【特別企画】新エンジンLIFES搭載の第2弾
AB級の“懐の深さ”を掘り下げたラックスマン「L-507Z」。現代プリメインへの要請をすべて叶える充実のサウンド
■現代のプリメインアンプに求められるものを高次にバランス
昨年9月に発表されたラックスマンの最新プリメインアンプ「L-507Z」。その型番からすると、2017年に発売となった「L-507uXII」をベースに開発されているようにも見えるが、実は2015年に発売された「L-590AXII」からの技術的継承が多いという。
ちょっと意外な感じもする。というのは、L-507ZがAB級であるのに対して、L-590AXIIはA級だからだ。ラックスマンによると、名称としては “ゴールデンナンバー” である「507」を使うことにしたのだが、その内実は、「L-590AXII」をベースにAB級とした上で、最新技術でブラッシュアップしたものなのだという。
ラックスマンは2025年に創業100周年を迎えるが、それを見据えた技術的な内容を持った製品でもある。非常に重要なモデルであり、力を入れて開発されているのを感じる。
L-507Zは、現代のプリメインアンプに求められているものをすべて持っているといっても過言ではない。詳しくは後述するが、SN比や駆動力の高さ、トランジェントの良さ、音色の再現性、そして空間表現力。さらにオーディオ的な魅力を持った音色感。こうした要素を高い次元でバランスさせているのだ。
さらに言うならば、A級、AB級といった方式の差を超えた本質的な音の良さを持っているということもできる。その詳細を見ていこう。
■最新の増幅帰還回路を搭載。コンデンサー等のパーツ類も厳選
L-507Zに搭載されているのは、最新の増幅帰還回路「LIFES」(ライフス)である。Luxman Integrated Feedback Engine Systemの略称であり、基本的なコンセプトは「歪み成分のみをフィードバックすることで鮮度が高く、自然で瑞々しい音色を実現する」こと。これを目標に、メイン回路と歪み検出回路を一体化させている。
これまでラックスマンは、ODNFと名付けられた増幅回路を20年以上に渡って改良、進化させてきた。ただし、内容的に回路規模が拡大し続けたこともあり、それを根本的に見直すことによって「LIFES」が生まれたのだ。この回路を最初に搭載したのがフラグシップのステレオパワーアンプ「M-10X」、今回のL-507Zはその第2弾となる。結果としてこのパワーアンプ部だけで歪み成分は半分以下、SN比は3dB向上している。
電源部は高レギュレーションの電源トランスと10,000μF×8本という大容量コンデンサーを組み合わせ、ラックスマン独自のハイイナーシャ(高慣性)電源部を構築。プリアンプ部の出力段にはセパレートアンプの「C-900u」と同等のバッファー回路を搭載。ボリュームとしては片チャンネルあたり直列に2本の抵抗だけで音量調節する「LECUA」の最新版を採用している。
その他、シャーシ電流によるアースのインピーダンス上昇や発生磁界の影響を隔絶する目的で、シャーシを独立させる構造や大型のグラデーション鋳鉄製の脚、導体径を太くしたノンツイスト構造の電源ケーブル「JPA-10000i」の採用など、同社のノウハウが存分に投入されている。
また、使い勝手という部分でもよく考えられているアンプでもある。リスニングポジションから音量を確認しやすいLEDによる音量レベル表示。ヘッドホンで聴く場合にも、一般的な6.3mm径の端子と共に、左右独立のグラウンド配線によるセパレーションの良さが特徴の4.4mm径のヘッドホン出力端子を増設。その他、ごく近い将来にアップデートで赤外線以外のリモート操作にも対応する外部コントロール端子の装備など、新しいスタイルに対応したプリメインアンプの利便性を追求している。
■音楽の作り手の思いをそのまま伝える表現力を持つ
ラックスマンの試聴室でフォーカルのスピーカー「Sopra N°2」を鳴らしてテストした。デジタルプレーヤーは「D-10X」だ。
竹内まりや「シングル・アゲイン」から聴きだすと、イントロにおけるキーボードの音の立ち上がりの特有の音色感や音の透明感が素晴らしい。奥の左寄りに聴こえてくるストリングスの高域の倍音の美しさや、前後のレイヤーをきれいに描き分けているサウンドステージの見通しの良さ。ヴォーカルが入ってくると、センターの密度が高い。スピーカーに対する駆動力も充分に高く、スピーカーからの音離れがいいのも特徴だ。また、音の反応としては速すぎず、おっとりしすぎずのナチュラルな立ち上がり。音の感触としてはしなやかさを持っている。
クラシックの編成の大きいオーケストラを聴くと、全楽器がフォルテで演奏するトゥッティの部分がまず良かった。細部までフォーカスがよく合っていて、パートごとの音も聴き分けられる。また、コンサートホールという空間自体の感じがムラなく出てくる。低音楽器の鳴りの勇壮さもスケール感が出ていて、ピラミッド型ではないが、安定した音のバランスを感じる。ハイファイ性能が高まった状態の、フラットに近い帯域バランスだ。
室内楽的なアンサンブルの部分になるが、フルートやオーボエ、クラリネットといった楽器の各ソロの倍音の出方がきれい。背後に音量低く鳴らしている弦やホルンの伸ばしの音が自然と聴こえてくるような聴かせ方も上手。音楽の作り手がこういうバランスで聴いてほしい、という優先順位がそのまま聴こえてくるし、対位法的な部分でのテクスチャーも実に心地よい。
一方、たとえばペン・ハーパーとブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマという、黒人男性のコーラスグループによるアーシーなサウンドも深情けに聴かせてくれる。あるいはピーター・ガブリエル『US』での重層的な低音のサウンドの描き分けや、たゆたうような成分の再現性も高い。
内蔵のフォノイコライザーが聴かせてくれる音も良かった。アナログプレーヤー「PD-151」にMCカートリッジ「LMC-5」を装着して聴いた。MC/MMの両タイプのカートリッジに対応し、一体型の優位性を行かしたSN感のいい、素直なトーン。ただし音の密度は高く、実体感を持ってレコードを聴かせてくれる。ヴォーカルものの声の情感も良かったし、低音感も充実。オーケストラを聴いた時の頭を押さえられるような感じのない、開放的な鳴り方も印象的だった。
これまでに、フォステクスのラージモニターやソナス・ファベール、FINK team等、違うタイプのスピーカーを鳴らした音も確認しているが、透明感や空間表現力の高さ、再生している音楽や演奏自体の魅力を素直に伝えつつ、ほのかな温かみと旨みのある低音という音色感をバランス良く持たせた音の魅力は共通していた。
昨今、特にヨーロッパ市場においては発熱や放熱孔の大きさに対する規制が厳しくなり、A級アンプを作るのが難しくなっていくという。ラックスマンも、今後はAB級アンプにもさらに注力していくことが予想されるだろう。L-507Zは、プリメインアンプのここ数年の進化をきちんと踏まえた上で、AB級ならではの懐の深さを備えた製品であると感じられた。
(提供:ラックスマン)
昨年9月に発表されたラックスマンの最新プリメインアンプ「L-507Z」。その型番からすると、2017年に発売となった「L-507uXII」をベースに開発されているようにも見えるが、実は2015年に発売された「L-590AXII」からの技術的継承が多いという。
ちょっと意外な感じもする。というのは、L-507ZがAB級であるのに対して、L-590AXIIはA級だからだ。ラックスマンによると、名称としては “ゴールデンナンバー” である「507」を使うことにしたのだが、その内実は、「L-590AXII」をベースにAB級とした上で、最新技術でブラッシュアップしたものなのだという。
ラックスマンは2025年に創業100周年を迎えるが、それを見据えた技術的な内容を持った製品でもある。非常に重要なモデルであり、力を入れて開発されているのを感じる。
L-507Zは、現代のプリメインアンプに求められているものをすべて持っているといっても過言ではない。詳しくは後述するが、SN比や駆動力の高さ、トランジェントの良さ、音色の再現性、そして空間表現力。さらにオーディオ的な魅力を持った音色感。こうした要素を高い次元でバランスさせているのだ。
さらに言うならば、A級、AB級といった方式の差を超えた本質的な音の良さを持っているということもできる。その詳細を見ていこう。
■最新の増幅帰還回路を搭載。コンデンサー等のパーツ類も厳選
L-507Zに搭載されているのは、最新の増幅帰還回路「LIFES」(ライフス)である。Luxman Integrated Feedback Engine Systemの略称であり、基本的なコンセプトは「歪み成分のみをフィードバックすることで鮮度が高く、自然で瑞々しい音色を実現する」こと。これを目標に、メイン回路と歪み検出回路を一体化させている。
これまでラックスマンは、ODNFと名付けられた増幅回路を20年以上に渡って改良、進化させてきた。ただし、内容的に回路規模が拡大し続けたこともあり、それを根本的に見直すことによって「LIFES」が生まれたのだ。この回路を最初に搭載したのがフラグシップのステレオパワーアンプ「M-10X」、今回のL-507Zはその第2弾となる。結果としてこのパワーアンプ部だけで歪み成分は半分以下、SN比は3dB向上している。
電源部は高レギュレーションの電源トランスと10,000μF×8本という大容量コンデンサーを組み合わせ、ラックスマン独自のハイイナーシャ(高慣性)電源部を構築。プリアンプ部の出力段にはセパレートアンプの「C-900u」と同等のバッファー回路を搭載。ボリュームとしては片チャンネルあたり直列に2本の抵抗だけで音量調節する「LECUA」の最新版を採用している。
その他、シャーシ電流によるアースのインピーダンス上昇や発生磁界の影響を隔絶する目的で、シャーシを独立させる構造や大型のグラデーション鋳鉄製の脚、導体径を太くしたノンツイスト構造の電源ケーブル「JPA-10000i」の採用など、同社のノウハウが存分に投入されている。
また、使い勝手という部分でもよく考えられているアンプでもある。リスニングポジションから音量を確認しやすいLEDによる音量レベル表示。ヘッドホンで聴く場合にも、一般的な6.3mm径の端子と共に、左右独立のグラウンド配線によるセパレーションの良さが特徴の4.4mm径のヘッドホン出力端子を増設。その他、ごく近い将来にアップデートで赤外線以外のリモート操作にも対応する外部コントロール端子の装備など、新しいスタイルに対応したプリメインアンプの利便性を追求している。
■音楽の作り手の思いをそのまま伝える表現力を持つ
ラックスマンの試聴室でフォーカルのスピーカー「Sopra N°2」を鳴らしてテストした。デジタルプレーヤーは「D-10X」だ。
竹内まりや「シングル・アゲイン」から聴きだすと、イントロにおけるキーボードの音の立ち上がりの特有の音色感や音の透明感が素晴らしい。奥の左寄りに聴こえてくるストリングスの高域の倍音の美しさや、前後のレイヤーをきれいに描き分けているサウンドステージの見通しの良さ。ヴォーカルが入ってくると、センターの密度が高い。スピーカーに対する駆動力も充分に高く、スピーカーからの音離れがいいのも特徴だ。また、音の反応としては速すぎず、おっとりしすぎずのナチュラルな立ち上がり。音の感触としてはしなやかさを持っている。
クラシックの編成の大きいオーケストラを聴くと、全楽器がフォルテで演奏するトゥッティの部分がまず良かった。細部までフォーカスがよく合っていて、パートごとの音も聴き分けられる。また、コンサートホールという空間自体の感じがムラなく出てくる。低音楽器の鳴りの勇壮さもスケール感が出ていて、ピラミッド型ではないが、安定した音のバランスを感じる。ハイファイ性能が高まった状態の、フラットに近い帯域バランスだ。
室内楽的なアンサンブルの部分になるが、フルートやオーボエ、クラリネットといった楽器の各ソロの倍音の出方がきれい。背後に音量低く鳴らしている弦やホルンの伸ばしの音が自然と聴こえてくるような聴かせ方も上手。音楽の作り手がこういうバランスで聴いてほしい、という優先順位がそのまま聴こえてくるし、対位法的な部分でのテクスチャーも実に心地よい。
一方、たとえばペン・ハーパーとブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマという、黒人男性のコーラスグループによるアーシーなサウンドも深情けに聴かせてくれる。あるいはピーター・ガブリエル『US』での重層的な低音のサウンドの描き分けや、たゆたうような成分の再現性も高い。
内蔵のフォノイコライザーが聴かせてくれる音も良かった。アナログプレーヤー「PD-151」にMCカートリッジ「LMC-5」を装着して聴いた。MC/MMの両タイプのカートリッジに対応し、一体型の優位性を行かしたSN感のいい、素直なトーン。ただし音の密度は高く、実体感を持ってレコードを聴かせてくれる。ヴォーカルものの声の情感も良かったし、低音感も充実。オーケストラを聴いた時の頭を押さえられるような感じのない、開放的な鳴り方も印象的だった。
これまでに、フォステクスのラージモニターやソナス・ファベール、FINK team等、違うタイプのスピーカーを鳴らした音も確認しているが、透明感や空間表現力の高さ、再生している音楽や演奏自体の魅力を素直に伝えつつ、ほのかな温かみと旨みのある低音という音色感をバランス良く持たせた音の魅力は共通していた。
昨今、特にヨーロッパ市場においては発熱や放熱孔の大きさに対する規制が厳しくなり、A級アンプを作るのが難しくなっていくという。ラックスマンも、今後はAB級アンプにもさらに注力していくことが予想されるだろう。L-507Zは、プリメインアンプのここ数年の進化をきちんと踏まえた上で、AB級ならではの懐の深さを備えた製品であると感じられた。
(提供:ラックスマン)