PR通常モデルのR200と比較
50年変わらぬ“手頃なスピーカー”への姿勢。Polk Audioの限定モデル「R200AE」を聴いた
“手頃なスピーカー”を50年作ってきたPolk Audio
アメリカのPolk Audio(ポークオーディオ)が創業50周年の節目を迎えた。このところオーディオメーカーのアニバーサリーが相次いでいて、日本ではアキュフェーズ、海外ブランドではマークレビンソンが50年を祝して記念モデルを発売した。50年といえば半世紀、中堅を通り越してもはや老舗ブランドの域に入ろうとしている。
Polk Audioは同じ50周年でも、良い意味でそこまで「老舗」らしく見えないのはいくつか理由がある。それは学生でも買える手頃なスピーカー作りを目指した、若い創業者たちのポリシーがいまも生きていること。高い技術力を普及モデルに積極的に投入しており、高額モデルを中心に据えたブランドとは一線を画しているのだ。日本市場ではまだそれほど知名度が高くないことも、良い意味で若いブランドに見える理由の一つかもしれない。
ところが、2021年に日本市場への再参入を果たしたあとは短期間で一気に浸透し、Polk Audioはいまや国内スピーカー市場でシェア第3位(2022年8月度GFK調査)にまで急成長を遂げているという。アメリカではトップシェアを競うブランドだから当然の結果とはいえ、短期間でそこまでの人気を獲得したのは驚くべきことだ。
人気の秘密は、性能と価格のバランスが良いことに尽きる。同社のラインナップの多くは入門クラスの価格に収まるが、そのなかでドライバーユニットやキャビネット構造のバリエーションを複数揃えることで選択肢を広げ、それぞれのユーザーの用途に最適な製品を選べるように工夫を凝らしている。他社のラインナップではエントリーの上はミドル、ハイエンドと、クラス間の価格差が開いてしまうことが多く、選択肢は意外に狭かったりするのだ。
高い完成度のR200をさらに高みへ
前置きが長くなったが、そろそろ今回の主役である「R200」と「R200AE」の話を進めよう。R200AEはR200をベースにリファインを施した50周年記念モデルで、世界で1000ペア、そのうち日本で150ペアという限定生産のスピーカーだ。
R200は同社Reserveシリーズの中心に位置するブックシェルフ型スピーカーで、ラインナップのなかでは下から2番目の位置付け。1インチのピナクル・リングラジエーターと6.5インチのタービン・コーンウーファーを組み合わせた2ウェイ構成を採用する。
さらにトゥイーターのウェーブガイドや特殊形状のウーファー振動板のほか、背面のバスレフポートに円筒形の固有音フィルター「Xポート」を投入するなど、独自技術を活かした音質改善策が目を引く。ペアで税込10万3400円と手頃な価格のスピーカーにここまで独自技術を盛り込むのは、他社にはなかなか真似のできないことだと思う。
ベースモデルの完成度が高いので、限定モデルのR200AEがどこまでアップグレードできるのか、興味がわく。具体的な変更点だが、まずは仕上げの違いが大きい。ビニールクロス貼りのR200に対して、R200AEは天然木の突板仕上げに格上げされ、深みのあるダークチェリーが美しい。どの角度から見ても継ぎ目が目立たないように仕上げているので外観の高級感が際立ち、インテリアとも調和しやすく、艶や質感が違うので音にも差が出る可能性がある。
もうひとつ、ネットワーク回路にも手が入っている。音を左右するパーツのグレードを上げて音質改善を図っているのだ。たとえばコイルを鉄芯タイプから空芯タイプに変更することによって、歪み成分を大幅に抑えていることが目を引く。セメント抵抗の容量に余裕をもたせることで瞬発力を確保していることも要注目で、これらパーツの強化によってスピーカー本体の重さも1kgほど増えている。また背面には、シリアル番号入りのプレートが記念モデルのために施されている。