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【特別企画】オーディオ銘機賞2022 ベストセラー賞受賞

伝統と最新技術を融合させたデノン「PMA-A110」。記念モデルに具現化されるサウンド思想の真髄は?

公開日 2022/02/04 06:30 角田郁雄
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■サウンド・マスターの開発思想を色濃く反映

ここまで、主なデザインや搭載技術に触れたが、ここであらためて思い出すことは、サウンドマスター山内慎一氏の開発思想だ。それは、全てのモデルに共通する「Vivid & Spacious」、すなわち「生々しい空間描写」という強いポリシーだ。

繊細で柔らかくあるべき音。そして、硬く重厚であるべき音。これらを超弱音から最強音までダイナミックレンジ広く拡張させ、スピーカー制動力を高め、躍動する音楽を再現している。しかもNEW ERAモデル登場以来、音質劣化となる要素を信号伝送から排除し、透明度と色彩鮮やかなアナログ音の両立を果たした。だからこそ、細部にもこだわっている。

例えば、音の鮮度を極めるトーンコントロール回路に接続しない「ソース・ダイレクト」モードも、その一つと言える。さらに理想的な音質を実現するために、スペシャルなコンデンサーを採用するなど、最適なパーツをいくつも吟味してきた。

デジタルオーディオ回路がオフになり繊細なアナログ入力信号への干渉を防ぐ設定や、ディスプレイ表示も消灯し純粋なアナログアンプとして動作できる、2つのアナログモードを搭載するアナログアンプとして動作する

とどめは電源部だ。2式の独自EI型トランスは、ノイズの原因となる漏洩磁束をキャンセルさせて配置。出力段の放熱器は、よく見る製品写真とは違い、フィンが内向き。トランスと出力段基板との距離をとっている。特製の大容量フィルター・コンデンサーとダイオードユニットを最短にし、極太のOFC線材までも使用。電源インピーダンスを下げ、安定した強力な電源構成を実現した。

漏洩磁束の影響を打ち消すLCマウント方式を採用。整流回路には低損失かつ低ノイズなショットキーバリアダイオード、ブロックコンデンサーには専用の大容量カスタムコンデンサーを搭載する

■デジタルの音質も追求しアナログの質感に迫る

USBレシーバーや光、同軸入力装備のDACを搭載することも特徴で、アナログとデジタル再生の楽しみを両立させている。そのデジタル技術も実に魅力的だ。USB再生では、11.2MHz/DSDやDXDに対応し、光や同軸デジタル入力も装備。

リア部には、入力端子にRCAと光デジタルをそれぞれ3系統、フォノ、USB-B、同軸デジタル、EXT. PREをそれぞれ1系統装備。そのほかIRコントロール入出力を搭載する。スピーカー端子や、CD/フォノ端子には経年劣化を防ぐ金メッキ処理が施されている

テレビの音声を自動検出し、連動して電源が入る方式も採用した。この基板ではPCなどからの高周波ノイズを遮断するアイソレーターも使用して音質対策は万全。

フォノイコライザーやライン入力を使用する場合、「アナログモード」でDAC回路を切り離すことも可能。贅沢なことは、バーブラウンの32bit型ステレオDAC、PCM1795を左右に各2基使用し、QUAD-DAC構成としたことだ。このDACは、ΔΣ1bit DACのアナログ的な繊細さや柔らかさと、マルチビット型の力強さを併せもつことが特徴。これを並列駆動することにより、リニアリティ(変換直線性)とダイナミックレンジを向上させている。

11.2MHz DSD、384kHz/32bit PCMに対応するUSB-DAC機能を搭載。DSDの伝送方式はASIOドライバーによるネイティブ再生とDoP (DSD over PCM Frames)に対応する

また高精度クロック回路も直近配置しジッターを低減させ、瑞々しくレンジの広い音を実現。しかも、世界に誇れる「Ultra AL32 Processing」により、PCM信号は1.536MHz/32bitに拡張され、波形補完アルゴリズムにより、レートの低いデータであっても本来のアナログに迫る波形を再生成してくれる。アナログテープの質感に迫る音質を追求している。これは一度体験すると、手放せない音となるはずだ。

こうした優れた技術を搭載するPMA-A110の音質特徴は、冒頭や解説のとおりだ。「Vivid & Spacious」の思想を主力モデルのPMA-A110にも大きく反映し、心に響く音楽が堪能できる。ベストセラー賞に輝くことは、当然のことと言える。洗練されたデザインや搭載技術、そして音質。その全てが、見事に高品位でバランスしている。


Specification
●定格出力:80W×2(8Ω、20Hz〜20kHz、THD 0.07%)、160W×2(4Ω、1kHz、THD 0.7%)●全高調波歪率(定格出力-3dB、8Ω、1kHz):0.01%●出力端子:4〜16Ω(スピーカー)●パワーアンプ部の入力感度/入力インピーダンス:0.9V/47kΩ(EXT. PRE)、29dB(ゲイン値)●プリアンプ部の入力感度:2.5mV/47kΩ(PHONO/MM)、200μV/100Ω(PHONO/MC)、135mV/19kΩ(CD、NETWORK/AUX、RECORDER)●RIAA偏差(20Hz〜20kHz):±0.5dB(PHONO)●最大入力(1kHz):130mV(PHONO/MM)、10mV(PHONO/MC)●入力端子:RCA×3、PHONO×1、EXT. PRE×1、USB-B×1、同軸デジタル×1、光デジタル×1●出力端子:RCA(RECORDER)×1、ヘッドホン×1●その他:IRコントロール入出力×1●SN比:84dB/入力端子短絡、入力信号5mV(PHONO/MM)、72dB/入力端子短絡、入力信号0.5mV(PHONO/MC)、107dB(CD、NETWORK/AUX、RECORDER)●周波数特性(0〜-3dB):5Hz〜100kHz●トーンコントロール:100Hz±8dB(BASS)、10kHz±8dB(TREBLE)●消費電力:400W●待機電力:0.2W●サイズ:434W×182H×450Dmm●質量:25.0kg●取り扱い:(株)ディーアンドエムホールディングス


本記事は『季刊・Audio Accessory vol.183』からの転載です

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