HOME > レビュー > 音楽ファンのための “ネットオーディオ” 完全ガイド【第12回】「ネットワークオーディオで楽しむ(2) サーバー」

NAS、そしてサーバーソフトについて徹底解説

音楽ファンのための “ネットオーディオ” 完全ガイド【第12回】「ネットワークオーディオで楽しむ(2) サーバー」

公開日 2015/04/30 10:46 逆木 一
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
サーバーに使うべきは「PC」か、「NAS」か

PCでもNASでも、サーバーソフトをインストールすることによりサーバーとして機能することを述べてきました。それではPCとNAS、どちらを使えばいいのでしょうか。

PCをサーバーとして使う場合、自由にサーバーソフトをインストールできるため、ユーザーの好みに合わせられるというメリットがあります。新たにNASを導入する必要もなく、接続にLANを使う以上置き場所の制約もあまり受けません。問題を挙げるとすれば、サーバーとして24時間365日電源を入れ続ける場合の安定性くらいでしょうか。

NASをサーバーとして使う場合、サーバーソフトをユーザーが選択する余地がほぼありません。QNAPの製品のように一部例外はありますが、基本的にNASで使用可能なサーバーソフトは最初から入っているものだけだと考えてよいでしょう。

サーバーとしての機能はサーバーソフトで決まるため、ネットワークオーディオに使うNASを選ぶ際は、まず「サーバーソフトに何が使われているか」を確認してください。その次に重要なのが安定性です。頻繁に機能不全を繰り返すようでは話になりません。ファイルの保存に必要十分な容量があることは言わずもがな、です。PC・NAS問わず、「良いサーバー」があるとすれば、それは「自分にとって使いやすいサーバーソフトがインストールされ、動作の安定したサーバー」のことだと言えます。

オーディオ用途に適したNASとは

例えば別室に置いたPCをサーバーとして使うならばともかく、サーバーをオーディオルームに置き、さらに高音質まで求めようと思えば、考えることが多くなります。大多数のPCはファンノイズを吐き出す時点で脱落し、ファンレスのNASも製品が限られています。さらに動作の安定性や中身のサーバーソフトのことまで考えれば、オーディオ用途に耐えるNASの選択肢はさらに狭まります。

日本におけるネットワークオーディオ黎明期を支えたNASとして、QNAP「TS-119」という製品がありました。TS-119それ自体は決してオーディオ用として作られたわけではないでしょうが、「必要十分な機能を提供するTwonky Serverを搭載」、「高い動作安定性」という「良いサーバー」の条件を満たしたうえで、「ファンレス&アルミ筐体」という、まさにオーディオ用途に耐えるNASでした。導入した方も多いのではないでしょうか。ちなみに筆者も5年ほど前に購入し、今でも使用しています。残念ながらTS-119は生産完了になって久しいですが、その美点を継承するHS-210などのモデルが発売されています。

QNAP「TS-119」(生産完了)

QNAP「HS-210」

一方で、BUFFALOのDELAブランド、LUMIN L1など、最初からオーディオ用に使うことを前提にしたサーバーも最近では登場しています。これらの製品は「機能面・ユーザビリティの点で良いサーバーである」という絶対条件を満たしたうえで、デザイン・音質ともにオーディオ機器と呼んで差し支えないレベルで作り込まれています。

BUFFALO「“DELA”N1Z」

LUMIN「L1」

サーバーは「デジタルファイル音源を保存し、配信する」という極めて大切な役割を担いながら、今まであまり重要視されてきませんでした。PCにせよNASにせよ、そもそもオーディオ用に作られていない機器をサーバーとして使う場合がほとんどでした。しかし、ユーザビリティと音質を両立した純然たる「オーディオ用サーバー」が登場し、サーバーの重要性を知らしめたことで、この状況は徐々に変わりつつあると言えます。

まとめ

「サーバー」とは“機器”と“サーバーソフト”の組み合わせです。実際の機器にPCを使おうが、NASを使おうが、オーディオ用サーバーを使おうが、それらが果たす役割は同じです。とりあえず「PCがあれば何とかなる」と考えれば気が楽です。いずれNAS、あるいはオーディオ用サーバーを導入するにしても、まずはPCをサーバーとして使ってみて、自分がサーバーに求める方向性を確認してからでも遅くありません。



連載目次
第1回「まず『音源』ありき」
第2回「タグについて理解しよう」
第3回「コーデックの基礎知識」
第4回「ライブラリを構築する」
第5回「音源の入手方法(1) CDのリッピング」
第6回「音源の入手方法(2) 配信サイトからのダウンロード」
第7回「PCオーディオで楽しむ(1) 基礎知識」
第8回「PCオーディオで楽しむ(2) USB-DACを活用する」
第9回「PCオーディオで楽しむ(3) 色々な再生ソフト」
第10回「PCオーディオで楽しむ(4) オーディオルームとPCの親和性」
第11回「ネットワークオーディオで楽しむ(1) 基礎知識」
第12回「ネットワークオーディオで楽しむ(2) サーバー」
第13回「ネットワークオーディオで楽しむ(3) プレーヤー」
第14回「ネットワークオーディオで楽しむ(4) コントロール」
第15回「様々な再生方法」




逆木 一  SAKAKI Hajime
オーディオ・ビジュアルという趣味を愛し、ピュアオーディオとホームシアターの幸せな融合を目指して日々邁進中。ここ数年はネットワークオーディオという方法論に大きな可能性を見出し、その魅力を浸透させるべく活動。音展2014にて「ネットワークオーディオで実現する快適な音楽再生」という講演を実施するなど、活動の場を広げている。
■ブログ「言の葉の穴」http://kotonohanoana.com/

前へ 1 2 3

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE