欧州のハイレゾも普及促進の段階へ
<IFA>ソニー平井CEOが語る「4KとHDR」の戦略 − 次世代BD関連は発表なし
■イメージセンサーの技術を応用した多彩な展開
デジタルイメージングのカテゴリーも、以前からソニーが成長領域として掲げている。欧州ではとりわけミラーレスの販売が好調だという。さらにコンパクトデジタルカメラのRXシリーズは、欧州でも「プレミアムコンパクト」のカテゴリーを確立させる原動力になった。7月に発売した「RX100 Mk4」とハイズームモデルの「RX10 Mk2」も、4K動画やスーパースロー撮影など広くカスタマーニーズをカバーするカメラとして好評を獲得していると平井氏は語る。
イメージセンサーを中核としたBtoBビジネスの拡大についても、いまのソニーは特に力を入れて取り組んでいる。今年のCESではイメージング技術をオートモーティブの領域にも、パートナーと連携しながら広げて行く方針が示された。今回のIFAでは具体的な展開のアップデートについては発表されなかったが、平井氏は「自動車業界はエレクトロニクスよりも長いスパンでビジネスが動いている。様々なパートナーと話を進めているが、時間はかかるものと思って進めている。本日の時点ではまだ発表できるタイミングじゃない」とコメントした。
イメージセンサーの技術が特に貢献する製品カテゴリーの一つはスマートフォンであるという。平井氏はそのイノベーションを手軽にモバイルで体験できるフラグシップとして、Androidスマートフォンの新製品「Xperia Z5」を壇上で発表。今後もスマートフォンメーカーへデバイスの外販も積極的に行っていく考えも示した。なおスマートフォンでは世界初の4Kディスプレイを搭載する「Xperia Z5 Premium」も紹介された。
■ハイレゾはハイエンドから普及展開のフェーズに移った
オーディオについてはソニーが2年前頃から本格的に注力してきたハイレゾが牽引車となり、今では同社のオーディオビジネスの中核に育ちつつあるという。2年前にウォークマンのハイエンドモデルが発表され、昨年はIFAでエントリーモデルのNW-A10シリーズがお披露目された。平井氏は欧州で、いまハイレゾ対応のものを含む音楽ストリーミングサービスが伸び始めているとしながら、音楽体験の質、手段ともに多様化していることを強調する。
その中で音質は当たり前の価値として重視しながら、ファッショナブルなデザインにも注力した製品開発が重要であると平井氏は語り、新しいウォークマン「NW-A20シリーズ」とともに、高音質と良質なデザインというコンセプトを備えたヘッドホン「h.ear」シリーズを発表。初のハイレゾに対応したカナル型NC搭載イヤホンを商品化するとともに、欧州ではウォークマンの新製品にバンドルするかたちで展開する。
ハイレゾの人気はいま特に日本やアジア市場で高まりつつあるが、ヨーロッパも先進国を中心に、ブームに火がつき始めている。大手音楽配信の仏・Qobuzも、夏からハイレゾ対応の音楽ストリーミングをスタートさせ(関連ニュース)、今回、ソニーブースには同サービスを直接利用できるコンポの試作機も参考展示されている。
コンテンツやユーザーの音楽の聴き方がこれまで以上に多様化していく中で、ソニーとしてハイレゾ商品の普及をマニアから一般的な音楽ファンにまで広げることが大事だと位置づける。今回のイベントで、平井氏がウォークマン新製品の上位機種であるZX100よりもA20に、さらにはよりスタイリッシュなヘッドホンのh.earシリーズに壇上での紹介時間を当てた理由は、ヨーロッパでも間もなくマニアへの認知から普及層への拡大を展開していく戦略に舵を切り始めたからなのだろう。