同技術を搭載したサービス・商品の開発を推進へ
JVC、ヘッドホンでもスピーカーで聴いているような“自然な”頭外定位音場を実現する新技術「EXOFIELD」
JVCケンウッドは、ヘッドホンでの音楽再生時にもスピーカーで聴くときのような自然な音場を再現するという頭外定位音場処理技術「EXOFIELD(エクソフィールド)」を開発したことを発表した。
■ハイレゾやマルチチャンネルにも対応可能
同社では今後、同技術を搭載したサービス・商品の開発を推進する。なおスマートフォンアプリケーション等への実装も可能で、個人特性をインストールすることで、場所を問わず屋外でもヘッドホンで頭外定位音場を楽しめるようになるという。また、ハイレゾ音源やマルチチャンネル音源も処理することができ、ホームシアターやVRにおける立体音場をヘッドホンで再現することも可能としている。
なお、5月11日に今後の展開などについての詳細を改めて発表する予定。5月13日・14日に開催される「音展」にも本技術を出展する。「これを皮切りに、上期中に商品をお届け出来ればと思っている」(JVCケンウッド メディア事業部 CPM 林和喜氏)という。
従来、ヘッドホンの音場はユーザーの頭のなかに定位する「頭内定位」だが、本技術では、個人の耳や顔の形状、基準となる再生スピーカーやリスニングルームなどの音響特性を測定し、各ユーザーに最適な信号処理を行う。これにより、ヘッドホン再生でありながら頭外に定位した自然な音場を実現するという。
前出の林氏は、「これをいかにお客様にお届けするかを現在検討している」とコメント。飛行機内でもコンサートホールのS席で演奏を聴いているかのような体験を提供したり、VRに活用することで“究極の没入感”を得られるようにするなどといった利用イメージを紹介した。
なお、技術名はギリシャ語で“外”を意味する「EXO」と、「FIELD(フィールド・領域)」を組み合わせた造語。これまでにない音場の再現がもたらす新しい世界への広がりを表しているという。
■測定によって個々人に最適な音場を再現
本技術は上記のようにユーザーごとに測定を行って、その測定結果をもとに音場処理を施すことが大きな特徴。従来のヘッドホンにおける頭外定位技術は、標準化された頭部伝達関数を用いて演算処理を行っていたため、耳や顔の形状などの個人の特性までは反映することができず、各ユーザーに最適な効果を発揮することは困難だったと、同社は説明。
これに対し、今回の「エクソフィールド」では、個人の耳や顔の形状だけでなく、使用するヘッドホン、さらには基準となる再生スピーカーやリスニングルームを含む全ての音響特性を測定、解析し、個人に最適にカスタマイズされた信号処理を行う。これにより、従来のヘッドホン頭外定位音場とは異なり、各ユーザーに応じた最適な音場を実現したという。
個人特性の測定のために、MEMSマイクを使用した超小型の耳内音響マイクシステムを新たに開発。このマイクを装着してまずスピーカーからのテスト音で測定し、次にマイクの上からヘッドホンを装着してヘッドホンからのテスト音での測定を行う。この2回の測定データを基に、音楽信号に対して「スピーカー再生音場生成→ヘッドホン再生音場キャンセル」という処理を行って、ヘッドホンを通してスピーカー再生時の音場を再生する。
超小形のマイクを外耳道の空間に配置することで、頭部や耳の形状だけでなく、外耳道の音場特性までも正確な測定を可能にすると同社は説明。マイク装着時に、耳の形状の個人差に関わらずマイクの位置を理想的な測定位置にかんたんに固定できるようにすることで、安定した測定と高い測定精度を実現したとしている。
これらにより、オープン型ヘッドホンはだけでなく、従来の頭外定位で効果が得にくいとされていた密閉型ヘッドホンでも自然な音場でのリスニングを実現するという。
測定データの演算処理用に、「個人特性生成アルゴリズム」を新開発。各ユーザーに最適な音響特性の測定・自動生成が短時間で可能だとのこと。このアルゴリズムにより、リスニングルームなどの測定環境の影響や、ヘッドホンの装着ずれによる、頭外定位音場効果のバラツキを最小化。測定結果から演算した伝達関数に最適化処理を行うことで、幅広い測定条件、使用条件に対応するとしている。
本技術では、従来の頭外定位で課題となっていたセンター音像の不明確さに対して、スピーカーの直接波と反射波をそれぞれ解析。スピーカーとリスナーの位置関係による音の打ち消しや部屋の販社の影響を補正することで、従来の問題を改善した。
さらに、頭外定位音場生成時において、ヘッドホンの再生音場をキャンセルするための逆フィルター生成時に、各チャンネルの位相特性を正確に合わせることで、本来あるべきセンター位置への音像定位を実現したとしている。
また、ヘッドホンの装着位置から生じる周波数特性の変動やピークディップを、ヘッドホンの再生音場をキャンセルする逆フィルター生成時に最適化。ヘッドホンの装着ずれに起因する定位効果の変動を安定化したという。
測定にはインパルス応答を用い、パルス法を採用。これにより、測定から個人特性の生成まで短時間で完了できるようにした。また、周囲の環境や部屋の影響により低域の測定が不安定になりやすい環境では、あらかじめ測定した室内音響の特性を個人特性と組み合わせることで、短時間で低域の安定した特性を生成することも可能だという。
■開発者が苦難の歴史を紹介
本技術の開発を担当した同社メディア事業部 技術統括部の新原寿子氏は、2008年から開発がスタートしたものであると紹介。当時はデジタルオーディオプレーヤーが盛り上がり始めた時期で、「上司から『これからはヘッドホンが流行るから新しいものを考えろ』と司令が下った」のだという。
ただ、実は新原氏は「ヘッドホンでの音楽リスニングが苦手」なのだという。「そういう人が使いたくなるヘッドホンを、ということで開発を進めることになった」と当時の状況を説明した。
しかしそうしてスタートした開発も、様々な事情から2015年12月17日に開発中止が決定。しかし、その中止決定前に受けていた取材の新聞記事が12月31日に掲載され世間の注目を集めたことで決定が覆り、今回の発表にまでたどり着けたのだという。
そして、本技術によって“耳元から解放されるヘッドホンリスニング体験”を提供したいと説明。音の面白さ、楽しさを伝え、音を便利なものとして活用していきたいとした。
■ハイレゾやマルチチャンネルにも対応可能
同社では今後、同技術を搭載したサービス・商品の開発を推進する。なおスマートフォンアプリケーション等への実装も可能で、個人特性をインストールすることで、場所を問わず屋外でもヘッドホンで頭外定位音場を楽しめるようになるという。また、ハイレゾ音源やマルチチャンネル音源も処理することができ、ホームシアターやVRにおける立体音場をヘッドホンで再現することも可能としている。
なお、5月11日に今後の展開などについての詳細を改めて発表する予定。5月13日・14日に開催される「音展」にも本技術を出展する。「これを皮切りに、上期中に商品をお届け出来ればと思っている」(JVCケンウッド メディア事業部 CPM 林和喜氏)という。
従来、ヘッドホンの音場はユーザーの頭のなかに定位する「頭内定位」だが、本技術では、個人の耳や顔の形状、基準となる再生スピーカーやリスニングルームなどの音響特性を測定し、各ユーザーに最適な信号処理を行う。これにより、ヘッドホン再生でありながら頭外に定位した自然な音場を実現するという。
前出の林氏は、「これをいかにお客様にお届けするかを現在検討している」とコメント。飛行機内でもコンサートホールのS席で演奏を聴いているかのような体験を提供したり、VRに活用することで“究極の没入感”を得られるようにするなどといった利用イメージを紹介した。
なお、技術名はギリシャ語で“外”を意味する「EXO」と、「FIELD(フィールド・領域)」を組み合わせた造語。これまでにない音場の再現がもたらす新しい世界への広がりを表しているという。
■測定によって個々人に最適な音場を再現
本技術は上記のようにユーザーごとに測定を行って、その測定結果をもとに音場処理を施すことが大きな特徴。従来のヘッドホンにおける頭外定位技術は、標準化された頭部伝達関数を用いて演算処理を行っていたため、耳や顔の形状などの個人の特性までは反映することができず、各ユーザーに最適な効果を発揮することは困難だったと、同社は説明。
これに対し、今回の「エクソフィールド」では、個人の耳や顔の形状だけでなく、使用するヘッドホン、さらには基準となる再生スピーカーやリスニングルームを含む全ての音響特性を測定、解析し、個人に最適にカスタマイズされた信号処理を行う。これにより、従来のヘッドホン頭外定位音場とは異なり、各ユーザーに応じた最適な音場を実現したという。
個人特性の測定のために、MEMSマイクを使用した超小型の耳内音響マイクシステムを新たに開発。このマイクを装着してまずスピーカーからのテスト音で測定し、次にマイクの上からヘッドホンを装着してヘッドホンからのテスト音での測定を行う。この2回の測定データを基に、音楽信号に対して「スピーカー再生音場生成→ヘッドホン再生音場キャンセル」という処理を行って、ヘッドホンを通してスピーカー再生時の音場を再生する。
超小形のマイクを外耳道の空間に配置することで、頭部や耳の形状だけでなく、外耳道の音場特性までも正確な測定を可能にすると同社は説明。マイク装着時に、耳の形状の個人差に関わらずマイクの位置を理想的な測定位置にかんたんに固定できるようにすることで、安定した測定と高い測定精度を実現したとしている。
これらにより、オープン型ヘッドホンはだけでなく、従来の頭外定位で効果が得にくいとされていた密閉型ヘッドホンでも自然な音場でのリスニングを実現するという。
測定データの演算処理用に、「個人特性生成アルゴリズム」を新開発。各ユーザーに最適な音響特性の測定・自動生成が短時間で可能だとのこと。このアルゴリズムにより、リスニングルームなどの測定環境の影響や、ヘッドホンの装着ずれによる、頭外定位音場効果のバラツキを最小化。測定結果から演算した伝達関数に最適化処理を行うことで、幅広い測定条件、使用条件に対応するとしている。
本技術では、従来の頭外定位で課題となっていたセンター音像の不明確さに対して、スピーカーの直接波と反射波をそれぞれ解析。スピーカーとリスナーの位置関係による音の打ち消しや部屋の販社の影響を補正することで、従来の問題を改善した。
さらに、頭外定位音場生成時において、ヘッドホンの再生音場をキャンセルするための逆フィルター生成時に、各チャンネルの位相特性を正確に合わせることで、本来あるべきセンター位置への音像定位を実現したとしている。
また、ヘッドホンの装着位置から生じる周波数特性の変動やピークディップを、ヘッドホンの再生音場をキャンセルする逆フィルター生成時に最適化。ヘッドホンの装着ずれに起因する定位効果の変動を安定化したという。
測定にはインパルス応答を用い、パルス法を採用。これにより、測定から個人特性の生成まで短時間で完了できるようにした。また、周囲の環境や部屋の影響により低域の測定が不安定になりやすい環境では、あらかじめ測定した室内音響の特性を個人特性と組み合わせることで、短時間で低域の安定した特性を生成することも可能だという。
■開発者が苦難の歴史を紹介
本技術の開発を担当した同社メディア事業部 技術統括部の新原寿子氏は、2008年から開発がスタートしたものであると紹介。当時はデジタルオーディオプレーヤーが盛り上がり始めた時期で、「上司から『これからはヘッドホンが流行るから新しいものを考えろ』と司令が下った」のだという。
ただ、実は新原氏は「ヘッドホンでの音楽リスニングが苦手」なのだという。「そういう人が使いたくなるヘッドホンを、ということで開発を進めることになった」と当時の状況を説明した。
しかしそうしてスタートした開発も、様々な事情から2015年12月17日に開発中止が決定。しかし、その中止決定前に受けていた取材の新聞記事が12月31日に掲載され世間の注目を集めたことで決定が覆り、今回の発表にまでたどり着けたのだという。
そして、本技術によって“耳元から解放されるヘッドホンリスニング体験”を提供したいと説明。音の面白さ、楽しさを伝え、音を便利なものとして活用していきたいとした。