進化した“最強パフォーマンス”をチェック
第5世代「iPad Pro」深掘りレビュー。ミニLEDの搭載は成功か?
例えばiPhone 12 Pro Maxで撮影した動画を新旧iPad ProにAirDropで転送して見比べてみると、明るい箇所はまぶしいほどピークが立ち、空に浮かぶ雲の明るい部分の階調を破綻なく立体的に描き込む。空色の鮮やかさ、明部から暗部に渡る雲の色の淡い階調再現も新世代のiPad Proの方が圧倒的にリアルな映像を楽しませてくれた。
■鮮やかな色彩。引き締まった黒色
さらに、新しいiPad ProのLiquid Retina XDRディスプレイは画面の黒浮きも見事に抑え込む。先ほどの黒背景の映像を新旧世代のiPad Proで見比べてみると明らかだった。直下型ローカルディミングの精度の底力が伝わる。初めてミニLEDを搭載したiPadとしてはとても高いレベルに到達している。アップルの選択は成功だと筆者は思う。
ドルビービジョン対応の映画『アリー/スター誕生』は映像に圧倒的な迫力の差が出る。冒頭のシーンから新しいiPad Proが深みのある明暗と色彩を描き分けた。ギターの緑色が明るく煌びやかだ。スポットライトに照らされる人物の肌の色が艶めかしい。それでも全体のバランスをギラつかせずに自然なバランスに整えている。人物の黒いスーツの細やかな質感を引き立たせる暗部階調の再現力にも引きつけられた。
■内蔵スピーカーによるサウンドも一皮むけている
そしてiPad Proの特徴である4スピーカーオーディオによるサウンドも一皮むけた印象がある。iPad Proが内蔵するサウンドシステムについて、アップルは新機種で変わった点を特に触れていないのだが、左右のチャンネルセパレーション、立体的な音像の描写力が向上している。
ドルビーアトモス音声を収録する映画『ゼロ・グラビティ』をApple TVアプリで再生してみた。iPad Proの内蔵スピーカーによって楽しめるアップル独自の「空間オーディオ」の体験にも新旧モデルの間に大きな差が出た。
作品冒頭12分前後、シャトルのクルーが宇宙デブリに衝突するアクションシーンでは、新しいiPad Proの方が効果音の明瞭度が高く、サラウンド効果の移動感がよくわかる。ダイアローグも肉付きがよく定位が安定している。まさしく画面サイズの限界を感じさせないスケールの大きなシアター体験が新しいiPad Proで存分に味わえた。
エンターテインメントプレーヤーとしてのiPad Proがまた一歩、とても大事な飛躍を遂げていた。
■新色ホワイトのMagic Keyboardも登場
新設計のミニLEDバックライトシステムを搭載したことで、新しいiPad Proは第4世代のモデルと比べて本体が0.5ミリ厚くなり、質量は41グラムほど増えた。だが、手に取ってもその差がすぐにわかるほどではない。なお11インチのiPad Proは本体の厚さは5.9ミリのままだが、新しいモデルの方が質量が5グラムほど軽くなっている。
昨年から新しいiPad専用アクセサリーとして加わったMagic Keyboardは、第5世代の12.9インチiPad Pro専用モデルが発売された。新色のホワイトも追加している。
iPad Proを買い換えたら、Magic Keyboardも合わせて買い直さなければいけないのか、第4世代機のユーザーは気になるところかもしれない。第4世代機用のMagic Keyboardを新世代のiPad Proに装着しても問題なくカバーは閉じるし、半開きの状態にはならない。
ただ、これはiPad Proにディスプレイの保護や書き味の調整を目的としたフィルムアクセサリーを装着していないからだ。厚手のフィルムを付けてしまうと何らかの影響が出ることも考えられることを付け加えておきたい。なお、第5世代の12.9インチiPad Pro用Magic Keyboardは、多少のゆとりをもって前世代の機種に装着できた。
新色ホワイトのMagic Keyboardも表面の仕上げはブラックのキーボードと同じ、滑り止めを効かせたマットな質感としている。汚れの目立ちにくさで選ぶならブラックを選ぶべきだと思うが、清潔な印象のホワイトも新鮮味があり、物欲を刺激する。暗い場所で自動点灯するバックライトキーがホワイトになっても見づらく感じることはなかった。