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<対談>貝山知弘×マランツ澤田氏

マランツ歴代ディスクプレーヤー5モデルを聴く − 「SA-10」へ連なる進化の軌跡とは

公開日 2017/09/21 10:52 聞き手:貝山知弘 構成:編集部 小澤貴信
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マランツのシェアを確立した黎明期の大ヒットモデル

試聴モデル2
「CD-34」
1985年発売 59,800円(税抜/発売時価格)

CD-34

澤田氏 過去モデルで最初に聴いていただいたのは、1985年発売の「CD-34」です。ご存じの通り、CDはソニーさんとフィリップスが規格策定に携わり、1982年に登場しました。CDが登場した当初、ソニーさんとフィリップス傘下のマランツのプレーヤーはいずれも15万〜18万円台と高価でした。そこに1985年にヤマハさんが59,800円という当時としては非常に安価なCDプレーヤーを出したことで、CD普及のひとつのきっかけになりました。

貝山氏 そうですね。

澤田氏 こうした状況からフィリップスは、傘下のマランツに対して、CDのオリジネーターとして日本のシェアをもっと高めるように求めてきました。もちろんマランツはCDプレーヤーに注力していたのですが、当時は普及価格帯の製品にはそれほど力を入れていなかったのです。

そこでマランツは、ヨーロッパやアメリカなど日本以外の地域でフィリップス・ブランドで展開していた「CD104」というモデルを、マランツ・ブランドのモデルとして日本へ投入することに決めました。CD104は当時から評判が良く、価格は当時のレートで計算すると10万円程度だったと思います。このCD104を日本では59,800円という戦略的な価格で売ろうとしたのです。

ただ価格がリーズナブルとはいっても、CD104は当時160万円という価格だったフィリップス「LHH-2000」と同じスイングアームメカ「CDM-1」を使っていました。さらに言えば、各社がコストダウンを重ねて低価格を実現しているなかで、CD-34はダイキャスト製シャーシを用いるなど異例の物量を誇っていて、サイズが小さいわりに重厚な音がしました。結果としてCD-34は大ヒットとなり、日本国内のCDプレーヤー市場におけるマランツのシェアが確立されたのです。

CD-34の背面部

写真の様に、電源ケーブルとRCAアナログ出力ケーブルが本体に接続されて着脱できないかたちになっている

貝山氏 CD-34が当時大きなヒットになったことはよく覚えています。その登場にはかなりのインパクトがありました。

澤田氏 私の記憶では、1番多いときで月に7,000台以上を出荷していました。欧州モデルなので全て輸入なのですが、間に合わない分は航空便まで使って日本に運んでいたのです。

貝山氏 CD-34は小型のプレーヤーですが、そのデザインは今見ても秀逸です。

澤田氏 非常に合理的にできていると思います。試聴については、CD-34はアンバランス出力のみの搭載なのでRCAケーブルで接続して聴いていただきました。ご覧の通り、電源ケーブルはもちろんRCAケーブルも本体から着脱できない仕様です。

貝山氏 CD-34で実際にCDを再生してみて、想像以上にバランスの整った音が出ていることに驚きました。当時この価格帯で、これだけの音を出していたCDプレーヤーというのはなかなかなかったのではないでしょうか。

澤田氏 高級機は別としても、当時10万円を切る製品において、ここまで強固なシャーシを使っていて重量もあるものというのはまずありませんでした。

さらに言うと、CD再生においてドライブメカや足回りが音に影響する重大な要素だという認識が広まったのは、この時期よりずっと後のことです。ともするとCDの登場当初は、「デジタルなのだから、データを正しく読み取りさえすればスーパーサウンドが享受できる」「デジタルだからどんなプレーヤーでも音は一緒だ」などと言われた時代もあったのです。そういう当時の状況から考えても、小型でこれほど強固なシャーシを持つCDプレーヤーは他にないです。

貝山氏 初期のCDプレーヤーは何台も持っていましたが、当時このクラスでこれだけの音を出していた記憶はないですね。もちろん、空間再現などは現代のプレーヤーと同じようにはいかないですが。

当時のカタログを見ながら、開発背景を説明する澤田氏。貝山氏はCD登場当時の状況を回想していた

澤田氏 しっかりした音を出してくれますが、スピーカーとスピーカーの間に音が展開していて、その外へは広がっていかないですね。ちなみにCD-34はフィリップス製の「TDA1540」という14bitのDACを採用していますが、16bit相当の性能を確保していました。また、当時のプレーヤーとして珍しく、L/Rで独立して1基ずつDACを搭載しています。ですから、セパレーションについては有利だと思います。

現代のプレーヤーと異なる点としては、シャープフィルターを採用している点も挙げられます。シャープフィルターなので20kHzでストンと切れて、それより上の帯域はまったくないのですが、その分データは綺麗に出ます。現代のモデルでは、スローフィルターでじわじわと切っていくのが一般的です。

そういう意味でCD-34は非常に割り切っていますが、その代わりに音の密度感を大事にしていると言えます。L/R独立DACならばもう少し音が広がっていても良いかとも思うのですが。RCAの音声出力ケーブルが、細い上にL/Rでくっついて伸びていますが、これを剥がして別々にすれば、音が広がるのではと思いました(笑)。ただその分、音は薄くなると思います。

貝山氏 渡辺玲子さんのヴァイオリンはCD層を聴きましたが、音の芯がしっかり表現されています。CDが登場した当時は、このあたりにLPとCDの音の差を感じました。ところでLPの場合は再生に苦労がありましたが、CDでこんなに簡単に音がでるのかと驚いたものです。

澤田氏 CDになると、レコードの反りや埃の付着などのややこしい問題からは解放されました。しかし、ただちに音が良かったかと言われればそうではないですよね。

貝山氏 この曲で演奏されているバイオリンはグァルネリ・デル・ジェスによる1736年製「ムンツ」なのですが、古楽器らしさはやはりSA-10の方が出ています。CD-34ではおとなしく聴こえてしまいます。

澤田氏 やはり細かいニュアンスは出にくかったのかもしれないです。

貝山氏 それでも、聴かせどころは良く押さえられていました。

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