【特別企画】「まさにプライスレスな次世代プリメインアンプ」
「テレビ接続できるプリメイン」同門対決!マランツ「MODEL 40n」を「NR1200」ユーザーの評論家が自宅でテスト!
事の始まりはNR1200登場のさらに1年前に遡る。当時からHDMI入力を持つプリメインアンプを探していた私は、雑誌の取材で海外製HDMI入力付きプリメインアンプ3機種を試聴する機会に恵まれた。
その結果、各入力端子のあいだには同軸入力>HDMI入力>>>HDMI ARCという明確な音質差が存在することが判明した。HDMI ARCでは明らかに鮮度感が落ちるのだ。
原因としてはHDMIケーブルが2本必要になり長尺となること、ディスプレイがノイズ発生源になることなどが考えられるが、どちらにしても、このような冴えない音ではテレビ番組やネットコンテンツの視聴なら我慢はできても、ロスレス品質のパッケージメディア再生用としては許容範囲外という厳しいジャッジをせざるを得なかった。
しかし、この問題はマランツも先刻承知だったようだ。なんとMODEL 40nでは、入力されたリニアPCM(SPDIF)信号をHDMIインターフェースをすっ飛ばしてデジタルオーディオセレクターに直結してしまったのだ!
さらには回路電源の強化、低ノイズ化、接続経路やグラウンドの見直しも実施し、実際に各社のテレビを集めて、HDMI ARCの音質を徹底チューニングしたというではないか。
実際、その効果には目覚ましいものがある。先日発売されたボブ・ジェームス・トリオの『Feel Like Making Live!』UHDブルーレイに収録された96kHz/24bit/PCM 2chを再生してみると、流石にプレーヤーの同軸出力からMODEL 40nの同軸入力に直結した音質には敵わないものの、これまでのHDMI ARC の“常識”を覆す堂々たるパフォーマンスに心底驚かされた。
試しにテレビ本体のTOSリンクとも接続してみたが、こちらもHDMI ARCの圧勝。私のなかの1つめの“常識”はただの“偏見”になってしまったようだ。
■HDMI ARCが48kHz/16bitに制限される問題
では2つめの“常識”は何かというと、HDMI ARCの伝送が48kHz/16bitに制限されるという問題だ。
その証拠に先ほどの『Feel Like Making Live!』で96kHz/24bit/PCM 2ch音声を再生しても、MODEL 40nのディスプレイには48kHzと表示される(表示はされないがbit数も16bitになっている)。MODEL 40nのHDMI ARC は192kHz/24bit対応のはずなのに、これは一体どういうことなのか。
そこで今回の執筆にあたり、マランツやテレビメーカーの技術者に詳しい原因を探ってもらった結果、HDMI ARCは規格上のマンダトリー(必須条件)が48kHz/16bit(それより上のスペックはオプション扱い)であり、テレビ側の回路設計やSoCの制限(または、HDMI ARCはTOSリンクや同軸出力の代替手段であるという認識)から、ほとんどのメーカーのテレビでHDMI ARCが48kHz/16bit止まりとなっていることがわかった。
残念な状況ではあるが、これまでのHDMI ARCの音質を考えれば、そういう扱いになってしまうのも無理はないかなと思う。しかし、MODEL 40nの登場で完全に潮目は変わった。テレビメーカーの技術者もこの音を体験すれば驚くだろうし、自社のテレビから192kHz/24bit が出せないことをモッタイナイと感じるはずだ。“常識”を変えるなら今しかない。業界全体で足並みを揃えて対応テレビを増やしていきましょう!なお、読者のなかに、「私、48kHz/24bit以上で出せるテレビを知ってるよ」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ筆者のTwitterまで情報をお寄せください。
■分厚いシネマサウンドとカッコ良すぎるデザイン
さて、ここからは気になっている人も多いであろう、MODEL 40nとNR1200の実力差についても触れておきたい。そもそも286,000円と88,000円のアナログアンプを較べるというのも酷な話だが、正直、両者のあいだには価格以上の差があると言わざるを得ない。それは大相撲中継を観ているだけでも明らかだ。NHKアナウンサーの声のひとつとってもまるで別物で、胴鳴りまで感じられるのはMODEL 40nだけ。さらには力士のぶつかり合う音もNR1200がバチーンという破裂音ならば、MODEL 40nはドゴーン!という衝撃音である。