PM-10と同じHypexモジュールを採用

マランツ、プリ部を大幅に強化したスイッチングアンプ採用プリメイン「PM-12」

公開日 2018/06/26 11:00 編集部:小澤貴信
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プリメインアンプとしては破格の大規模なプリアンプ回路を搭載

PM-12では、スイッチングアンプの採用により、従来のアナログアンプにおいて大きなスペースを占めていたパワーアンプ回路およびヒートシンクの小型化を実現。このクラスのプリメインアンプとして異例の大きなスペースを、プリアンプのために使用することが可能になった。

PM-12のプリアンプ部。筐体内の大きなスペースを占めている

このスペースを活かして音質最優先の理想的な回路レイアウト、パーツ選定を追求。結果、マランツ独自の高速アンプモジュール HDAM-SA3を用いた電流帰還型アンプに、JFET入力とDCサーボ回路を組み合わせた、シングルエンド構成プリアンプ回路を新開発して搭載した。

また、このプリアンプではカップリングコンデンサーの使用個数を最小化することで、音の解像感や透明感も大幅に改善したという。

なお、本機が採用したHypexスイッチングアンプモジュールはバランス入力のみに対応するため、プリ部にはアンバランス−バランス変換回路も設けられている。

ボリューム回路には、JRC製の最新型ボリュームコントロールICを採用した。これはPM8006でも採用されたもので、優れた特性を備えると共に、機械式ボリュームでは構造上避けられない左右チャンネル間のクロストークや音量差、経年劣化を排除を実現している(ちなみにトップエンドのPM-10では、L/R独立のフルバランス4連電子ボリュームが用いられている)。


プリアンプ専用電源回路を搭載

プリアンプ専用の電源回路も搭載。パワーアンプによる電力消費量の変動に影響を受けない安定した電源をプリ部に供給することを可能とした。プリ専用電源には、OFC巻き線による大容量トロイダルコアトランスを搭載。トランス外周には珪素鋼板とスチールケースによる2重のシールドを施し、漏洩磁束による周辺回路への悪影響も抑えている。

写真の電源トランスは、プリアンプ専用のものだ

整流回路には、超低リーク電流ショットキーバリアダイオードを採用。また、平滑回路には新規開発のエルナー製カスタムブロックコンデンサー(6800μF/35V)を採用した。


PM-10と同じHypex製スイッチングアンプ・モジュールを採用

パワーアンプには、Hypex社のスイッチングアンプ・モジュール「NCore NC500」を採用した。これはPM-10に採用されたアンプモジュールと同じもの。PM-10では4基のモジュールをBTL構成で使用していたが、PM-12では2基のモジュールをシングルエンド構成で搭載する。

Hypexアンプモジュール。ヒートシンクに直付けされている

尾形氏はこのスイッチングアンプ・モジュールの優位性として、特許技術によりインピーダンス変動による周波数特性の変動が少ないことを挙げた。これにより、スピーカーの負荷の変動に、アンプのキャラクターが左右されることを避けられるという。

また、保護回路の改良によるスピーカーリレーを排除。さらには後述するパワーアンプ・モジュールの取り付け方法の改良により、パワー部のアンプモジュールからスピーカー端子までの経路を約10mmにまで短縮、接点数も半減させた。その結果、ダンピングファクターはPM-10の2倍以上、PM-14S1の4倍以上となり、スピーカー駆動力が大幅に向上した。

パワーアンプ用のスイッチング電源

パワーアンプ専用電源には、PM-10と同じHypex社「SMPS600」を採用。入念な放熱対策と強固な固定を施しているという。


新開発の無帰還型フォノイコライザーを採用

PM-12はフォノ入力も装備。フォノイコライザーには、MM/MC両方式のカートリッジに対応する新開発「Marantz Musical PremiumPhonoEQ」を搭載する。

新開発されたフォノイコライザー回路

20dBのゲインを持つMCヘッドアンプと、40dBのゲインを持つ無帰還型フォノイコライザーアンプの2段構成を採用。1段当たりのゲインを抑えて低歪を実現した。また、音声信号が通過する経路はすべてディスクリート回路で構成。JFET入力とDCサーボ回路の追加によってカップリングコンデンサーを排除して、信号の純度を損なわない増幅を可能にした。また、フォノイコライザー基板はスチールと珪素鋼板によるシールドケースに収め、外来ノイズによる影響を排除している。

筐体サイズはPM-14とほぼ同じだが、フロントパネルのデザインはPM-10に揃えて刷新された。また、前面の有機ELディスプレイは、ボリューム操作時やソース切替時に一時的にフォントサイズを大きくする仕様を新たに採用して、視認性を向上させた。


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