【コラム】iPhone/iPadのDTCP-IP対応、現状と今後の課題
■外出先から録画番組にアクセスできる「DTCP+」
最後にDTCPの未来についても少し触れておこう。2012年1月にDTCP-IP バージョン1.4、通称「DTCP+」という新規格が発表された。各社がこのDTCP-IP用のミドルウェアやソフトウェアライブラリを開発している状況だ。
前述の通り、DLNAでデジタル放送など著作権保護付きのコンテンツを伝送する際には、DTCP-IP規格への対応が必須となる。これまでDTCP-IPは家庭内ネットワークのみに限定されていたが、DTCP+では、著作権保護コンテンツのストリーミング試聴やコンテンツムーブを、インターネットを介して行うことが可能になる。いわゆるリモート視聴が可能になるのだ。
デジオンは、このリモートアクセスについても鋭意開発中だ。目下苦労しているのは、これは回線側の問題なのだが、場所や時間帯によって3GやLTEのスピードが安定しないことだという。場合によってはトラフィックが途切れることもあり、バッファーをどの程度確保するかなど、技術的な課題は多いようだ。また最近ではLTEのデータ定額プランに、データ量の上限が設けられるケースが増えてきた。1Mbps程度の動画でも、頻繁に見ていたら7GBなどの上限に達するケースが考えられる。このあたりのバランスをどう取るかも課題となりそうだ。
さらにDTCP+のリモートアクセスで問題となるのは、ARIBで定められている「受信機」から直接配信することが認められていないことだ。ここで言う「受信機」とは、端的に言えばB-CASカードが入っている機器を指す。この縛りがあるため、レコーダーから外部へ、直接番組を配信することができない。番組を外部配信するには、いったんNASなどチューナーを搭載していない機器にムーブする必要がある。
このため、見たい番組を見たいときにリモート視聴するためには、たとえば録画した番組を片っ端から自動的にNASへムーブするなど、力技での対応が必要となる。
せっかく利便性を高めようと考えられた規格なのに、これではあまりに不便だ。ARIBでの規制緩和なども含め、時代に即した、消費者の利便性を考慮した対応を求めたい。