【特別企画】VGP2015SUMMER「金賞」受賞
パイオニアの超弩級ヘッドホン「SE-MASTER1」を聴く。人気のアンプ4機種と組み合わせ試聴
パイオニア「SE-MASTER1」は、1960年代からヘッドホンを手がけてきた同社が、その技術を結集して作り上げた超弩級の旗艦モデルだ。本機は弊社主催のオーディオ&ビジュアル・アワード「VGP2015SUMMER」でも開放型オーバーヘッド型ヘッドホン部門(20万円以上)金賞を受賞。コンセプト賞にも選出された。同賞の副審査員長である山之内正氏が、本機の実力を改めてレポートしていく。
1960年台から技術を積み上げてきたからこそ実現できた旗艦ヘッドホン
最近は国内ブランドが高級ヘッドホンを手がける例が増えてきたが、パイオニアが投入した「SE-MASTER1」はなかでも特別な存在と言うべきだろう。価格に上限を設けず、国内生産にこだわってクオリティを突き詰める手法は称賛に値する。もちろんVGPの選考過程でも本機への授賞にまったく異論は出なかった。
パイオニアが超弩級ヘッドホンを開発したのは、本機が初めてのことだが、もちろん一朝一夕で完成したわけではない。パイオニアは1960年代初頭から多数のヘッドホンを手がけ、技術を積み重ねてきた。そして、本機の開発期間はなんと6年間に及び、素材や構造の吟味に十分な時間をかけている。
その代表的な例がドライバーユニットだ。セラミックス皮膜で硬度を高めるPCC皮膜処理を振動板に施し、PEEKフィルム複合材を用いたエッジと組み合わせて、広い帯域にわたって俊敏な反応を引き出したことがまずは重要なポイント。85kHzまでカバーする高域特性の余裕は、可聴帯域内の音色改善にも大きく貢献するはずだ。
そして、共振を抑えるバスケット構造、パーツ間で不要振動が伝わるのを防ぐフローティング構造も注目に値する技術だ。いずれもスピーカー開発で培った技術を応用したもので、スピーカーの技術革新を牽引してきたパイオニアならではの工夫が目を引く。
ハウジングやヘッドバンドなど構造部品の組み合わせは、無駄を削ぎ落した機能的デザインの美しさが際立つ。洗練された形状にはもちろん理由があり、たとえばアルミニウム合金製のハウジングは、不要共振の低減に抜群の効果を発揮する。ちなみにアルミにこだわった理由を設計者に聞くと、「樹脂に比べて重くなることは避けられないが、音質面で譲れなかった」という答えが返ってきた。実際に樹脂製ハウジングも試したものの、音質面で満足できなかったようだ。
もう一つ、クルマのエンジンに相当するドライバーユニット、それを支えるバスケット構造など、重要な部品がメッシュを通して外側から見える作りも目を引く。これは、基幹技術をあえて見せるデザイン上の工夫なのだという。実は機能一点張りではないところが面白いし、作り手の自信が垣間見えて興味深い。
ふんだんに金属パーツを使いながら装着感も追求
リケーブルによる音質の変化も楽しめる
けっして軽量とはいえないだけに、装着感へのこだわりも半端ではない。掛け心地と重量バランスを考慮してヘッドバンドとハンガーには超ジュラルミンを採用。さらに、太さが異なる2種類のテンションロッドで側圧を制御する方法を採ったことが新しい。
側圧の強さは思いがけず大きく変化する。ロッドなしも含めると選択肢は3つあるのだが、筆者は細い方のロッドを取り付けるのが好みだ。自然な形状のヘッドバンドと適度な側圧が重量をうまく分散させるためか、数字から想像するほどの重さを感じないし、姿勢をいろいろ変えて聴いても違和感がなく、ずれも起こりにくかった。
室内使用がメインになるので、ケーブルの性能と仕上げにも強いこだわりが感じられるが、MMCXコネクターを採用しているため、ケーブル交換そのものはとてもスムーズだ。オプションで用意される専用の3極バランス接続ケーブル「JCA-XLR30M」はもちろんのこと、市販ケーブルを幅広く組み合わせられるため、好みの音調に追い込む楽しみがある。
1960年台から技術を積み上げてきたからこそ実現できた旗艦ヘッドホン
最近は国内ブランドが高級ヘッドホンを手がける例が増えてきたが、パイオニアが投入した「SE-MASTER1」はなかでも特別な存在と言うべきだろう。価格に上限を設けず、国内生産にこだわってクオリティを突き詰める手法は称賛に値する。もちろんVGPの選考過程でも本機への授賞にまったく異論は出なかった。
パイオニアが超弩級ヘッドホンを開発したのは、本機が初めてのことだが、もちろん一朝一夕で完成したわけではない。パイオニアは1960年代初頭から多数のヘッドホンを手がけ、技術を積み重ねてきた。そして、本機の開発期間はなんと6年間に及び、素材や構造の吟味に十分な時間をかけている。
その代表的な例がドライバーユニットだ。セラミックス皮膜で硬度を高めるPCC皮膜処理を振動板に施し、PEEKフィルム複合材を用いたエッジと組み合わせて、広い帯域にわたって俊敏な反応を引き出したことがまずは重要なポイント。85kHzまでカバーする高域特性の余裕は、可聴帯域内の音色改善にも大きく貢献するはずだ。
そして、共振を抑えるバスケット構造、パーツ間で不要振動が伝わるのを防ぐフローティング構造も注目に値する技術だ。いずれもスピーカー開発で培った技術を応用したもので、スピーカーの技術革新を牽引してきたパイオニアならではの工夫が目を引く。
ハウジングやヘッドバンドなど構造部品の組み合わせは、無駄を削ぎ落した機能的デザインの美しさが際立つ。洗練された形状にはもちろん理由があり、たとえばアルミニウム合金製のハウジングは、不要共振の低減に抜群の効果を発揮する。ちなみにアルミにこだわった理由を設計者に聞くと、「樹脂に比べて重くなることは避けられないが、音質面で譲れなかった」という答えが返ってきた。実際に樹脂製ハウジングも試したものの、音質面で満足できなかったようだ。
もう一つ、クルマのエンジンに相当するドライバーユニット、それを支えるバスケット構造など、重要な部品がメッシュを通して外側から見える作りも目を引く。これは、基幹技術をあえて見せるデザイン上の工夫なのだという。実は機能一点張りではないところが面白いし、作り手の自信が垣間見えて興味深い。
ふんだんに金属パーツを使いながら装着感も追求
リケーブルによる音質の変化も楽しめる
けっして軽量とはいえないだけに、装着感へのこだわりも半端ではない。掛け心地と重量バランスを考慮してヘッドバンドとハンガーには超ジュラルミンを採用。さらに、太さが異なる2種類のテンションロッドで側圧を制御する方法を採ったことが新しい。
側圧の強さは思いがけず大きく変化する。ロッドなしも含めると選択肢は3つあるのだが、筆者は細い方のロッドを取り付けるのが好みだ。自然な形状のヘッドバンドと適度な側圧が重量をうまく分散させるためか、数字から想像するほどの重さを感じないし、姿勢をいろいろ変えて聴いても違和感がなく、ずれも起こりにくかった。
室内使用がメインになるので、ケーブルの性能と仕上げにも強いこだわりが感じられるが、MMCXコネクターを採用しているため、ケーブル交換そのものはとてもスムーズだ。オプションで用意される専用の3極バランス接続ケーブル「JCA-XLR30M」はもちろんのこと、市販ケーブルを幅広く組み合わせられるため、好みの音調に追い込む楽しみがある。