【特別企画】現場の空気感の再現性も高い
曖昧さのないくっきりした音。ラックスマンの新スタンダードプリメイン「L-505Z」の魅力
LUXMAN(ラックスマン)より発売となったプリメインアンプのスタンダード機「L-505Z」。最新の増幅帰還エンジン「LIFES」とボリューム回路「LECUA」を搭載するAB級アンプであり、同社の最新技術をワンボディにまとめ上げ価格も抑えた期待のニューモデルである。そのサウンドを鈴木 裕氏が解説する。
ラックスマンのプリメインアンプは、2021年に発売となった「L-507Z」から新しい世代に入っている。高い駆動力と音の透明感を両立し、音楽ソフトに入っている情報をストレートに楽しませてくれるハイファイ性能の高いものだ。
これを象徴する新しい回路の名前が、LIFES(Luxman Integrated Feedback Engine System)である。ラックスマンはこれまでODNFという増幅回路を使用していたが、長年にわたる改良で大規模化してしまった。そのため、回路構成をゼロベースで再構築し生まれたものがこのLIFESである。
筆者はL-507Zを高く評価しているが、その設計思想を継承し、40万円を切る価格設定の「L-505Z」が発表された時には、その実力に強く興味を持った。そこで今回のテストには、普段より多めのCDとレコードを持参して試聴室に臨んだ。
スピーカーはBowers&Wilkinsの「803 D4」だ。公称インピーダンスは8Ω(最小3Ω)。感度は90dB(軸上1m/2.83Vrms)という表示で、スペック上はそんなに鳴らしにくいスピーカーではない。だが、プレーヤーやアンプの音色感をクリティカルに聴かせる厳格なモニターであることに違いはない。
まずはCDから聴き始めた。プレーヤーはラックスマン「D-03X」。エリック・クラプトン『アンプラグド』の「ロンリーストレンジャー」では、拍手の高域に強調感がなく、オーディエンスの見え方はすっきりしていてにじみも感じさせない。アコースティック・ギターの中域にはほのかな温かみを持っている。クラプトンが足でリズムを取る最低域の成分もしっかり聴こえて来るし、その止まりもいい。クラプトンの声のしわがれた感じと女声コーラスのなめらかなニュアンスが両立しているのもいい。
次にラフマニノフ作曲の「パガニーニ狂詩曲」(ヤニック・ネゼ=セガン指揮、フィラデルフィア管弦楽団)を聴いていくが、編成の大きなオーケストラの音の旨みを上手に再現してくる。また、ピアノの低域のゴリっとした特有の音色感もいいし、大太鼓の重みもきちんと出てくる。
ここまででも、L-505Zの音の透明感、細部の描写力の高さは確認できているが、さらにオーケストラと歌。オーケストラとソロヴァイオリンの組み合わせを試すべく、アバド指揮、ベルリン・フィルによる『ベルリン・ガラ・ジルヴェスターコンサート1997』より、ビゼー作曲のオペラ『カルメン』の「ハバネラ」、ソプラノはアンナ・ソフィー・フォン・オッターを聴いてみる。
オッターのカルメンは色気ムンムンではないが、声のかすれ具合やほどほどの官能性を脚色なく聴かせてくれる。そして、ギル・シャハムがソロヴァイオリンを弾く『カルメン幻想曲』は、トゥイーターにもアンプの高域特性にも厳しいテストソースだが、破綻なく聴かせてくれた。
全体的な聴かせ方のスタイルを文字にたとえれば、筆圧強めの楷書体で、曖昧さとか、ごまかしのない音だ。くっきりしていて、強い。この要素については、音質を吟味した最新部品によるプリ部のディスクリートバッファー回路の出来の良さを感じる。
音量調節は高純度電子制御アッテネーター「LECUA」(レキュア)だが、その操作感はなめらかで、音量自体も決まりやすい。パワーアンプ部は3段ダーリントン・パラレルプッシュプル構成によって、150W×2(4Ω)の定格出力を保証している。
次はアナログレコードを聴いた。内蔵のフォノイコライザーにも力が入っているという情報なので、確認しなければならない。以前のモデルでは、初段入力のFETがシングル構成だったのに対し、L-505Zでは、2パラ構成に変更している。プレーヤーは「PD-171A」。カートリッジはフェーズメーションのMCカートリッジ「PP-2000」を使用した。出力は0.3mV。ゲインの切り替え等はないが、音量はすぐに決まる。
レコードも、エリック・クラプトン「ロンリーストレンジャー」から聴き出した。オーディエンスが塊にならず、見通しのいい空間。SN感良く、情報量の多い再生だ。このあたり、プレーヤーとアンプの目指している方向性が共通しているようにも感じた。
次にパガニーニ作曲の『ヴァイオリンコンチェルト第1番』。アルテュール・グリュミオーがソロヴァイオリン。ピエロ・ベルージ指揮、モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団の演奏によるものだ。ソロヴァイオリンが出てくるまでのイントロダクションは、イタリアのオペラの序曲のような華やかさがある。まずこのムードが出てこないと曲を楽しめないが、ここは当然のようにクリア。しかも、オーケストラのファーストやセカンドヴァイオリンのボーイングが見えるような情報量もある。
この感じは、ビル・エヴァンス・トリオの『ワルツ・フォー・デビィ』での、主役のピアノ、ドラムス、ウッドベースと、ライブハウス内の食器の触れ合う音や、オーディエンスのガヤにも当てはまる。現場の空気感の再現性が高い一方、主役の楽器たちの実在感もしっかりしている。
テストが終わって率直に思うのは、優れたコストパフォーマンスと豊富な機能、そして一体感のある音質という、プリメインアンプの優位性だ。それらをひとつの筐体にまとめ上げる力がラックスマンにはある。
ラックスマンの技術陣は乗っている。来年100周年を迎えるが、どんな新製品が登場してくるのか、強く楽しみになった今回のテストだった。
(提供:ラックスマン)
上位モデルの設計思想を踏襲するスタンダード機
ラックスマンのプリメインアンプは、2021年に発売となった「L-507Z」から新しい世代に入っている。高い駆動力と音の透明感を両立し、音楽ソフトに入っている情報をストレートに楽しませてくれるハイファイ性能の高いものだ。
これを象徴する新しい回路の名前が、LIFES(Luxman Integrated Feedback Engine System)である。ラックスマンはこれまでODNFという増幅回路を使用していたが、長年にわたる改良で大規模化してしまった。そのため、回路構成をゼロベースで再構築し生まれたものがこのLIFESである。
筆者はL-507Zを高く評価しているが、その設計思想を継承し、40万円を切る価格設定の「L-505Z」が発表された時には、その実力に強く興味を持った。そこで今回のテストには、普段より多めのCDとレコードを持参して試聴室に臨んだ。
スピーカーはBowers&Wilkinsの「803 D4」だ。公称インピーダンスは8Ω(最小3Ω)。感度は90dB(軸上1m/2.83Vrms)という表示で、スペック上はそんなに鳴らしにくいスピーカーではない。だが、プレーヤーやアンプの音色感をクリティカルに聴かせる厳格なモニターであることに違いはない。
楷書体のようなくっきりした音で、透明感と細部の描写力の高さを確認
まずはCDから聴き始めた。プレーヤーはラックスマン「D-03X」。エリック・クラプトン『アンプラグド』の「ロンリーストレンジャー」では、拍手の高域に強調感がなく、オーディエンスの見え方はすっきりしていてにじみも感じさせない。アコースティック・ギターの中域にはほのかな温かみを持っている。クラプトンが足でリズムを取る最低域の成分もしっかり聴こえて来るし、その止まりもいい。クラプトンの声のしわがれた感じと女声コーラスのなめらかなニュアンスが両立しているのもいい。
次にラフマニノフ作曲の「パガニーニ狂詩曲」(ヤニック・ネゼ=セガン指揮、フィラデルフィア管弦楽団)を聴いていくが、編成の大きなオーケストラの音の旨みを上手に再現してくる。また、ピアノの低域のゴリっとした特有の音色感もいいし、大太鼓の重みもきちんと出てくる。
ここまででも、L-505Zの音の透明感、細部の描写力の高さは確認できているが、さらにオーケストラと歌。オーケストラとソロヴァイオリンの組み合わせを試すべく、アバド指揮、ベルリン・フィルによる『ベルリン・ガラ・ジルヴェスターコンサート1997』より、ビゼー作曲のオペラ『カルメン』の「ハバネラ」、ソプラノはアンナ・ソフィー・フォン・オッターを聴いてみる。
オッターのカルメンは色気ムンムンではないが、声のかすれ具合やほどほどの官能性を脚色なく聴かせてくれる。そして、ギル・シャハムがソロヴァイオリンを弾く『カルメン幻想曲』は、トゥイーターにもアンプの高域特性にも厳しいテストソースだが、破綻なく聴かせてくれた。
全体的な聴かせ方のスタイルを文字にたとえれば、筆圧強めの楷書体で、曖昧さとか、ごまかしのない音だ。くっきりしていて、強い。この要素については、音質を吟味した最新部品によるプリ部のディスクリートバッファー回路の出来の良さを感じる。
音量調節は高純度電子制御アッテネーター「LECUA」(レキュア)だが、その操作感はなめらかで、音量自体も決まりやすい。パワーアンプ部は3段ダーリントン・パラレルプッシュプル構成によって、150W×2(4Ω)の定格出力を保証している。
現場の空気感の再現性も高く、主役の楽器たちの実在感も良好
次はアナログレコードを聴いた。内蔵のフォノイコライザーにも力が入っているという情報なので、確認しなければならない。以前のモデルでは、初段入力のFETがシングル構成だったのに対し、L-505Zでは、2パラ構成に変更している。プレーヤーは「PD-171A」。カートリッジはフェーズメーションのMCカートリッジ「PP-2000」を使用した。出力は0.3mV。ゲインの切り替え等はないが、音量はすぐに決まる。
レコードも、エリック・クラプトン「ロンリーストレンジャー」から聴き出した。オーディエンスが塊にならず、見通しのいい空間。SN感良く、情報量の多い再生だ。このあたり、プレーヤーとアンプの目指している方向性が共通しているようにも感じた。
次にパガニーニ作曲の『ヴァイオリンコンチェルト第1番』。アルテュール・グリュミオーがソロヴァイオリン。ピエロ・ベルージ指揮、モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団の演奏によるものだ。ソロヴァイオリンが出てくるまでのイントロダクションは、イタリアのオペラの序曲のような華やかさがある。まずこのムードが出てこないと曲を楽しめないが、ここは当然のようにクリア。しかも、オーケストラのファーストやセカンドヴァイオリンのボーイングが見えるような情報量もある。
この感じは、ビル・エヴァンス・トリオの『ワルツ・フォー・デビィ』での、主役のピアノ、ドラムス、ウッドベースと、ライブハウス内の食器の触れ合う音や、オーディエンスのガヤにも当てはまる。現場の空気感の再現性が高い一方、主役の楽器たちの実在感もしっかりしている。
テストが終わって率直に思うのは、優れたコストパフォーマンスと豊富な機能、そして一体感のある音質という、プリメインアンプの優位性だ。それらをひとつの筐体にまとめ上げる力がラックスマンにはある。
ラックスマンの技術陣は乗っている。来年100周年を迎えるが、どんな新製品が登場してくるのか、強く楽しみになった今回のテストだった。
(提供:ラックスマン)