Hi-FiクラスのS/Nと情報量をいかにして両立したのか?
マランツの新旗艦AVプリ「AV8802A」を開発拠点・白河で聴いた【連続レポート前編】
別の記事で詳しく紹介する予定だが、AV8802Aはマランツの白河工場で一貫して生産が行われる純粋な国産モデルである。8層基板への精密な表面実装から手作業の入念な品質管理まで、すべての工程を実際に見学し、生産面でもHi-Fiコンポーネントと同等のノウハウが投入されていることを確認した。
■ピュアオーディオ領域の純度を聴かせるステレオ再生
その生産現場と同じ建物内に作られた開発試聴室で、AV8802Aの再生音を聴いた。ソースプレーヤーはSA-11S3のアナログ出力とHDMI接続のBDプレーヤーを使用。パワーアンプには、開発試聴室での試聴ということで特別に北米モデルの7chパワーアンプ「MM8077」を2台使用し(ステレオ再生時もL/Rを2台のアンプに振り分けた)、全チャンネルをXLRバランスケーブルでつないだ。
スピーカーはフロントL/RおよびサラウンドL/RにB&W「802 Diamond」、センタースピーカーに「HTM2 Diamond」を使用。ドルビーアトモス用のトップスピーカーはB&Wのイン・シーリング(天井埋め込み)スピーカーで、トップフロントに「CCM818」が、トップリアに「CCM816」を配置。BDの再生時、サブウーファーは使用せず、フロントチャンネルにLFE成分を割り当てている。変則的だが、アンプの基本性能を厳密に確認するには適切な方法だ。合計「5・0・4」というシステムとなる。
まずは2chで筆者が普段聴いているCD音源を聴いた。ベースと女性ヴォーカルのデュオ(ムジカ・ヌーダ)は、声とウッドベースそれぞれの輪郭が少しもにじまず、近い音域で音が重なってもそれぞれの実在感が高く、音像がぶれない。また、ボーカルのクリアな発音に加え、ベースも立ち上がりが非常に速く、ピチカートの一音一音に緩みがないことにも感心した。
ソル・ガベッタが独奏を弾くエルガーのチェロ協奏曲は、オケと独奏がどちらも最弱音まで潤いを失わず、ていねいに弾き込んでいる様子がありありと浮かび上がってきた。曲の冒頭、オーケストラが次第に厚みを増すフレーズでは、特に低音楽器が重なっていく部分の音の動きを鮮明に聴き取ることができ、音量が上がるにつれて空間が大きく広がる様子が生々しい。弱音からフォルテシモに至るレンジの余裕や一音一音の鮮度の高さは、普段自宅のリファレンスシステムで聴いている音にかなり近いと感じた。ピュアオーディオ機器では珍しいことではないが、AVアンプから同じグレードの音を聴けることはほとんどない。セパレート型ならではの純度の高さとセパレーションの良さ、そしてスルーレートの高いアンプ回路を採用した成果は予想以上に大きい。参考のためにAV8801でも同じ音源を聴き比べてみたが、音の勢いや粒立ちには雲泥の差があった。
■SACDマルチのポテンシャルを細部まで引き出す
プレーヤーを変えてSACDのマルチチャンネル音源を聴く。アラベラ・シュタインバッハがPentatoneレーベルからリリースしたモーツァルトのヴァイオリン協奏曲では、滞空時間の長い高密度な余韻のなか、冴え渡った音の独奏ヴァイオリンが浸透する。生き生きとした独奏とそれに応えて柔らかい音で支えるオーケストラ、その両者の有機的な関係が目に浮かぶようだ。ヴァイオリンはフォルテでも高音まで刺激的な音を出さないが、弓の勢いなど、音楽的に重要な情報と、弦楽器群が刻むリズムは細部まで正確に再現する。
マルチチャンネル録音を優れたシステムで再生すると、ステレオ再生とは次元の異なる生々しさが出てくることがあるが、AV8802Aはその領域に到達していると思う。瑞々しさとスピード感に満ちた鮮度の高い音調は、新たに採用した32bit動作のDAC「AK4490」の資質かもしれない。
■ピュアオーディオ領域の純度を聴かせるステレオ再生
その生産現場と同じ建物内に作られた開発試聴室で、AV8802Aの再生音を聴いた。ソースプレーヤーはSA-11S3のアナログ出力とHDMI接続のBDプレーヤーを使用。パワーアンプには、開発試聴室での試聴ということで特別に北米モデルの7chパワーアンプ「MM8077」を2台使用し(ステレオ再生時もL/Rを2台のアンプに振り分けた)、全チャンネルをXLRバランスケーブルでつないだ。
スピーカーはフロントL/RおよびサラウンドL/RにB&W「802 Diamond」、センタースピーカーに「HTM2 Diamond」を使用。ドルビーアトモス用のトップスピーカーはB&Wのイン・シーリング(天井埋め込み)スピーカーで、トップフロントに「CCM818」が、トップリアに「CCM816」を配置。BDの再生時、サブウーファーは使用せず、フロントチャンネルにLFE成分を割り当てている。変則的だが、アンプの基本性能を厳密に確認するには適切な方法だ。合計「5・0・4」というシステムとなる。
まずは2chで筆者が普段聴いているCD音源を聴いた。ベースと女性ヴォーカルのデュオ(ムジカ・ヌーダ)は、声とウッドベースそれぞれの輪郭が少しもにじまず、近い音域で音が重なってもそれぞれの実在感が高く、音像がぶれない。また、ボーカルのクリアな発音に加え、ベースも立ち上がりが非常に速く、ピチカートの一音一音に緩みがないことにも感心した。
ソル・ガベッタが独奏を弾くエルガーのチェロ協奏曲は、オケと独奏がどちらも最弱音まで潤いを失わず、ていねいに弾き込んでいる様子がありありと浮かび上がってきた。曲の冒頭、オーケストラが次第に厚みを増すフレーズでは、特に低音楽器が重なっていく部分の音の動きを鮮明に聴き取ることができ、音量が上がるにつれて空間が大きく広がる様子が生々しい。弱音からフォルテシモに至るレンジの余裕や一音一音の鮮度の高さは、普段自宅のリファレンスシステムで聴いている音にかなり近いと感じた。ピュアオーディオ機器では珍しいことではないが、AVアンプから同じグレードの音を聴けることはほとんどない。セパレート型ならではの純度の高さとセパレーションの良さ、そしてスルーレートの高いアンプ回路を採用した成果は予想以上に大きい。参考のためにAV8801でも同じ音源を聴き比べてみたが、音の勢いや粒立ちには雲泥の差があった。
■SACDマルチのポテンシャルを細部まで引き出す
プレーヤーを変えてSACDのマルチチャンネル音源を聴く。アラベラ・シュタインバッハがPentatoneレーベルからリリースしたモーツァルトのヴァイオリン協奏曲では、滞空時間の長い高密度な余韻のなか、冴え渡った音の独奏ヴァイオリンが浸透する。生き生きとした独奏とそれに応えて柔らかい音で支えるオーケストラ、その両者の有機的な関係が目に浮かぶようだ。ヴァイオリンはフォルテでも高音まで刺激的な音を出さないが、弓の勢いなど、音楽的に重要な情報と、弦楽器群が刻むリズムは細部まで正確に再現する。
マルチチャンネル録音を優れたシステムで再生すると、ステレオ再生とは次元の異なる生々しさが出てくることがあるが、AV8802Aはその領域に到達していると思う。瑞々しさとスピード感に満ちた鮮度の高い音調は、新たに採用した32bit動作のDAC「AK4490」の資質かもしれない。