ジャズ・ピアニスト 辛島文雄さんが新作『ムーン・リヴァー ソロ・スタンダーズ』を語る!
「季刊analog」誌のピットインのページ(vol.16、17)に登場していただき、「ファイル・ウェブ」でもその対談記事が掲載されているジャズピアニスト・辛島文雄さん(対談はこちら)。世界中で演奏を行ってきた日本を代表するピアニストである辛島さんの、12年ぶりとなる待望のソロ作品『ムーン・リヴァー .ソロ・スタンダーズ』が発売された。これは世界最高峰のピアノブランド であり、日本には数台しか導入されていない「ファツィオーリ F 278」を大ホールで演奏し収録したもの。
内容は、日本人ジャズプレーヤーとしては珍しいスタンダードソロ集で、「ムーン・リヴァー」「枯葉」「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」「ビートルズ・メドレー」など、全15曲を収録している。いずれもお馴染みの曲ばかりだが、そこはジャズにおける深い理解と演奏経験に基づいた辛島文雄さんならではのアレンジが施されている。
また、コンサートホールの効果を十分に活かし、数の少ない貴重なピアノの響きを見事に収録し、スタンダードの新しい表現を楽しむことができる。このように高いクオリティを有しているので、オーディオファンにとっても、本作は必聴のアルバムである。ぜひしっかりとしたオーディオシステムで聴いてもらいたい。ファツィオーリの独特な音色と、タッチやペダルの音までリアルに聴く事ができるはずだ。
さて、久しぶりのソロアルバムをリリースした辛島文雄さんに、アルバムについて直接インタビューを行った。録音時のお話や、アルバムへの想いなどを語っていただこう。
●スタンダード集を出したきっかけとは?
まずひとつめの理由は、今年還暦を迎えて、ピアノを弾く楽しみは十分味わってきたので、今度は自分のピアノで、もっと多くの人が知っている曲とかで楽しんでもらいたい…という気持ちが大きくなってきたんです。もうひとつの理由は、今回使ったピアノ、“ファツィオーリ”に出会ったことですね。
●曲目はどうやって選んだのですか?
巷ではどういう曲が好まれているかをリサーチし、それと僕が弾きたい曲を選びました。いろんな人の気持ちと意見によって15曲が選ばれています。ほどんど僕が好きな曲ばかり(笑)。でも、初めて弾いた曲も何曲かあるんですよ。「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」とか。あまり普段やらない曲も……。こういう曲もジャズピアニストの教養として、身につけてきたことだから、世に問わなくて済ませてしまうのはシャクですよね。こういう風に弾けるんだよ、こういう曲も僕は好きなんだよ、と知ってもらいたい。
●今回、弾いているファツィオーリとの出会いについて教えて下さい
僕は実はこんなピアノがあることは知らなかったんです。今回録音してくれたビデオアーツの宮野川さんが、実はこういうピアノがあるのですが、どうですか? と。最初は、“何それ?”って感じだった(笑)。でも、当日行って弾いてみたら、それは、それは素晴らしいピアノで……いっぺんに魅了されてしまいました。けっこうハードなレコーディングだったんですが、気持ちの上で、このピアノにかなり救われた感じです(笑)。
●ファツィオーリの音色の違いと感想をお聞かせください
ファツィオーリというところは、高級家具屋さんで、イタリアでフェラーリやランボルギーニなどの作っている工房のような感覚なんでしょう。社長さんは、音楽学校行ったりした人らしいです。
音色を分かりやすく言うと、スタンウェイのかっちりとした感じと、ベーゼンドルファーの柔らかさを兼ね備えている音なんです。ちょうど両方のいいところを取った、そんな感じのピアノです。日本にはあまりないそうです。ジャズのレコーディングをした人はいるらいしですが。とにかく僕は初めて弾きましたね。とにかくファツィオーリに、精神的にも高めてもらいましたね。気持ちの上で、奥深いところでピアノが弾ける気がしました。2日間でたくさんの曲をやったので、並みのピアノだと集中力や想像力が途切れてもしょうがないほど、長い時間だった。1日目が9時間半、2日目が11時間くらいでしたから。でも一度、ピアノを弾き出すと、ピアノの音がそういうものを吹き飛ばしてくれるような、そんな魔力をもったピアノでした(笑)。
●このアルバムのライブステージの予定は?
今年の秋に、録音した場所、栗東芸術文化会館のホールで、もう一回ファツィオーリを弾けるんです。それはライブステージとなります。そこを振り出しにして、何カ所かツアーが組まれています。毎年、僕の故郷の大分県の大分銀行でコンサートをやっているんですが、そこでもやることになるでしょう。今回は、なるべく多くが聴いたり、観たりする機会があればいいな、と思います。ジャズファン以外にも聴いて欲しいですね。アルバムの1曲を短くして、たくさん入れてあるのはそういう狙いもあるんですよ。
●今はトリオのツアーがスタートしたところですが…
長いツアーは毎年恒例で、これほどの長いツアーは10年前くらいから続いています。これが僕の年間を通しての活動の中の一部。エルヴィン・ジョーンズのバンドの時代から、ライブとツアーというのが僕の人生で、もう30年ですか。エルヴィンバンドは、1回ツアーに出ると3カ月くらいで、それが年に2回あって、さらにオプションで1月くらい別のツアーもある時も。最大で9カ月くらいツアーでした。日本では2カ月のツアーというとみんなビックリするけど、僕は気になりません。20年以上ずっと演奏している会場もありますし、ほんとうにありがたいことです。ツアーは僕の人生ですね。対応できるだけの体力ため、毎日6、7km歩いたりして、体を先延ばししています(笑)。まだ、まだ大丈夫ですよ。旅先でも、時間を計りながら歩いていることが多いですね。
●最後に辛島さんから新作のアピールを!
僕が初めて弾くピアノですので、僕の気持ちがかなり高揚していました。新鮮な気持ちでピアノが弾けています。知っている曲を、たださらっと弾くのでは、音楽に力が宿らないけど、かなり心を込めて、精神的に掘り下げて弾いたつもりです。曲は、スタンダードばかりですが、丁寧に演奏して、良いものができたと思っています。ぜひ、聴いてみてください。
『ムーン・リヴァー .ソロ・スタンダーズ』は新しいピアノとの出会いからから生まれた、辛島文雄さんの新しい音楽世界の快作ともいえるだろう。ジャズファンはもちろんだが、音楽ファンや、音にこだわったオーディオファンにも十分満足できる内容に仕上がっている。ぜひ、余計な詮索をしないで、聴いてみるといい。きっと新しい感動を受けるに違いないだろう。
●『ムーン・リヴァー ソロ・スタンダーズ』
ピアノ.辛島文雄
VACM 1355 ¥2,940(税込)
制作 /原盤 ピットイン・ミュージック
制作協力 /発売元
ビデオアーツ・ミュージック(株)
【収録曲】
1. ムーン・リヴァー (ヘンリー・マンシーニ )
2. 枯葉 (ジョセフ・コスマ )
3. フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン (バード・ハワード )
4. 時の過ぎ行くままに (ハーマン・ハプフィルド )
5. ボザ・ノバ・メドレー〜
イパネマの娘 (アントニオ・カルロス・ジョビン )
黒いオルフェ (ルイス・ボンファ )
ワンス・アイ・ラブド (アントニオ・カルロス・ジョビン )
6. ジャンゴ (ジョン・ルイス )
7. マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ (ガイ・ウッド )
9. ビートルズ・メドレー
イエスタディ (レノン /マッカートニー )
ヒア・ゼア・アンド・エヴリィウェア (レノン /マッカートニー )
10. いつか王子さまが (フランク・チャーチル )
11. ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ (コール・ポーター )
12. マイ・ファニー・バレンタイン (リチャード・ロジャース )
13. 酒とバラの日々 (ヘンリー・マンシーニ )
14. マイ・ロマンス (リチャード・ロジャース )
15. ラウンド・ミッドナイト (セロニアス・モンク )
(季刊analog編集部)
内容は、日本人ジャズプレーヤーとしては珍しいスタンダードソロ集で、「ムーン・リヴァー」「枯葉」「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」「ビートルズ・メドレー」など、全15曲を収録している。いずれもお馴染みの曲ばかりだが、そこはジャズにおける深い理解と演奏経験に基づいた辛島文雄さんならではのアレンジが施されている。
また、コンサートホールの効果を十分に活かし、数の少ない貴重なピアノの響きを見事に収録し、スタンダードの新しい表現を楽しむことができる。このように高いクオリティを有しているので、オーディオファンにとっても、本作は必聴のアルバムである。ぜひしっかりとしたオーディオシステムで聴いてもらいたい。ファツィオーリの独特な音色と、タッチやペダルの音までリアルに聴く事ができるはずだ。
さて、久しぶりのソロアルバムをリリースした辛島文雄さんに、アルバムについて直接インタビューを行った。録音時のお話や、アルバムへの想いなどを語っていただこう。
●スタンダード集を出したきっかけとは?
まずひとつめの理由は、今年還暦を迎えて、ピアノを弾く楽しみは十分味わってきたので、今度は自分のピアノで、もっと多くの人が知っている曲とかで楽しんでもらいたい…という気持ちが大きくなってきたんです。もうひとつの理由は、今回使ったピアノ、“ファツィオーリ”に出会ったことですね。
●曲目はどうやって選んだのですか?
巷ではどういう曲が好まれているかをリサーチし、それと僕が弾きたい曲を選びました。いろんな人の気持ちと意見によって15曲が選ばれています。ほどんど僕が好きな曲ばかり(笑)。でも、初めて弾いた曲も何曲かあるんですよ。「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」とか。あまり普段やらない曲も……。こういう曲もジャズピアニストの教養として、身につけてきたことだから、世に問わなくて済ませてしまうのはシャクですよね。こういう風に弾けるんだよ、こういう曲も僕は好きなんだよ、と知ってもらいたい。
●今回、弾いているファツィオーリとの出会いについて教えて下さい
僕は実はこんなピアノがあることは知らなかったんです。今回録音してくれたビデオアーツの宮野川さんが、実はこういうピアノがあるのですが、どうですか? と。最初は、“何それ?”って感じだった(笑)。でも、当日行って弾いてみたら、それは、それは素晴らしいピアノで……いっぺんに魅了されてしまいました。けっこうハードなレコーディングだったんですが、気持ちの上で、このピアノにかなり救われた感じです(笑)。
●ファツィオーリの音色の違いと感想をお聞かせください
ファツィオーリというところは、高級家具屋さんで、イタリアでフェラーリやランボルギーニなどの作っている工房のような感覚なんでしょう。社長さんは、音楽学校行ったりした人らしいです。
音色を分かりやすく言うと、スタンウェイのかっちりとした感じと、ベーゼンドルファーの柔らかさを兼ね備えている音なんです。ちょうど両方のいいところを取った、そんな感じのピアノです。日本にはあまりないそうです。ジャズのレコーディングをした人はいるらいしですが。とにかく僕は初めて弾きましたね。とにかくファツィオーリに、精神的にも高めてもらいましたね。気持ちの上で、奥深いところでピアノが弾ける気がしました。2日間でたくさんの曲をやったので、並みのピアノだと集中力や想像力が途切れてもしょうがないほど、長い時間だった。1日目が9時間半、2日目が11時間くらいでしたから。でも一度、ピアノを弾き出すと、ピアノの音がそういうものを吹き飛ばしてくれるような、そんな魔力をもったピアノでした(笑)。
●このアルバムのライブステージの予定は?
今年の秋に、録音した場所、栗東芸術文化会館のホールで、もう一回ファツィオーリを弾けるんです。それはライブステージとなります。そこを振り出しにして、何カ所かツアーが組まれています。毎年、僕の故郷の大分県の大分銀行でコンサートをやっているんですが、そこでもやることになるでしょう。今回は、なるべく多くが聴いたり、観たりする機会があればいいな、と思います。ジャズファン以外にも聴いて欲しいですね。アルバムの1曲を短くして、たくさん入れてあるのはそういう狙いもあるんですよ。
●今はトリオのツアーがスタートしたところですが…
長いツアーは毎年恒例で、これほどの長いツアーは10年前くらいから続いています。これが僕の年間を通しての活動の中の一部。エルヴィン・ジョーンズのバンドの時代から、ライブとツアーというのが僕の人生で、もう30年ですか。エルヴィンバンドは、1回ツアーに出ると3カ月くらいで、それが年に2回あって、さらにオプションで1月くらい別のツアーもある時も。最大で9カ月くらいツアーでした。日本では2カ月のツアーというとみんなビックリするけど、僕は気になりません。20年以上ずっと演奏している会場もありますし、ほんとうにありがたいことです。ツアーは僕の人生ですね。対応できるだけの体力ため、毎日6、7km歩いたりして、体を先延ばししています(笑)。まだ、まだ大丈夫ですよ。旅先でも、時間を計りながら歩いていることが多いですね。
●最後に辛島さんから新作のアピールを!
僕が初めて弾くピアノですので、僕の気持ちがかなり高揚していました。新鮮な気持ちでピアノが弾けています。知っている曲を、たださらっと弾くのでは、音楽に力が宿らないけど、かなり心を込めて、精神的に掘り下げて弾いたつもりです。曲は、スタンダードばかりですが、丁寧に演奏して、良いものができたと思っています。ぜひ、聴いてみてください。
『ムーン・リヴァー .ソロ・スタンダーズ』は新しいピアノとの出会いからから生まれた、辛島文雄さんの新しい音楽世界の快作ともいえるだろう。ジャズファンはもちろんだが、音楽ファンや、音にこだわったオーディオファンにも十分満足できる内容に仕上がっている。ぜひ、余計な詮索をしないで、聴いてみるといい。きっと新しい感動を受けるに違いないだろう。
●『ムーン・リヴァー ソロ・スタンダーズ』
ピアノ.辛島文雄
VACM 1355 ¥2,940(税込)
制作 /原盤 ピットイン・ミュージック
制作協力 /発売元
ビデオアーツ・ミュージック(株)
【収録曲】
1. ムーン・リヴァー (ヘンリー・マンシーニ )
2. 枯葉 (ジョセフ・コスマ )
3. フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン (バード・ハワード )
4. 時の過ぎ行くままに (ハーマン・ハプフィルド )
5. ボザ・ノバ・メドレー〜
イパネマの娘 (アントニオ・カルロス・ジョビン )
黒いオルフェ (ルイス・ボンファ )
ワンス・アイ・ラブド (アントニオ・カルロス・ジョビン )
6. ジャンゴ (ジョン・ルイス )
7. マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ (ガイ・ウッド )
9. ビートルズ・メドレー
イエスタディ (レノン /マッカートニー )
ヒア・ゼア・アンド・エヴリィウェア (レノン /マッカートニー )
10. いつか王子さまが (フランク・チャーチル )
11. ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ (コール・ポーター )
12. マイ・ファニー・バレンタイン (リチャード・ロジャース )
13. 酒とバラの日々 (ヘンリー・マンシーニ )
14. マイ・ロマンス (リチャード・ロジャース )
15. ラウンド・ミッドナイト (セロニアス・モンク )
(季刊analog編集部)