SB550 + DENON HOME 150のサラウンドセットが凄い
キリンジからインド映画までイケる懐の広さ。デノンサウンドバー「SB550」を編集部員が購入した理由とは?
■オーディオ的思想が活きた上品なサウンド。かつインド映画もバッチリの大迫力!
今回、サラウンド用のDENON HOME 150 2台をお借りしたので、改めてSB550の実力をチェックしてみようと思うが、その前にサウンドモードにも触れておこう。SB550は「Movie」「Music」「Pure」という3つのサウンドモードを搭載しており、HEOSアプリや専用リモコンから切り替えることができる。
「Movie」「Music」はDSPでワイドな音場感を実現しつつ、それぞれ映像/音楽に適したサウンドにするモード。そして特徴的なのが「Pure」モード。これはサウンド調整機能を全てオフにして原音をストレートに再現するというもので、かつてDHT-S216で搭載し、「音で選ぶならデノン」という立ち位置を盤石にした機能だ。
そのほかにも低音調整機能や声を聞き取りやすくする「ダイアログエンハンサー」など様々な機能を搭載しているが、ここではサウンドモードに焦点を絞り、各モードの使い分けと一緒に紹介していきたい。
まずは本体性能をチェックするため、HEOSからSpotifyに接続し、Pureモードで音楽再生を行なった。キリンジ「エイリアンズ」を再生してみると、ボーカルはもちろん、クラシックギターの爪弾く感覚や、スローテンポで気怠げなドラムなど、楽器の音が非常に生々しい。Hi-Fiオーディオからイヤホン、サウンドバーまで一貫した「Vivid & Spacious」という山内氏のサウンドフィロソフィーが息づいていることを改めて認識した。
続いて竹内まりやの「純愛ラプソディ」を再生。以前、山下達郎が「自身が手がけた中で1番気に入っているアレンジ」と語っていた楽曲だが、全体に散りばめられたサウンドの数々や、時折入る細かいフレーズまでしっかりと描き分けてくれる。
とはいえPureモードも万能ではない。一つひとつの音の描写が丁寧な代わりに音場が比較的狭めなため、例えばYOASOBI「アイドル」のように現代的な、音数が多く音圧強めな楽曲だと、その音場の中に収まりきらず窮屈そうな印象を受けてしまう。
そこでMusicモードに切り替えてみると、音場が一気に広がり、窮屈さが解消されると共に迫力あるサウンドに変身。代わりに音のディテールは甘くなったものの、YOASOBIのような現代的なサウンドの曲であれば、むしろ角が取れて聴きやすくなったようにも感じられた。上述したキリンジや竹内まりや、ジャズ、クラシックなどPureモードが映える音楽でも、家事や仕事中のBGMとして流したいときはMusicモードがおすすめだ。
次は映像コンテンツを試してみよう。大画面と高音質で楽しみたい作品ということで、Amazon Prime Videoで配信中の『RRR』からナートゥシーンを再生。Pureモードではセリフや歌がくっきり聴こえる一方、やはり迫力には欠ける。
Movieモードにしてみると、一気に音場が広がると共に低域がパワフルに。リズミカルで力強く響く足音、部屋中に広がる音楽、そしてキレのあるダンスが渾然一体となり、一瞬でインド映画の世界に引き込まれてしまった。映画などを観るときは基本的にMovieモードに固定するのが良さそうだ。
そのままNetflixから『トップガン・マーヴェリック』(Dolby Atmos音声)を再生すると、ジェット機の唸るようなエンジン音が鳴り響く。派手ではあるが、決して耳障りにはならず、セリフやBGMを覆い隠してしまうこともないバランス感はさすがデノンといったところ。
左右の移動感や高さ表現も巧みで、正直これ1台でも十分に楽しめてしまうのだが、やはり真価を発揮するのは4.0.2chのワイヤレスサラウンドシステムを構築したとき。
DENON HOME 150を2台連携したサラウンドシステムで同じく『トップガン・マーヴェリック』を視聴。まず、エンジン音が後方を含む部屋全体を包み込み、背中までビリビリと震わせてくれることで没入感が大きく違ってくる。
ジェット機などの移動感には前後の動きも加わり、より自由で勢いのある動きが楽しめる。高さ表現が前方だけなのが惜しいところだが、わずか3台の機器だけでこれだけの音場を作れるのだから驚きだ。
『バーフバリ 王の帰還』では、しっかりした低音とワイドな空間表現がインド映画特有のド派手な演出を一層引き立ててくれる。それでいて剣がぶつかり合う金属音や砂を蹴る音など、一つひとつの効果音までも丁寧、かつリアルに描写する。
基本的に映像コンテンツには派手なサウンドキャラクターがマッチするものの、静かなシーンやシリアスな場面でも音がテンション高めだと涙が引っ込んでしまったりする。その点、SB550は「派手でかっこいいサウンド」と「繊細で上品なサウンド」を高いレベルで両立させており、どんなコンテンツ・場面にもオールマイティに対応できる製品だと感じられた。
この4.0.2chを構築するにはSB550とDENON HOMEを個別で購入する必要があったのだが、今年3月、SB550とDENON HOME 150 2台のバンドルセットが発売された。想定売価は税込12万円前後と個別購入よりお得な価格設定なのだが、これが実に絶妙なラインなのだ。
というのも、サウンドバー市場においてこの「12万円前後」というのは、各社のハイエンド機が集まったボリュームゾーンになっている。このクラスであればほぼDolby Atmos対応かつイネーブルドスピーカーを搭載していたりもするが、一本バータイプ、もしくはバー+サブウーファータイプがほとんどなので、ごく一部の製品以外は単体でサラウンドを構築することはできない。
しかし、SB550のセットなら同じくらいの価格で、4.0.2chサラウンドを構築することができるし、2台の150は単体スマートスピーカーとして使えるので、映画を見ないときも邪魔にはならない。つまり「サラウンド環境が構築できて、かつサテライト端末も音楽用として普通に使えるハイエンドサウンドバー」と考えれば、かなり魅力的な製品なのではないだろうか。
今サウンドバーを購入したいと考えている方はもちろん、よりハイエンドなサウンドバーに買い換えようかと思っている方も、ぜひSB550を検討してみてほしい。単体でもセットでも、満足できること間違いなしだ。
……ちなみに記者は「うまいこと両親が沼にハマってDENON HOME 150を買い足してくれれば、いつでも使えるサラウンド環境が爆誕するのでは?」と目論んでいたのだが、一向にその気配がないため、いっそ自分で買ってしまおうかと思い始めている。DENON HOME 150 2台のセットとか発売されてくれないだろうか……。
(協力:ディーアンドエムホールディングス)