[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第195回】イヤモニ界の秘境「くみたてLab」に潜入取材!独自の“くみたてらしさ”の源を探る
■イヤモニ界に残された秘境!「くみたてLab」を探れ!
日本のカスタムイヤーモニターメーカーの中でも独特のポジションを確立している「くみたてLab」。そもそもメーカー名からしてメーカー感が薄いというか、インディーズ感が濃い。技術的にも音調的にも、モデルごとの個性は強いが、どれも“くみたて”っぽい。どこで開催されるポタ系イベントに行ってもくみたての中の人がいるところもそれっぽい。
総じて言えば失礼ながら「大きな存在感のある」ではなく「妙な存在感のある」メーカーといった印象だ。「誰もがその名を知っているが、その実態はあまり知られていない」という意味ではチュパカブラ的なメーカーと言えるかもしれない。
ということで今回はその「UMA的な存在感」の源を探るべく、我々取材班はくみたてLabのラボに向かった。都心のど真ん中、コンパクトな雑居ビルの一室に向かう階段に、歯科医のような消毒臭が漂っているのは何故だろうか…。
そして我々は遂にその扉を開いた。の、だが……。
■早速ラボ潜入失敗。別空間で「くみたて」の由来に迫る!
くみたてLab代表・伊藤良祐氏(以下、伊藤氏):「改めまして代表の伊藤良祐です。こちらが事務所兼作業場なのですが、見ての通り落ち着いてお話をするようなスペースがありません。なのですぐそこのホテルのラウンジを応接室代わりに使わせてもらってます。移動していただいてよろしいですか?」
いきなりの潜入失敗!そうして我々は伊藤氏に導かれるまま、徒歩3分の豪華ホテルのラウンジに連れて行かれた。
だがその寸前!我々はラボの中を一瞬覗き見ることができた。そこはまさに「ラボ」。部品や工作器具が詰め込まれた、雑然としたラボであった。
そこから一転して高級ホテルのラウンジである。この落差は我々を混乱させ、懐柔するための作戦なのだろうか? だとすれば油断はできない。いずれにせよ、未知の文明との接触では相手を知ることから始めるべきだ。
ーー まずはくみたてLabの成り立ちから話を聞いてみよう。趣味として既製品の改造を行い、それをブログで発表していたという伝承は広く知られているところだが……
伊藤氏:「僕自身は理系でも工学系でも何でもないのですが、ガンプラ作りが好きだったり手先は器用で、趣味としてそういうことをやっていました。インターネットで情報収集や共有ができるようになっていた時期だったことも大きかったですね。ShureのSE530や、UEのTriple.fi 10 PROが出てきたころです」
ーー それが「カスタムイヤモニの自作」に進展したということか?
伊藤氏:「Unique Melodyが既存品のリシェル、ユニバーサルモデルのシェルだけを作り変えてカスタムにするサービスとか、その当時にしては手頃な価格でのカスタムモデルなどを提供してくれていると評判になり始めたんです。それでカスタムというものに興味を持ち始めました」
ーー 興味を持つまでは分かるのだが、それが「自作」という発想になるものだろうか? そして実際に自作できてしまうものだろうか?
伊藤氏:「自作と言っても、まずネットで公開されている回路図を見て部品を買ってきて組み立てる、組み立ての精度を上げるということをしていました。その『組み立てはできるけれど設計はできない』という人のことを界隈では『組立工作員』と呼んでいまして、それを気に入って自身もそう名乗るようになりました。それから組み立てを繰り返していくうちに『ここはもっとこうしたら良くなるんじゃないかな』と考えるようになり、部品や回路の変更、そして設計からの完全自作に進んでいったというわけです」
思わぬところで明らかになった「くみたて」の由来。こうして我々はくみたてLabの歴史、その始まりを知ることになった。
さて伊藤氏は「設計図を見てそのまま模倣する→自分なりの変更を加える→自分で設計する」と段階を踏んで完全自作に至ったというわけだが、これはイヤモニやオーディオに限らず、あらゆる分野に共通する進み方。武術などにおける「守破離」、まずは先人によって定められた型通りに修練を行い、それを正しく理解した上で自分なりの改良を加え、やがて自由な発想に至るというあれだ。伊藤氏が歩んだ道は、自己流ではあるが王道だったと言える。
その後、伊藤氏は2013年春に会社として「くみたてLab」を設立。同年夏に、以降伊藤氏と並んで同社モデルの設計を手掛けていくことになる山崎祥平氏が入社。ポタ研への出展を経て、2014年春のヘッドフォン祭への出展でメーカーとしての認知の高まりを実感したという。そこからの半年で同社ファーストモデルである「KL-アカラ」、そして「KL-サンカ」の注文が50台分ほど入り、二人でひたすら作り続けたそうだ。
なお、現在は社員をもう一人とパートの方が一人、合計4人体制とのこと。我々取材班はくみたてLabの構成員の把握にも成功した。
■KL-Lakh「VESPER」に隠された秘密!
ここからは現行の人気モデル&新モデルについて情報を引き出しつつ、そこに込められた「くみたてらしさ」すなわち「妙な存在感」の源を探っていこう。
日本のカスタムイヤーモニターメーカーの中でも独特のポジションを確立している「くみたてLab」。そもそもメーカー名からしてメーカー感が薄いというか、インディーズ感が濃い。技術的にも音調的にも、モデルごとの個性は強いが、どれも“くみたて”っぽい。どこで開催されるポタ系イベントに行ってもくみたての中の人がいるところもそれっぽい。
総じて言えば失礼ながら「大きな存在感のある」ではなく「妙な存在感のある」メーカーといった印象だ。「誰もがその名を知っているが、その実態はあまり知られていない」という意味ではチュパカブラ的なメーカーと言えるかもしれない。
ということで今回はその「UMA的な存在感」の源を探るべく、我々取材班はくみたてLabのラボに向かった。都心のど真ん中、コンパクトな雑居ビルの一室に向かう階段に、歯科医のような消毒臭が漂っているのは何故だろうか…。
そして我々は遂にその扉を開いた。の、だが……。
■早速ラボ潜入失敗。別空間で「くみたて」の由来に迫る!
くみたてLab代表・伊藤良祐氏(以下、伊藤氏):「改めまして代表の伊藤良祐です。こちらが事務所兼作業場なのですが、見ての通り落ち着いてお話をするようなスペースがありません。なのですぐそこのホテルのラウンジを応接室代わりに使わせてもらってます。移動していただいてよろしいですか?」
いきなりの潜入失敗!そうして我々は伊藤氏に導かれるまま、徒歩3分の豪華ホテルのラウンジに連れて行かれた。
だがその寸前!我々はラボの中を一瞬覗き見ることができた。そこはまさに「ラボ」。部品や工作器具が詰め込まれた、雑然としたラボであった。
そこから一転して高級ホテルのラウンジである。この落差は我々を混乱させ、懐柔するための作戦なのだろうか? だとすれば油断はできない。いずれにせよ、未知の文明との接触では相手を知ることから始めるべきだ。
ーー まずはくみたてLabの成り立ちから話を聞いてみよう。趣味として既製品の改造を行い、それをブログで発表していたという伝承は広く知られているところだが……
伊藤氏:「僕自身は理系でも工学系でも何でもないのですが、ガンプラ作りが好きだったり手先は器用で、趣味としてそういうことをやっていました。インターネットで情報収集や共有ができるようになっていた時期だったことも大きかったですね。ShureのSE530や、UEのTriple.fi 10 PROが出てきたころです」
ーー それが「カスタムイヤモニの自作」に進展したということか?
伊藤氏:「Unique Melodyが既存品のリシェル、ユニバーサルモデルのシェルだけを作り変えてカスタムにするサービスとか、その当時にしては手頃な価格でのカスタムモデルなどを提供してくれていると評判になり始めたんです。それでカスタムというものに興味を持ち始めました」
ーー 興味を持つまでは分かるのだが、それが「自作」という発想になるものだろうか? そして実際に自作できてしまうものだろうか?
伊藤氏:「自作と言っても、まずネットで公開されている回路図を見て部品を買ってきて組み立てる、組み立ての精度を上げるということをしていました。その『組み立てはできるけれど設計はできない』という人のことを界隈では『組立工作員』と呼んでいまして、それを気に入って自身もそう名乗るようになりました。それから組み立てを繰り返していくうちに『ここはもっとこうしたら良くなるんじゃないかな』と考えるようになり、部品や回路の変更、そして設計からの完全自作に進んでいったというわけです」
思わぬところで明らかになった「くみたて」の由来。こうして我々はくみたてLabの歴史、その始まりを知ることになった。
さて伊藤氏は「設計図を見てそのまま模倣する→自分なりの変更を加える→自分で設計する」と段階を踏んで完全自作に至ったというわけだが、これはイヤモニやオーディオに限らず、あらゆる分野に共通する進み方。武術などにおける「守破離」、まずは先人によって定められた型通りに修練を行い、それを正しく理解した上で自分なりの改良を加え、やがて自由な発想に至るというあれだ。伊藤氏が歩んだ道は、自己流ではあるが王道だったと言える。
その後、伊藤氏は2013年春に会社として「くみたてLab」を設立。同年夏に、以降伊藤氏と並んで同社モデルの設計を手掛けていくことになる山崎祥平氏が入社。ポタ研への出展を経て、2014年春のヘッドフォン祭への出展でメーカーとしての認知の高まりを実感したという。そこからの半年で同社ファーストモデルである「KL-アカラ」、そして「KL-サンカ」の注文が50台分ほど入り、二人でひたすら作り続けたそうだ。
なお、現在は社員をもう一人とパートの方が一人、合計4人体制とのこと。我々取材班はくみたてLabの構成員の把握にも成功した。
■KL-Lakh「VESPER」に隠された秘密!
ここからは現行の人気モデル&新モデルについて情報を引き出しつつ、そこに込められた「くみたてらしさ」すなわち「妙な存在感」の源を探っていこう。
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