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グーグルの音楽配信はアップルに勝てるか

公開日 2010/07/06 18:38 編集部:風間雄介
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6月、グーグルが音楽配信サービスを始めるとウォールストリートジャーナルが報じた。これを裏付けるように、グーグルと音楽レーベルの交渉の進展具合など、噂話が賑やかになってきた。

報道では、グーグルはまず検索連動型の音楽ストアを構築し、その後クラウドからAndroid端末へ音楽をストリーミング配信する月額制サービスを提供する、としている。

このところ対立する局面が増えているグーグルとアップルだが、音楽サービス分野でも真正面から相まみえることになりそうな気配だ。

一部には、アップルに戦いを挑んでもグーグルは勝ち目がない、という意見もあるようだ。iTunes Storeは北米ナンバーワンの音楽小売店であり、すでにインフラとして機能しているのだからひっくり返すのは困難、という主張はそれなりに説得力がある。

だが、スマートフォンやタブレットPCでの普及拡大を推し進めているグーグルの立場を考えてみたら、キラーコンテンツである音楽/動画配信分野で、アップルの独走状態を放置し続ける危険性もまた大きい。

◇  ◇  ◇


グーグルには世界シェア1位のウェブ検索があるが、アップルにはない。アップルはPC/Mac用のSafariはもちろん、iPhoneやiPadでも検索をグーグルやマイクロソフトに依存している。

アーティストや楽曲をウェブで検索する、という行動は、多くの人が頻繁に行っている。このとき、検索結果にグーグルが提供する楽曲が表示され、試聴や購入を少ないステップで行えたら非常に便利だ。わざわざiTunesを起動しiTunes Storeに接続してから、ようやく楽曲を探せるようになるアップルより余程使いやすいし、ユーザーへの露出効果も高い。

やり方次第で、iPhone/iPadでアーティストや楽曲をウェブ検索したユーザーを、HTML 5等で構築したグーグルのクラウド型音楽サービスサイトに誘導する、などということも可能だろう。ウェブとオープンテクノロジーを使えば、グーグルはiPhoneユーザーを自社サービスに取り込むことすらできるのだ。アップルが認める業界標準技術を使ってウェブアプリ化すれば、さすがのアップルもアクセスを遮断することはできないはずだ。

ウェブ検索での圧倒的なシェアを、音楽サービスへの誘導にうまく利用できたら、グーグルはかなり善戦するのではないか。

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アップルは1社でiPodやiPhoneを開発・製造・販売し、iTunesの機能増強やサービス設計も単独で行っている。ソフトとハードを一体的に開発・運用できるのがアップルの強みで、これが同社の競争力の源泉となってきた。

一方のグーグルは、ソフトウェアには滅法強いが、ハードウェアの開発力はほぼ無いに等しい。だが、Androidでのやり方を見ても分かるとおり、グーグルは自社ブランド端末を大量に売ろうとしているわけではない。オープンで扱いやすい技術を提案し、賛同するハードメーカーを募ることで、自社製プラットフォームをスピーディーに広げようとしている。

特にここ最近、グーグルとソニーが急接近していることは注目に値する。ソニーはグーグルの「Google TV」に参画し、高機能なネット対応テレビを発売する計画だし、グループ会社のソニー・エリクソンもAndroidへの傾斜を強めている。また、ソニーはウォークマンのプラットフォーム共通化を模索しており、「Androidを含めて可能性を検討している」と昨年6月にコメント(関連ニュース)していることも忘れてはならない。

またいくつかの報道によると、ソニーとグーグルはクラウドを利用したオンラインサービスなどでも提携するようだ。「クラウド」「提携」という言葉の意味が広すぎて具体的な内容は想像しづらいが、「ソニーオンラインサービス」の音楽配信サービスとグーグルの音楽配信サービスが、DRMやファイル形式などで互換性を持つ事も考えられるし、両者が統合的に運用される可能性もある。

いずれにしても、洗練されたハードを開発できるソニーと、ウェブ技術でトップレベルにあるグーグルが、音楽サービス分野でも手を結んだとしたら、非常に強力なタッグとなることは間違いない。

グーグルの音楽サービスは、もちろんソニー以外のメーカーのAndroidスマートフォンやタブレット型デバイスなどでも利用できるはずだ。アップル製品でしか使えないiTunes Storeと様々なデバイスで使えるグーグルの音楽サービス、というコントラストが鮮明になるだろう。

だが、端末の種類や数が多いだけでiPodやiPhoneを駆逐できるかと言ったら、そう単純な話ではなさそうだ。粗製濫造の端末が増えることで、かえってグーグルの音楽サービスの評判が下がるということも考えられる。成功のためには、ソニーのような優秀なハードメーカーと密に協力することが欠かせない。

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音楽サービスにおいて、アップルは圧倒的な強者である一方、グーグルはまだ参入もしていない。これはもちろん大きなハンデであり、今から逆転するのは容易なことではない。

ただし、アップルはこの約10年で強固なインフラやエコシステムを築き上げたが故に、逆に動きづらくなっている部分もあるはずだ。

競争のフィールドが変われば、今日の勝者が明日の敗者になるのはよくあること。グーグルのやり方次第で、アップルがいわゆる「イノベーションのジレンマ」に陥る可能性もある。ゲームのルールを変えるような仕掛けをグーグルは積極的に行うべきだ。

報道によれば、グーグルはクラウドを使った定額制サービスを検討しているようだが、この中身も気になる。アップルもクラウド型サービスを提供すると噂されており、これとの差別化が焦点となるだろう。

アップルと同じようなサービスを少し早くリリースするだけでは、アップルの牙城は崩せまい。必要なのはユーザーと音楽との関わり方を変える、全く新しい提案だ。

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以前にも書いたが、記者は決してアップルが嫌いなわけではなく、その魅力的な製品を日々使っている一人だ。だが、音楽サービス分野でアップルが一人勝ちし、他の選択肢がほとんどない現在の状況が、このまま続いて欲しいとは思わない。

一般的に、寡占状態が続けば、メーカーの価格決定力が強まり、製品開発も停滞する。そうなればユーザーの不利益となることは言うまでもない。

もう一つの強力な対抗軸が現れたら、これと切磋琢磨することで、アップル製サービスや製品はさらに磨かれるはず。グーグルがその役割を担うことを期待したい。

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