アンドリュー・ジョーンズ氏らが開発

<HIGH END>ELACが90周年記念の新旗艦スピーカーやターンテーブル発表。山之内 正が試聴レポート

公開日 2016/05/06 15:38 山之内 正
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ELACは創立90周年を記念し、新しいフラグシップスピーカー「Concentro」とターンテーブル「Miracord 90 Anniversary」をHighEndのブースで公開した。いずれも欧州では秋から年内にかけて発売予定で、ブース内の試聴スペースで実際に再生音を聴くことができた。

Miracord 90 Anniversary(ブラック仕上げ)

リスニングルームではホワイト仕様のConcentroを用いてデモンストレーションを行った。横から見ると断面が楕円になっていることがわかる

Concentroは高さ1.7mに及ぶ堂々たるフロア型スピーカーで、JET 5を採用した同軸型ミッドレンジ/トゥイーターユニットとミッドバスユニットを正面に配置。

ブラック仕様のプロトタイプ。楕円をモチーフにした形状はエラックとしては斬新で、レコードの上に載せる展示も目を引いた

側面には25.5cm口径のウーファー4発を上下2個ずつに分けて搭載し、正面の中高域ドライバーと音響中心を揃えている。3種類のドライバーユニットはいずれも新たに開発したものだが、JETやクリスタルコーンなど近年のエラック製品を象徴する技術を採り入れていることはいうまでもない。

JETトゥイーターとクリスタルコーンを組み合わせた新開発の同軸ドライバー

片側に2個ずつ搭載するウーファーは25.5cm口径。分厚く幅の広いエッジを採用している点に注目

ブースには昨年同社に加わったアンドリュー・ジョーンズをはじめ、Concentroの設計陣が揃っていた。ジョーンズ氏によると、Concentroはconcertとconcentricを掛け合わせたネーミングで、同軸ユニットを中心としたコンセプトを表しているとのこと。楕円をモチーフにした曲面構成はエラック製品の新しい世代を象徴するもので、定在波や回折の低減が目的だという。

2つのドライバーを取り付けた独立構造のフロントバッフルとベース部にアルミを導入することで、1本あたりの重さは140kgに及ぶ。アルム無垢材のベース部だけでも25kg、スリムなトールボーイ型スピーカーなら本体の重さに匹敵する。

ジョーンズは「TADでも重いスピーカーを作って会場の搬入に苦労したけど、また同じぐらい重いスピーカーを作ってしまった」と笑う。価格は未定だが、欧州では50000ユーロを超える見込みだ。

ターンテーブルシステムのMiracord 90 Anniversaryは、往年の名器から型名を継承した記念モデルで、6.5kgの重量級アルミ製プラッターをベルトで駆動。

Miracord 90 Anniversary(レッド仕上げ)

MDF製のベースキャビネットやカーボン製トーンアームなど、最先端の技術を投入しながらデザインコンセプトはどこか懐かしさを漂わせる。カラーバリエーションモデルも含めて、細部と全体のバランスが優れ、質感も非常に高い。

キャビネット天面に記念モデルの刻印がある

ELACはいまでこそスピーカー専業メーカーとして高い評価を確立しているが、かつてはカートリッジやターンテーブルなどアナログ機器でオーディオ市場を席巻したブランドだ。

Miracord 90 Anniversaryはそのアナログ全盛期の栄光を思い出させ、90周年記念モデルにふさわしいターンテーブルだ。ターンテーブルのノウハウを持つ70代の設計者が本機の設計に関わっているとされ、歴史あるブランドならではのエピソードとして興味深い。価格や日本への導入予定などは未定。

Miracord 90 AnniversaryとConcentroを組み合わせたシステムの再生音は、フラグシップにふさわしいスケールの大きさと、揺るぎない音像定位を実現していた。

重心の低いベースは最低音域の揺らぎも含めて楽器の鳴りっぷりの良さを伝え、ヴォーカルはイメージがきれいに収束し、ステレオ音場の見通しの良さが際立っている。

サービスエリアが非常に広く、聴く位置によって各楽器の定位がふらつきにくいのは、JETトゥイーターの特性と曲面を活かしたキャビネットの成果だろう。ターンテーブルとともに早い時期の日本市場への導入を期待したい。

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