音源によってはPCM→DSD変換でも空気感の向上が期待できるので、ぜひお試しいただきたい。
■USB-B入力の鮮度にも注目ダイレクトな感触は一聴に値する
USB-B入力の音も期待通りの高水準だが、今回の最大の収穫はUUSBストレージから読み出した音の鮮度の高さである。ディテール描写の余裕と付帯音のないダイレクトな感触は一聴の価値がある。
各社ハイエンド機に匹敵する使い勝手を実現しつつ、DSDを含む広範囲の音源で忠実度の高い音を再生するネットワークプレーヤーが、国内ブランドからもついに登場した。海外ブランドのハイエンド機を第一世代、国内ブランドから登場した入門〜中級機を第二世代とすると、本機は第三世代のネットワークプレーヤーと呼ぶにふさわしい。次世代を切り拓く担い手として、私たちの強い期待に応えてくれるに違いない。
(山之内 正)
本記事はネットオーディオ22号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。