<山本敦のAV進化論 第126回>
“ソニーらしさ”を極めたスマホ「Xperia XZ Premium」。開発陣に聞くディープなこだわり
■デバイスを一新した新カメラシステム「Motion Eye」
まず最初に「XZ Premium」の進化したカメラ機能に注目しよう。スマートフォンとして世界で始めて、イメージセンサーの中にメモリーを搭載する“メモリー積層型センサー”を採用する「Motion Eye」カメラシステムが採用されている。従来モデルよりもデータの読み出し速度が5倍速くなっているという。
メインカメラの有効画素数は19MP。現行のXZの23MPと単純に画素数だけ比べると下がっているが、ピクセルピッチを広く取って明るく高精細なイメージをキャプチャーできるよう改善を図った。オートフォーカスのシステムはXZと同じ“先読みAF”を採用する。動画は4K撮影に対応。13MPのセンサーを搭載するフロントカメラの性能は現行XZとほぼ一緒。
XZ PremiumとXZsに搭載された「Motion Eye」カメラシステムでは、イメージセンサーにレンズ、画像処理エンジン「BIONZ」などキーデバイスは全て新規に開発したものが搭載されている。「画質をさらに追い込みながら、よりクリエイティブな静止画・動画コンテンツを手軽に撮影して楽しめるように全体の改善をバランス良く図った」と間下氏が解説する。
メモリー積層型センサーを搭載したことにより、1フレーム内にノイズリダクションやHDRなど重ね合わせの効果による短時間の撮像処理が余裕を持ってこなせるようになるという。レンズは周辺解像度を高めるためにモジュールの機構を見直し、レンズの厚みなどにも手を加えている。スリムな本体の厚みいっぱいに固定されるカメラモジュールのサイズから、そこにソニーの先端技術が惜しみなく詰め込まれていることが目で見てもよくわかる。
本体外側のメインカメラモジュールまわりをチェックすると、iPhone 7のようにレンズの周りがわずかに盛り上がっていることがわかる。平らなテーブルの上に置いてバランスが崩れるわけではないし、目立つほどではない。
超ハイフレームレート撮影&スーパースロー再生の機能は、カメラの機能を動画撮影モードに切り替えると表示されるアイコンをタップ。ハイフレームレート撮影のモードに切り替えてから動画撮影アイコンをタップすると、その瞬間約0.2秒を最大960fps/720pのイメージでキャプチャーして、再生時にスーパースローモーションで被写体の動きがチェックできる。
間下氏は「水飛沫や動物の動く様子など、何気ない日常のシーンをアーティスティックに捕らえて楽しめる機能」と紹介しているが、例えばゴルフの練習時に、ドライバーでボールをインパクトする際の瞬間を記録したり、960fpsの高速撮影できれいに残せるならば、いろいろ実用的な使い方も浮かんできそうだ。現状は960fps/720p/約0.2秒にフレームレートと画質が固定されているようだが、これがもし画質を少し落としてでも1秒間記録できるようになど、ユーザーが設定を選べるようになれば一段と実用性が高まりそうにも思う。
もうひとつの新機能である「Predictive Capture(先読み撮影)」はスポーツシーンや乗り物など、動いている被写体の決定的シャッターチャンスを逃さず捉えるのに有効だ。カメラを起動して、フレームの中に動く被写体があれば自動で検知。その瞬間から一定周期で動体を検知して静止画像をバッファリングする。シャッターボタンを押した瞬間にバッファリングしていた画像と合わせて4枚の画像をピックアップ。4枚の画像の中からお気に入りの1枚を、または4枚の画像ともに残すことができる。(※記事初出時、「先読み撮影」機能について誤った記述がありました。お詫びして訂正致します。)
同じような機能を搭載するスマホは他社からも商品化されているが、XZ Premiumの「先読み撮影」機能の特徴を間下氏がこのように語っている。
「一般的に多く見られる、バッファリングを常時繰り返す方法では、フレームレートを速くせざるをえないため、解像度を下げなければならず、オートフォーカスも甘くなりがちです。XZ Premiumでは動きを検知した瞬間に最大4フレームの静止画だけをキャプチャーする手法を採っているので、画質に妥協がありません。最大19MP/4対3、17MP/16対9のセンサーの実力をフルに発揮した画質で先読み撮影を使っていただけます」(間下氏)
■世界初の4K/HDR対応ディスプレイを搭載
MWC2017ではLGエレクトロニクスやサムスンからもHDR対応のモバイル端末が発表されたが、4K/HDR対応はXZ Premiumだけだ。Xperiaシリーズでは2015年発売のZ5 Premium以来となり、復活の理由については先に安達氏が述べた通りだが、では実際にどんなコンテンツが楽しめるようになるのだろうか。ディスプレイの開発を担当した松原氏にうかがった。
「モバイル向けのHDRコンテンツは、本機の発売頃に合わせてAmazonプライム・ビデオから提供が開始される予定です。XZ PremiumはHDR10をサポートしていますが、将来は放送系のHDRコンテンツも楽しめるようにHLG(ハイブリッド・ログ・ガンマ)方式にも対応しています」(松原氏)。
オンライン配信の動画コンテンツについてはAmazonのほか、Netflixも4K/HDR配信の開始を予告している。機が熟せば、ソニーもこれに対応することを明言するはずだ。放送のHDRコンテンツがXZ Premiumのようなモバイル端末でどのように視聴できるようになるのかは、今後コンテンツプロバイダーを訪問して明らかにしていきたい。
4Kネイティブで再生できるコンテンツは、純正の「アルバム」アプリに保存した写真や、サードパーティーのものも含めて4K対応のアプリで再生した動画・静止画になる。それ以外のコンテンツについては、Z5 Premiumと同様にサブピクセルレンダリングによるアップスケール処理で4K解像度に変換しながら表示する。SDRからHDRのアプコン機能は搭載していない。
ディスプレイもZ5 Premiumに搭載したものから、さらに進化した新規開発のデバイスを搭載する。カラーフィルターの透過率を上げ、バックライトもより明るいものに変更している。「バックライトの輝度スペックが変わるとそのぶんスイッチングノイズの影響を受けやすくなるので、タッチ精度に影響が出ないよう入念にチューニングを行っています」とファン氏が説明する。
MWC2017の会場ではZ5 Premiumに同じデモ映像を映して画質を見比べることができたが、明暗のコントラスト感や自然な色合いの表現力には明らかな差が感じられる。液晶テレビ“ブラビア”の開発で培ってきた、周囲環境の明るさに合わせてパネルの輝度をコントロールしながら、階調感をコントロールして映像のディテールを引き出す「アダプティブトーンマッピング」技術が本機にも活きている。
Z5 Premiumの発売時には、スマホで見る4K画質の差がわかりにくいという声を耳にすることもあったが、HDRの違いはテレビ同様にスマホでも明確に実感できるだろう。画質面でメリットがあるだけでなく、屋外で動画や写真を見る機会も多くなるスマホだからこそ、明るい画面のメリットがさらに伝わる部分もあるはずだ。
MWC2017のプライベートブースではXZ Premiumのカットモデルも公開された。本機では内部の回路基板の配置も大きく手を入れているという。基板のシェイプを「I型」として、スマホ全体を内側で支える幹のようにして強度を確保した。4K/HDR再生時の放熱対策として、ディスプレイの裏側にグラファイトシートを敷いてディスプレイからの熱をクールダウンする。
LEDバックライトはサイドエッジ型。松原氏によれば「4K/HDRコンテンツを視聴したときのバッテリー消費は、フル充電の状態から135分のコンテンツをストリーミング再生しても十分に持続するレベル」を実現しているという。搭載するクアルコムの最新CPUプロセッサー「Snapdragon 835」シリーズ自体の省電力性能が高いことも、バッテリー性能の向上に貢献しているようだ。
ところで、MWC2017の開催に合わせてUHDアライアンスがモバイル機器向けに、4K/HDR表示の性能を認証する「Mobile HDR Premium」のロゴプログラムを発行した(関連ニュース)。ソニーのXperiaはこれに対してどのようなスタンスを取るのだろうか。
XZ Premiumの商品企画を担当した浅野氏は「ソニーはUHDアライアンスの活動に賛同しています。ただ、現時点ではまずソニーが考えるHDRの魅力を提案しながら、ユーザーを広げていくことが大切と考えています。Xperia XZ Premiumについてもソニー独自の4K/HDRロゴを使いながら、他のソニー製品との連携も含めてアピールしていきたいと考えています」とコメントしている。