【特別企画】評論家・逆木一氏がチェック
黒い宝石が、美しさと高音質への欲求を満たす。マランツ「30シリーズ」新色“ブラック”を堪能
SACD 30nはマランツオリジナルのディスクリートDAC「Marantz Musical Mastering」と自社開発の新たなメカエンジン「SACDM-3L」を搭載。また、ネットワーク機能としてD&Mの「HEOS」プラットフォームに対応。SACDプレーヤーとして上位機に匹敵するクオリティを備えつつ、ネットワークプレーヤーとしても2013年発売の「NA-11S1」の事実上の後継といえる内容に仕上がっている。USB入力をはじめとする各種デジタル入力も持ち、こんにちの音楽メディアに幅広い対応力を持つ。
MODEL 30はHypex社製スイッチングアンプモジュール「NCore NC500」を採用し、200W/4Ωという大出力を得ている。また、スイッチングアンプの採用で生じたスペースの余裕を活かしてプリアンプ部を充実させ、セパレートアンプに準じる内容を一体型で実現していることが特徴だ。パワーアンプ入力も搭載しているため、AVアンプと組み合わせて使うこともできる。
■もう「あがり」でいいのではないかと思えるほどハイレベルな音
両機の試聴はB&Wの「706S2」と組み合わせて行った。SACD 30nはもっぱらネットワークプレーヤーとして使用し、MODEL 30の充実したプリアンプ部を活かすべく、固定出力で接続している。
透明感に満ちた空間表現、ストレスなく広がる空間を緻密に音で埋めるだけの豊かな情報量、伸びやかさと艶やかな質感を両立した中高音など、総じてオーディオ的な視点からの満足度は極めて高い。SACD 30n・MODEL 30・706S2の組み合わせはトータルで100万円以内に収まるシステムだが、これだけハイレベルな音が聴けるのならもう「あがり」でいいのではないかと思えるほどだ。
ただ、従来のマランツ製品に比べると、オーディオ的な性能の高さを強く意識させるよりも、音楽を情緒豊かに聴かせるという性格が強まっていると感じる。これはあくまでもオーディオ機器としての高い素養を備えたうえでの変化なので、音楽を愛する身としては純粋に喜ばしい。
ちなみに筆者は以前マランツの試聴室でSACD 30nとMODEL 30の組み合わせを聴いており、自宅で聴いた際の印象もその時と同様なのだが、今回あらためて気づいたことがある。それはズバリ、低音の強烈な実体感。明晰な輪郭と重厚感を兼ね備えたしたリアルな低音が繰り出され、「706S2からこんな低音が聴けるのか」と素直に驚いてしまった。これはMODEL 30の優れた駆動力の為せる業だろう。
MODEL 30の駆動力を目の当たりにしたことで両機のさらなる実力を探るべく、筆者のメインスピーカーであるDYNAUDIO「Sapphire」とも組み合わせてみた。MODEL 30の駆動力の高さはここでも感じられ、ともすれば「重い」「鈍い」という印象になりがちなDYNAUDIOのスピーカーからも、抜けの良い、爽快感のある再生音を聴くことができた。
SACD 30nとMODEL 30の価格はともに297,000円(税込)とミドルクラスで、オーディオファンからすれば「手が届きやすい」価格帯にある。それでいて、上位クラスのスピーカーであってもしっかりと魅力を引き出すことができる、プレーヤー/アンプとしての高い能力を確認できたことは僥倖だ。
SACD 30nとMODEL 30は機能の面でも、音質の面でも、デザインの面でも、「今までのマランツ」が培ってきたものを継承したうえで「これからのマランツ」を示している。まさにマランツ・ブランドの新たなテーマとなる「Modern Musical Luxury」の名に相応しい、音楽を聴く喜びと所有する喜びの両方を与えてくれるHi-Fiコンポーネントである。
(協力:ディーアンドエムホールディングス)